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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ジム・ロージャズはユーロ買いに転じた!
金融機関の過激な予測を信じるな!

2010年06月11日(金)16:36公開 (2010年06月11日(金)16:36更新)
陳満咲杜

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■米ドル紙幣はユーロにチェンジすべき!

先週のコラムを公開した後に、ユーロはまた急落した。ユーロ/米ドルは心理的節目とされた1.2000ドルを下抜け、一時は1.18ドル台をつける場面もあった。ユーロ/円は108円割れ目前まで下落した「米ドル/円の100円台回復が見えてきた! ユーロ/米ドルの底打ちもそう遠くない!」を参照)

 当然のように(?)、多くの読者が筆者の「ユーロの底打ちはそう遠くない」といった見方を疑い、皮肉や冷やかしのコメントもいただいている。

 また、中国の友人からもよく電話相談を受けるようになり、筆者の意見を何回も何回も聞いてくる。

 筆者の友人の中には中国でEU向けの輸出を手掛けている者もいて、ユーロ建ての決済を完全放棄するかどうかを迷い、さらに、手持ちのユーロと米ドル資産をどう処分すべきかを決めかねているのだ。

 しかし、これに対する私の答えは明快だ。

ユーロ建ての貿易決済を堅持し、米ドル紙幣をユーロにチェンジすべきだ

■マーケットはユーロ安が続くという見方一色だが…

今はまさに「ユーロバーゲン」と言うべき時期である、と先週からずっと言ってきた。
ユーロ/米ドル&ユーロ/円 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足

 6月10日(木)のマーケットで、ユーロ/米ドルは1.21ドル台を回復し、ユーロ/円は111円台回復をトライするまで切り返してきた。なので、さっそく彼らから電話がかかってきた。

 彼らはまだ、筆者の見方を疑っている。そのような中、これからも行動に移せないだろうと思いつつも、筆者は同じことを伝えた。人間というものは行動できないことを繰り返し言い、聞く者だ

 実際のところ、中国の“為替闇市場”ではユーロ安に伴い、米ドル不足が起こり、銀行よりも悪いレートが提示されているという(中国は為替取引を制限しており、個人も企業も買える外貨には限度があるため、「闇市場」を利用して外貨を調達することがある)。

 また、輸出企業は競ってユーロ建て決済を避けるようになっていて、ユーロは見限られた雰囲気にあるそうだ。

 無理もないだろう。マーケットはユーロ安が続くという見方一色に染まっていて、米ドルとのペッグ制を堅持している人民元は対ユーロで大幅に高くなっており、私の友人は夜も眠れないほど危惧しているはずだ。

 まして、日々ユーロ安の観測が高まり、パリティ(1対1)どころか、0.8800ドルまでユーロ安・米ドル高が進むといったレポートも大手金融機関から数多く出ている。

 そのような環境の中では、とても筆者のような見方は信じられないだろう。

■欧米金融機関の権威にこびず、健全な警戒心を持とう!

 中国も日本と同じように、なんとなく、欧米金融機関の権威にこびる風潮がある。

 UBS、RBS(ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)といった「横文字」の会社からユーロ安加速といった見通しが披露されると、「庶民」はますますパニックに陥る。

 それは「庶民」ばかりか、国有企業もしかりだ。時価総額で今や世界ランキング20位に入る企業でさえ、2008年に公表されたゴールドマン・サックスの「原油200ドル」といった予測に脅かされた。

 デリバディブ商品を同社から購入し、原油価格の上昇に備えて「ヘッジ」しようとしていたところ、半年足らずでWTI原油価格は147ドル台から33ドル台へと一気に暴落し、莫大な損失を計上せざるを得なかった。

 今になって明らかになったのは、ゴールドマン・サックスは当時、原油高を声高に主張する一方、自社トレーディングでは原油をロング(買い持ち)にせず、かなりのショート(売り持ち)に振っていたというのだ。
 この構図は、米国で現在、オバマ政権がゴールドマン・サックスを裁判に訴えているケースと同じだ。

 原油をCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)に、取引先を中国国有企業からドイツの銀行などに置き換えれば、ストーリーは同じである。

 一部には、ユダヤ系やアングロサクソン系を中心に、欧米金融機構がこのような手口を常用し、日本のバブルとその崩壊を一手に作り出したとする「陰謀論」さえあって、その信者も多い。

 それが事実かどうかはともかく、健全な警戒心を持つことは大事である。

■2009年の日本の例から学ぶべきことは?

 話が長くなってしまったが、要するに、マーケットのムードが一辺倒になった場合、一部の金融機関の過激な予測を信じてはいけないということだ。

 彼らの本当の意図を知らずに行動に出るのは致命傷を追いかねないし、彼らは口で言っていることとまったく反対のポジションを持っている可能性すらある

 恐怖心だけで行動に出た場合、それはほとんど失敗に終わる。

 最近の日本の例を挙げると、2009年に駒澤大学やサイゼリヤが為替デリバディブに絡んだ巨額損失を計上したことは、みなさんの記憶に新しいところだろう。

 その背景には、相場の振れにあおられ、恐怖心にかられた判断ミスがあったのではないかと推測している。

 サイゼリヤのケースは、豪ドルの急上昇に伴う輸入原材料の高騰を危惧し、為替デリバディブに手を出したということのようだ。

 2007年7月まで、豪ドル/円はほぼ一本調子の上げ相場となっていて、同社の財務担当者はさぞかし「怖かった」であろうと、容易に推測できる。
豪ドル/円 月足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 月足

 当時、銀行マンをはじめとして、専門家の話を聞けば聞くほど、これからもっと上がるという声が圧倒的に多かったに違いない。

 この点は重要なことだ。

■多くの機関投資家はすでにユーロ売りを停止している!?

「もう、その方向しかない」と皆が思うようになったとき、相場は反転するケースが多い

皆をそう思わせるほどだから、恐怖にしても貪欲にしても、ファンダメンタルズでは、万人弱気、あるいは万人強気にさせる「疑いのない」事実がある。今のユーロ危機は、まさにそのとおりだ

 今は輸出企業の財務担当者にユーロ安をヘッジする金融商品をセールスする環境としては申し分ないだろう。

 断定してもよいが、多くの機関投資家はすでにユーロ売りを停止し、買い戻しを実行している可能性が高い。なぜなら、マーケットにあまりにも弱気派が多すぎることを彼らは知っているからだ。

 ちなみに、金融の世界では、ポジショントークはセールストークの意味合いでもある。

昨年9~10月頃は米ドル崩壊の危機が叫ばれていたのだが、それから1年も経たず、今はユーロ崩壊、ユーロ消滅論が「正論」として語られている

 “破滅博士”ことルービニ博士の「ユーロ崩壊予言」はあまりにも有名で、また、中国でもすっかり有名人となったジム・ロジャーズ氏の「ユーロ消滅」といった発言が聞かれたのは、1カ月ちょっと前だった。

 しかし、昨日、我が目を疑うニュースを読んだ。

「ロジャーズ氏、今はユーロを買う時だと語る」

 さすが、ロジャーズ氏である。
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