昨日のアジア時間ではリスクテークの動きが高まった。その前日には米国株が大幅安しているにも関わらず、日本勢が「安いから買う」という姿勢を崩さなかったためだ。日経平均は朝から500円以上も急上昇して、ドル円も110円台の後半で始まったものが111円台を回復したりしている。
これでややダウンサイドリスクが薄まったかに見えたマーケットだったが、ニューヨーク時間では米国株は大幅安したことでマーケット全体がリスク回避の姿勢が強まった。ドル円も110円台のミドルでかなり粘ったが支えきれず、夜中には109円台にも突入している。
アメリカのCDCが国内でのウイルス感染に注意を喚起したということもあるが、なんで連日での大幅安を演じることになってしまったのか。売り切れていなかったのか。
リスク回避の局面では、安全資産とされる米国債などが買われることになる。そして昨日は10年ものの利回りは1.3055%まで下げてしまった。これは過去最低の記録であり、2016年の夏場につけた1.3180%を下回るもの。BREXITの国民投票よりも、コロナウイルスの感染のほうが破壊力があるということだろう。
記録を更新したというと大きな動きにさらされたみたいな感じに陥るが、実際にはそれほどでもない。ダウ平均が1000ドル級の下げを2日連続でやってしまうくらいの恐怖感であれば、普通ならば10年債の利回りが300ベーシスポイントくらい下がっても不思議ではない。それが100ベーシスも下がれないのだ。これはやはり金利商品が金融マーケットの中でワークしていないということだろう。
オバマ政権の第2期から、またはバーナンキ議長の任期の最後あたりから利上げを始めるべきであった。ダウ平均が2万を超えて来ても何もしなかった。またダウ平均が3万に近づいているというのに、いまだに金利を下げることしか頭にない。従来の教科書では説明しきれないことをやってきたのだ。
ドル金利は下げても、その下げ余地は少なく、マーケットに足元を見られている。質への逃避で債券を購入しても、そんなに利益が出ないのならばヘッジとしてリスク回避しても穴埋めはできない。リスクヘッジが効かないとなったら、自分が持っているそのものを売るしかない。それが今週の株式相場の大幅安となって世界中に起こってしまっていることなのだろう。
またFRBの副議長は「市場は利下げを織り込んでいるが、まったくの不自然」などと言っているのもおかしい。「市場との対話」を拒否している姿勢のようだ。市場のほうが先走ることがあっても、それを自分らの写し鏡だと思って政策当局者は行動しないと、市場からの信頼をなくすのである。
ともかくも株売りはダイレクトに出てくる状態が続きそうだ。米国株の先物取引で最大の取引量を誇るのはミニS&P先物だが、これが昨日は400万枚の出来高を誇っている。これは今世紀に入ってから最大ではないだろうか。今まで見たこともない。
激しかったときでも300万行くのもやっとだ。ともかくも出来高を伴った株価の下げである。当面はリスク回避の方向についていくしかないだろう。ドル円やユーロ円は戻り売りスタンスで臨む。
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