「異業者両建て」とは、2つの異なるFX口座(FX会社)を使いながら、為替の変動リスクを実質的に回避しつつ、スワップポイント(スワップ金利)による金利収益を積み重ねていく取引のこと。
FX口座によってスワップポイントの水準が異なることを利用して、スワップポイントの受け取る金額と支払う金額の差額がプラスになるよう、2つのFX口座において、同じ通貨ペアで売り買い逆方向に同じ数量のポジションを保有するやり方です。
異業者両建ては2つのFX口座のスワップポイントの差額を収益源とするため、「スワップポイントサヤ取り」などと呼ばれることもあります。
たとえば、スワップポイントが買いポジションの保有で受け取り、売りポジションの保有で支払いとなる通貨ペアで、各FX口座の1万通貨、1日あたりに付与されるスワップポイントが以下のようになっていた場合、Aの口座で1万通貨の買いポジションを建て、Dの口座で1万通貨の売りポジションを建てると、その差額となる20円をスワップ収益として受取ることができます。
反対に、スワップポイントが売りポジションの保有で受け取り、買いポジションの保有で支払いになる通貨ペアでは、受取る金額がなるべく多いFX口座で売りポジションを建て、支払う金額がなるべく少ないFX口座で同じ数量の買いポジションを建てます。
そうすることで、どれだけ相場が動いても為替による差損益は相殺され、その間、2つのFX口座で発生するスワップポイントの金額差だけを受取りながら、安定的に収益を増やしていけるのです。
異業者両建てを効率よく実施するための最大のポイントは、
よりよいFX口座の「組み合わせ」を見つけること
異業者両建てをもっとも効率よく実践するための最大のポイントは、受け取るスワップポイントから支払うスワップポイントを引いたときのプラスの金額が、可能な限り大きくなるFX口座の組み合わせを見つけることです。
ただし、スワップポイントに注目した異業者両建てにおいても、スプレッドについては注意しておいたほうがよいこともあります。それは、新興国通貨などでまれにあるのですが、受け取るスワップポイントは多いものの、スプレッドがかなり広いFX口座もあるからです。
異業者両建てを長期でうまく運用できれば、いずれはスプレッド分のコストを上回る利益が上げられるはずですが、スプレッドが広すぎるFX口座を利用した場合、2社のスワップポイントの差額による利益がスプレッド分のコストを上回り、収支がプラスに転じるまでの日数がそれなりにかかってしまう可能性があります。そのため、スワップポイントの水準だけでなく、スプレッドの水準も考慮に入れたうえで、よりよいFX口座の組み合わせを見つけるのがおすすめです。
【異業者両建ての注意点とリスク】知らないうちに逆ザヤに
なっている可能性も。完全なる放ったらかしは絶対にNG!
通貨間の金利差に変化がなくとも、各FX口座のスワップポイントの水準は、基本的に毎日変動するのが普通です。そのため、過去のスワップポイントの付与実績から最適と思われる組み合わせで異業者両建てを実践しても、スワップポイントの水準が変動した結果、事前に想定していたほどの収益が得られない可能性は考えられます(もちろん、事前の想定以上の金額差を受取れる可能性もあります)。
異業者両建ては、受け取るスワップポイントが支払うスワップポイントより多いことで成り立つ手法ですが、政策金利の大きな変化、為替レートの大幅な変動、FX会社のスワップポイント付与方針の変化などによって、これがあるとき、逆転してしまうことがあります。このような、支払うスワップポイントの方が受け取るスワップポイントより多くなる「逆ザヤ」の状態が続き、解消される見込みが薄いと判断した場合は、異業者両建ての運用を停止せざるを得ないでしょう。
また、2つのFX口座を合わせれば、為替の変動リスクは確かにゼロですが、相場が一方向に動いたときは、片方の口座では含み益が増えていく一方、もう片方の口座では含み損が膨らんでいきます。片方の口座で証拠金に対して含み損が大きくなりすぎてロスカットが発動し、ポジションを決済されてしまうようなことがあれば、両建て状態が解消されてしまいます。そうなると、片方だけ残ったポジションが為替の変動リスクにさらされることになります。
異業者両建てはレバレッジをあまりかけ過ぎず、一方の口座で生じる含み損の拡大状況と2つの口座のスワップポイントの水準を定期的にチェックしながら実践する必要があると言えるでしょう。
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