為替市場に「異変」が生じている。
5月20日(木)の米国株式市場の急落に伴う為替相場の反応で、いつものパターンに変化が見られているのだ。
一見すると、米国株の急落が投資家のリスク回避の姿勢を強めさせ、「対円を除いた米ドル買い」と「円買い」が、いつものように行われたかのように見える。だが、その中身はやや違っていた。
米ドル買いの「受け皿」の主役が、いつものユーロや英ポンドではなく、豪ドルなどの資源国通貨、高金利通貨へと移っていたのだ。
同様に、円買いの「受け皿」も、ユーロや英ポンドよりも、豪ドル、加ドルといった資源国通貨が目立っていた。
このような事情から、米国株の下落に伴い、いつもなら上昇するはずのドルインデックスが逆に反落していた。
当然と言えば、当然のことではある。
加ドルがドルインデックスに占めるシェアは「0.091」と小さく、豪ドルは計算通貨にさえ入っていない。「0.576」と圧倒的なシェアを持つユーロの反騰がドルインデックスを押し下げることになる。
■世界経済の二番底のリスクは増大。やがて米国へ!
ユーロの反騰については、「ECB(欧州中央銀行)による市場介入を危惧しているため」とか、「スイス当局がスイスフラン売りを通じてユーロ/スイスフランの下落を阻止している」といった解釈も聞こえてくる。
しかし、これらの見方は本質をとらえていないと筆者は思っている。
5月7日のコラムで指摘したように、本質的に「5.6事件」は世界的な景気後退の前兆である。危機進行でユーロ安となるのではなく、米ドル安になるだろう(「『5.6事件』は世界的な景気後退の前兆。危機進行でユーロ安ではなく米ドル安に!」を参照)。
つまり、ユーロ圏発の危機はやがて世界的な危機と化し、米ドル資産は再び敬遠されることになるはずだ。
世界経済の二番底のリスクは増大しており、ギリシャ問題に端を発した危機はその前兆に過ぎず、世界景気は一蓮托生となって、やがて危機が米国まで飛び火することになろう。
■カリフォルニアがデフォルトに近い状況は論議されず…
ギリシャ問題は確かに深刻である。
だが、世界中があまりにもPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)と呼ばれる問題国の危機に注目し過ぎていて、ユーロ圏以外の問題にまったく目をつぶっているかのようである。
実際、米国では、カリフォルニア州は事実上破産しており、デフォルトに近い状況なのだが、それについては誰も論議していないようだ。このように、マーケットは目先のことばかりを注視しすぎる傾向がある。
その反動によって危機が必要以上に拡大し、また、そのせいで物事の本質から焦点がそれることになる。
ユーロ圏で起きている問題は、決してこのエリアに限ったものではない。問題の範囲が世界中に広がっていくと、その反動に伴う代償も大きいだろう。
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