年末に筆者がいちばん楽しみにしているのは、金融機関が公表する「来年の見通し」を読み漁ることだ。これが結構役に立つ!
経験では、為替相場の見通しに限ると、金融機関のコンセンサスの裏をかけば、筆者自身の予想の精度を高められるのだ!!
さて、2009年最後となる今回のコラムでは、来年の相場見通しを述べてみたい。
結論を先に申し上げると、2010年の為替相場はかなりの波乱がありそうだ。
米国の利上げの有無やその時期を巡る市場関係者の思惑が交錯し、トレンドを急変させたり、変動率が増大する可能性は高いと見る。
■ゴールドマンでさえも意表を突かれた2009年の為替相場
昨年秋の「リーマン・ショック」を受けて、今年の年初まで、金融機関が出した相場見通しの多くは、対円を除いて、米ドル高トレンドの継続を確実視する内容の予測が多かった。
また、円に関しても、リスク回避先として資金が流入することから、「米ドル/円は3月までに80円を必ず割る」と言い切った機関投資家さえ見受けられた。
筆者にとって、特に印象的だったのは、多くの金融機関が英ポンドの崩壊を懸念したことである。英ポンド/米ドルのパリティ割れ(1.0ドル割れ)だけでなく、「英ポンド/円が100円をつけるかもしれない」という声も多かった。
米ドル高が3月にピークに達し、その後、米ドル安が進行したことは、多くの市場関係者にとって想定外のことであっただろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 週足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 週足)
米ドル安トレンドが進行するにつれて、「ドルキャリートレード」という言葉が流行ったように、3月以降は米ドル安を確実視する風潮が強くなった。ついこの前まで、多くのアナリストが米ドルの暴落論を繰り広げていたほどだ。
原油決済通貨の米ドル離れの“ウワサ”に続き、あのゴールドマン・サックスでさえ、10月末に出したレポートで、年末までの英ポンド/米ドルのターゲットを1.8500ドルに引き上げていた(「原油決済通貨の変更などバカバカしい話。ドル安はこのあたりでクライマックスか?」を参照)。
しかし、足元では米ドル高が進んだことから、当然のように、多くの機関投資家は意表を突かれることとなった。
実際、彼らの多くは、10月末~11月初めに出した予測を取り消している。それどころか、正反対の方向への見通しの転換を余儀なくされた。
■足元で続く米ドル高は、一筋縄にはいかない?
このように、金融機関のコンセンサスの裏をかけば儲けられた2009年の相場であったが、来年もこのような傾向は続くのではないだろうか?
足元の米ドル高はトレンドの“途中”にあるものの、筆者は、この米ドル高トレンドが長くは続かないと思わざるを得ない。
すなわち、機関投資家の予想が、再び裏切られる可能性は高い。
現在、筆者がフォローしている著名な機関投資家の「来年の見通し」を平均すると、2010年の6月末、年末における予想値は、それぞれ、ユーロ/米ドルが1.4200ドル、1.4000ドルで、米ドル/円は95円、100円となっている。
つまり、1年を通じて、米ドル高トレンドの進行が続くといったコンセンサスが読み取れる。
ところが、2009年同様に、彼らの予想が外れるという前提に立つと、米ドル高が一筋縄に進まないということになり、その結果、波乱含みの展開となりそうなのだ。
■ポジション解消は、意外と早く進むもの!?
為替市場では、相場が変動するとき、つねに、マーケットのコンセンサスの意表を突くという習性がある。
よって、足元で進行している米ドル高は、来年半ばあたりまでしか続かず、年末に向けては、再び米ドル安トレンドへと復帰するだろう。
なぜなら、現在進行している米ドル高は、3月から積み上げられてきたショートポジションの解消に過ぎないためだ(「そろそろ英ポンドのサプライズが起こる!?来年は『ポンドキャリートレード』が流行か?」を参照)。
新たなコンセンサスによって偏ったポジションが解消され、トレンドが逆に動き出しても、それはマーケットが想定しているよりも先走るケースが多い。
なお、誤解していただきたくないのは、機関投資家の能力や知恵に対して皮肉を言うために、このようなことを羅列しているわけではない。
彼らの見方を紹介する目的はただ1つ、マーケットのコンセンサスに照らし、来るべき市況の変化に備えることだ!
