■5月2日の地方選挙、ここでも保守党は苦戦か?
ボリス個人には寄付が集まってきているが、保守党への献金は大幅に低下しているそうだ。
保守党支持者は、離脱支持が多いため、ブレグジットを巡るメイ首相の動きに落胆した人たちが多いことを意味している。
そして、集まらないのはお金だけでなく、5月2日(木)の地方選挙に向けたキャンペーンなどのボランティアも同様だ。
英国は日本のようにキャンペーンカーに乗って街中を練りまわったり、駅の前に立って有権者に呼びかけるようなことは、一切ない。
代わりに、選挙区の家庭すべてに、候補者のプロフィールや紹介などの小冊子が配られる。そして、時々、候補者本人が実際にドアをノックして、有権者と立ち話しをすることもある。
5月2日(木)の地方選に向けて、保守党候補者のお手伝いの人が集まらないことは危機的なレベルと言われており、保守党はここでも苦戦を強いられるかもしれない。
■欧州議会選挙に向けた動きはどうなっている?
まだ英国が正式に欧州議会選挙に参加するかわからないため、詳しいことは書けない。
とりあえず、現在話題になっていることを2~3ご紹介しよう。
●欧州議会選挙に英国が参加する条件
もう一度整理するが、英国が5月22日(水)までにブレグジット案を議会で可決できなければ、英国は5月23日(木)~26日(日)の欧州議会選挙に参加することになる。
●新党結成
今年(2019年)に入ってから、新党が2つ結成された。1つは離脱支持政党。もう1つは残留支持政党だ。
(1)離脱支持政党:Brexit党
非常に、わかりやすい党名である。元UKIP(英国独立党)の党首であったナイジェル・ファラージュ氏が立ち上げた政党である。

(2)残留支持政党:Change UK党
今年(2019年)に入り、労働党と保守党を離党した残留支持議員が立ち上げたのが、Independent Groupという政治グループであった。
彼らは、正式な党として活動せず、グループ形式に留めておくと、当初は発表していた。
しかし、5月の欧州議会選挙への参加を念頭におき、正式に「Change UK党」と名前を変更した。彼らは残留支持であり、2度目の国民投票実施を強く主張しているのが特徴である。
調べてみると、まだ正式なホームページはでき上がっておらず、Independent Groupとしての公式ページしか見当たらない。

これは私の意見であるが、Brexit党というわかりやすい名前と比較すると、Change UK党のネーミングにはインパクトがない。
いったいどうやって英国を変えたいのか?党名からは何も伝わってこないし、残留支持ということも、党名だけではわからない。
●欧州議会選挙に向けた最初の世論調査
臨時EUサミット終了と同時に行なわれた調査最大手:YouGov社の世論調査では、おもしろい結果が出た。
これは、欧州議会選挙時の各党の支持率である。

(※筆者作成)
この結果を見る限り、合意なき離脱と残留が同率の29%という結果となっている。おもしろくなりそうだ!
■今後の重要イベントのタイムライン
保守党と労働党とのブレグジット交渉内容やタイミングにもよるが、8月末までのおもなイベントは、以下のとおりとなっている。

