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今井雅人_投資戦略メルマガ
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドル安が進んでからドル安の材料探し。
専門家の話は所詮トレンドの後追いだ!

2010年07月16日(金)18:41公開 (2010年07月16日(金)18:41更新)
陳満咲杜

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■スピードに違和感を感じるほどの急速な米ドル安

 米ドルの全面安が続いている。

 現執筆時点で、ドルインデックスは82.28まで下落してきており、昨年12月以来の100日移動平均線割れとなっている。
ドルインデックス 日足(クリックで拡大)
(出所:米国FXCM)

 米ドルは対ユーロ、対英ポンド、対スイスフランといったところで特に売られており、この3通貨は昨年末から大きく売られていたために、反発も強い。

 比較的ファンダメンタルズが安定しているスイスフランは別として、ユーロと英ポンドがつい最近まで「腫れ物」扱いされていたことは、記憶に新しいところだ。それだけに「サプライズ」を覚える市場関係者が多いようだ。

 足元で、ユーロ/米ドルは節目の1.3000ドル、英ポンド/米ドルは1.5500ドルの大台に接近してきている。米ドル安派の筆者でさえ、そのスピードに違和感を感じるくらい、マーケットの底流はすっかり変わっているのだ。
ユーロ/米ドル&英ポンド/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足

 ただ、米ドル安のスピードはともかく、このような展開になることは十分に想定できた。今になって、多くの人が米国の景気減速と米ドル安の蓋然性を指摘し始めているが、相場の内部構造からすると、このような展開は当然の成り行きである。

■危機の進行で米ドルは売られる羽目になる

 このコラムで何度も指摘してきたように、世界経済の二番底のリスクは増大している。ギリシャ問題に端を発した危機はその前兆に過ぎず、世界景気は一蓮托生となって、やがて米国まで危機が飛び火することになる。

 そして、危機が進行すればするほど、米ドルはリスク回避先として買われるのではなく、リスク資産そのものと見なされて売られる羽目になるのだ「危機はドルに飛び火しボコボコにされる。資源国・高金利通貨の急落はその前触れ」を参照)

 もっとも、つい最近まで、ユーロ安が進むにつれ、ユーロ圏の国々のソブリンリスク(国家の信用リスク)が大げさに宣伝され、ファンダメンタルズに関しても必要以上に悪い方向へと拡大解釈されていた。

 格付け会社が公表する格付けのように、多くのエコノミストやアナリストの説明と予測は、総じて事後的だ。あたかも事前に予想できたように語っている印象があるが、そうではない。

 彼らの多くは、すでに発生した出来事を解釈し、その背景分析と過剰な宣伝を行うことには長けているかもしれない。

 しかし、将来の展開を予測する体系的、理論的な土台は持っておらず、また、胆力に欠けているのも事実である。
 したがって、これから米ドル安のトレンドが深まれば、我々は間違いなく、多くの評論を耳にせざるを得ないだろう。それはつまり、米ドルサイドのマイナス材料探しとその解釈だ。

■トレンドの発生が先、ファンダメンタルズはあと

 このコラムをご覧になっているみなさんの中で、これから相場で成功を収めたいならば、少なくとも次の「相場の真実」を心得るべきである。

 まず、世論は「トレンド・フォロー型」であり、トレンドの発生が先で、ファンダメンタルズに関する解釈はあとでついてくるということだ。トレンド進行につれ、ファンダメンタルズの材料も発生し、それがトレンドを証左して、推進する引き金となる。

 次に、専門家と専門機関の多くが、トレンド進行につれて往々にしてオーバーな解釈となり、マスコミの論調も相場の天底とあわせて、オーバーな楽観論と悲観論になりやすいということだ。彼らは事後的な解釈でメシを食っているためである。

 専門家にしても、マスコミにしても、予測と論調自体が「トレンド・フォロー型」である以上、常に相場より一歩先ではなく、三歩遅れとなる。

 何しろ、トレンドに沿った予測と論調はリスクが少ない。トレーダーと違い、彼らは根本的にリスクを背負うことが嫌いなのだ。

■FRBが暗い見通しを示す前から米ドル安は始まっていた

 今週、マーケットの注目点が変化したことは、その好例であろう。

 まず、米ドル安が進むにつれ、ファンダメンタルズ面で大きな「引き金」が浮上してきた。それは、米FRB(連邦準備制度理事会)が米国の経済成長と景気回復に関して暗い見通しを示したことである。

 一部では、米国の金融当局がデフレリスクにおびえているのではないかという解釈もされ始めている。このような見方は、7月15日(木)の相場で米ドルを押し下げる原動力となっており、これから(すでに?)米ドル安の原因の背景として解釈されるだろう。

 年初からの米ドル高の修正が6月初旬頃にすでに始まっていたことを考慮すると、なんとも言えないほど絶妙なタイミングだ。米国サイドだけでなく、ユーロ圏や英国サイドからも、このような材料が揃って出てきている。
ユーロ/米ドル 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足

■ゴールドマン・サックスも米ドルの見通しを下方修正

 ユーロ圏では、マヌケな格付け会社が相変わらずギリシャ、ポルドガル、スペインといったところのソブリン債の格下げに励んでいるが、これらの国々の国債販売は「想定以上」に好調であった。

 英国については、失うと見られていた最上級の「AAA」の格付けを維持できる見通しで、あの債券王が率いるPIMCOは英国国債の空売りをやめ、ロング(買い持ち)に転じたようなのだ。

 そして今週に入ると、“一般的な”専門家や金融機関だけでなく、あのゴールドマン・サックスも米ドルの見通しを下方修正した。ターゲットを、ユーロ/米ドルは上方修正、米ドル/円は下方修正したのである。

 これから、多くの専門家やマスコミが、米国サイドのマイナス材料探しとその解釈づくりに専念することになるだろう。そして、探せば探すほど、マイナス材料が見つかり、解釈しようとすればするほど、米ドル安の進行が深まっていくだろう。

 マーケットの心理とコンセンサスがこのように作られた以上、逆にトレンドを推進する要因となる。

■これは想定どおりの展開だ

 ところで、値幅の差があったものの、このような展開を筆者は年初から想定していた。

昨年12月24日のコラムで、筆者は機関投資家の見通しの総計として、2010年は年間を通じて米ドル高トレンドの進行が続くといったコンセンサスが強い分、これが再び裏切られるのではないかと予想していた「2010年最大のイベントは米国の利上げ!米ドル/円の上値は重く、かなりの波乱も!!」を参照)

 今はまさにその節目にあり、筆者の見方の真贋(しんがん)はこれから問われるだろう。

 ちなみに、日銀が7月15日(木)に、2010年のGDP成長率を上方修正していた。だが、マーケットの関心は中国の景気減速の可能性に集中しているため、完全に無視された形となった。

 これが何を意味するのか、円高は続くのか、日本のデフレは終えんに向かうのかについては、来週のコラムで私見を述べたいと思っている。
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