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 週足)
米ドル安トレンドが進行するにつれて、「ドルキャリートレード」という言葉が流行ったように、3月以降は米ドル安を確実視する風潮が強くなった。ついこの前まで、多くのアナリストが米ドルの暴落論を繰り広げていたほどだ。
原油決済通貨の米ドル離れの“ウワサ”に続き、あのゴールドマン・サックスでさえ、10月末に出したレポートで、年末までの英ポンド/米ドルのターゲットを1.8500ドルに引き上げていた(「原油決済通貨の変更などバカバカしい話。ドル安はこのあたりでクライマックスか?」を参照)。
しかし、足元では米ドル高が進んだことから、当然のように、多くの機関投資家は意表を突かれることとなった。
実際、彼らの多くは、10月末~11月初めに出した予測を取り消している。それどころか、正反対の方向への見通しの転換を余儀なくされた。
■足元で続く米ドル高は、一筋縄にはいかない?
このように、金融機関のコンセンサスの裏をかけば儲けられた2009年の相場であったが、来年もこのような傾向は続くのではないだろうか?
足元の米ドル高はトレンドの“途中”にあるものの、筆者は、この米ドル高トレンドが長くは続かないと思わざるを得ない。
すなわち、機関投資家の予想が、再び裏切られる可能性は高い。
現在、筆者がフォローしている著名な機関投資家の「来年の見通し」を平均すると、2010年の6月末、年末における予想値は、それぞれ、ユーロ/米ドルが1.4200ドル、1.4000ドルで、米ドル/円は95円、100円となっている。
つまり、1年を通じて、米ドル高トレンドの進行が続くといったコンセンサスが読み取れる。
ところが、2009年同様に、彼らの予想が外れるという前提に立つと、米ドル高が一筋縄に進まないということになり、その結果、波乱含みの展開となりそうなのだ。
■ポジション解消は、意外と早く進むもの!?
為替市場では、相場が変動するとき、つねに、マーケットのコンセンサスの意表を突くという習性がある。
よって、足元で進行している米ドル高は、来年半ばあたりまでしか続かず、年末に向けては、再び米ドル安トレンドへと復帰するだろう。
なぜなら、現在進行している米ドル高は、3月から積み上げられてきたショートポジションの解消に過ぎないためだ(「そろそろ英ポンドのサプライズが起こる!?来年は『ポンドキャリートレード』が流行か?」を参照)。
新たなコンセンサスによって偏ったポジションが解消され、トレンドが逆に動き出しても、それはマーケットが想定しているよりも先走るケースが多い。
なお、誤解していただきたくないのは、機関投資家の能力や知恵に対して皮肉を言うために、このようなことを羅列しているわけではない。
彼らの見方を紹介する目的はただ1つ、マーケットのコンセンサスに照らし、来るべき市況の変化に備えることだ!
■多くの市場関係者が意表を突かれるのは相場の宿命!
ある意味では、為替の相場ほど、単純なマーケットはないとも言える。
足元で進行している米ドルのリバウンドについては、いろいろな視点から解釈されているが、理由は単純だ。
3月以降の米ドル安トレンドが深まるにつれて、「ドルキャリートレード」で過大に積み上げられた米ドルのショートポジションの反動が起こり、急激に買い戻されて、それが今回の米ドル高をもたらしたに過ぎない(「そろそろ英ポンドのサプライズが起こる!?来年は『ポンドキャリートレード』が流行か?」を参照)。
これは、2005年あたりから見られ始めた「円キャリートレード」の構図と同じだ。
円安トレンドが深まるにつれて、積み上げられていた円のショートポジションの反動が起こり、米国のサブプライムローン問題や「リーマン・ショック」で一気に崩壊したものと違いはない。
金融機関のレポートは、ある意味では、市場コンセンサスの集大成である。その市場コンセンサスに沿って、投資家のポジションは積み上げられていく。
ゆえに、ポジションの偏りに対する反動が出たり、相場内部のバランスが崩壊すると、相場は大きく動く。それが「市場関係者の意表を突く」ということであって、これは相場の宿命だ!