(※筆者作成)
■ここからの英ポンドについて考える
ひとまず、6カ月の延長が決定したことを受け、英ポンドは買いという意見と、あと6カ月も先行き不透明が続くのなら売りという意見が交錯している。
そこで、まずはファンダメンタルズ面から考えてみたいと思う。
●ガチ・ファンダ① 6カ月の延長、さらなる経済停滞リスク
ブレグジットの不透明感が続いている割には頑張っている英国経済。合意なき離脱に向け、薬品や食料品などの備蓄が継続しており、それが経済指標の悪化を防いでいる。
しかし、企業投資は低迷しており、2018年におけるG7(先進7カ国)各国の企業投資は、英国が最下位。
6カ月の交渉期間延長により、目先の合意なき離脱リスクの可能性が低下したため、ずっとストップしていた新規職員募集や、企業の短期的な投資が復活するという意見も聞こえてくる。
しかし、もし自分が企業のトップであれば、中途半端に動くよりも、最悪のケース(合意なき離脱)に備えての準備に時間を割くように思えるのは気のせいか?
●ガチ・ファンダ② 個人消費について
実は、私は年初からずっと家を買うために動いてきたが、とにかく物件が少なく、苦労している。
ブレグジットで家の売値が大きく下がったため、特に急がない人はブレグジットが片付くまで気長に待つ姿勢を崩していないからだ。そのため、そこそこ大丈夫な条件の物件がマーケットに出てくると、翌週には売れていた!ということが、2回続いた。
ところが、3月29日(金)に合意なき離脱とならなかったことを受けてだろうか……4月に入ると、新しい売り物件がどっと出てきた。
もしかしたら、気候がよくなったことが影響しているのかもしれないが、タイミング的には3月29日(金)以降というイメージが強い。
このように不動産市場が本格的に動き始めない限り、大もの(家具や家の建て替えなど)が売れないので、消費者のセンチメントが大幅に回復するとは考えていない。ただし、最近のインフレ率低下により、「賃金上昇率>インフレ率」の関係が継続しているため、そこそこのペースでの消費は今後も継続すると考える。
特に今年(2019年)は4月にイースター休暇があるため、4月の小売売上高は改善するのではないか?
●ガチ・ファンダ③ 英国中銀の金融政策
自宅の売買にからみ、先週(4月8日~)住宅ローンの申請のため、バークレイズ銀行に行ってきた。
私は「10年間固定金利のローン」を探していたのだが、担当者のおじさんが、「どうして10年なんて長い期間、固定したいんだ? 5年のほうが条件いいぞ!」と言っていたが、私は初志貫徹で、10年物を選んだ。
今年(2019年)に入り、不動産屋や銀行の人たち、弁護士などいろいろな人と話す機会が増えたが、やはりブレグジットがどうなろうが、地獄を見るのはせいぜい3~5年。10年後の金利は、今よりも絶対に高いレベルになっていると、全員が同意している。
2008年のリーマンショック前の英中銀「ニュートラル金利水準」は、4.75~5%と言われていた。現在はたぶん、1.5~2%がせいぜいだと思う。
今後、ブレグジットの決着さえつけば、(世界景気次第であるが)数年かけて、ニュートラル金利水準に戻っていくと、私は考える。
目先の動きとしては、5月22日(水)までにブレグジット案が議会で合意しない限り、英中銀の年内利上げは、ないだろう。そうなると、米国やユーロ圏同様、英国も金利の正常化による利上げ候補国からは脱落だ。これは、英ポンドの優位性を小さくする要因となるだろう。
現在、金利先物では、年末の利上げ織り込み分は、5bps。2020年末までで、15bpsとなっている。
●ユーロ/英ポンドについて考える
これは、某欧州系銀行のユーロ/英ポンド予想である。
最初の数字は、最新の予想。 ( )内は前回の予想。

これを見ると、今年(2019年)の第2四半期から第3四半期にかけて、英ポンド安が進むと予想している。
その理由としては、首相交代により欧州懐疑派の首相が誕生し、合意なき離脱リスクが出てくるからとしていた。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/英ポンド 週足)
そして、第3四半期から第4四半期にかけて英ポンド高となる理由は、
(1)10月31日(木)までに議会で合意ができず、結局、あらためて交渉期間の再々延長を要請する可能性があるから
(2)欧州懐疑派の首相となったとしても、英国議会は多数決で2度目の国民投票か50条の破棄を選ぶ可能性があるから
を挙げていた。
そして、年内のユーロ/英ポンドは、0.85ポンドより下(英ポンド高)にはならないとも予想していた。
果たして、この予想どおり、ユーロ/英ポンドは、年内ずっと0.85~0.88ポンドのレンジ内での動きとなるのか?
シカゴIMM(国際通貨先物市場)通貨先物ポジションでは、英ポンドは大きなショートが解消され、ほぼニュートラルまで戻してきた。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ここからは、どちらに転ぶにせよ、方向性が決まれば動きに幅が出てくることを期待したい。
(編集担当/ザイFX!・庄司正高)
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