■2010年最大のイベントは米国の利上げ!!
さて、筆者の予測を述べてみる。
2010年の相場についての大まかなイメージは、以下のとおり。
・春もしくは夏まで、景気回復や米国の早期利上げ期待に基づく米ドル買いが続く。
・しかし、その後は失望感が広がり、米ドル売りが優勢になる。
ここで言う失望とは、主に2つの要素が想定できる。
それは、米国の利上げの時期と程度が、市場予想よりも大幅に遅れることと、米国の景気が再び悪化し、場合によっては、「リーマン・ショック」並みの不祥事が再び表面化するリスクがあることだ。これらを念頭に置いておかねばならない。
つまり、2010年でもっとも重要なイベントは「米国の利上げ」となろう。その時期や程度に関する市場関係者の“思惑”から目を離すべきではない!!
■米ドル/円の上値余地は限定的か?
2010年の米ドル/円は、米ドル全体のリバウンドと相まって、春頃に98~100円レベルまで戻してもおかしくはないが、総じて、アタマの重い展開となろう。
ある意味では、為替の相場ほど、単純なマーケットはないとも言える。
足元で進行している米ドルのリバウンドについては、いろいろな視点から解釈されているが、理由は単純だ。
3月以降の米ドル安トレンドが深まるにつれて、「ドルキャリートレード」で過大に積み上げられた米ドルのショートポジションの反動が起こり、急激に買い戻されて、それが今回の米ドル高をもたらしたに過ぎない(「そろそろ英ポンドのサプライズが起こる!?来年は『ポンドキャリートレード』が流行か?」を参照)。
これは、2005年あたりから見られ始めた「円キャリートレード」の構図と同じだ。
円安トレンドが深まるにつれて、積み上げられていた円のショートポジションの反動が起こり、米国のサブプライムローン問題や「リーマン・ショック」で一気に崩壊したものと違いはない。
金融機関のレポートは、ある意味では、市場コンセンサスの集大成である。その市場コンセンサスに沿って、投資家のポジションは積み上げられていく。
ゆえに、ポジションの偏りに対する反動が出たり、相場内部のバランスが崩壊すると、相場は大きく動く。それが「市場関係者の意表を突く」ということであって、これは相場の宿命だ!
■2010年最大のイベントは米国の利上げ!!
さて、筆者の予測を述べてみる。
2010年の相場についての大まかなイメージは、以下のとおり。
・春もしくは夏まで、景気回復や米国の早期利上げ期待に基づく米ドル買いが続く。
・しかし、その後は失望感が広がり、米ドル売りが優勢になる。
ここで言う失望とは、主に2つの要素が想定できる。
それは、米国の利上げの時期と程度が、市場予想よりも大幅に遅れることと、米国の景気が再び悪化し、場合によっては、「リーマン・ショック」並みの不祥事が再び表面化するリスクがあることだ。これらを念頭に置いておかねばならない。
つまり、2010年でもっとも重要なイベントは「米国の利上げ」となろう。その時期や程度に関する市場関係者の“思惑”から目を離すべきではない!!
■米ドル/円の上値余地は限定的か?
2010年の米ドル/円は、米ドル全体のリバウンドと相まって、春頃に98~100円レベルまで戻してもおかしくはないが、総じて、アタマの重い展開となろう。
米ドル/円 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
もし、米ドル全体のリバウンドが夏頃まで続くのであれば、たとえば、ユーロ/米ドルと英ポンド/米ドルの急落が、ユーロ/円と英ポンド/円の急落をもたらし、これが円高圧力となって、米ドル/円に波及する可能性が浮上してくる。
つまり、米ドル/円の上値余地は限られてしまう。
半面、米ドル安トレンドへの復帰があれば、米ドル全体のパフォーマンスにつられて、米ドル/円は下値をトライしやすくなるのでは?
途中の乱高下も想定した上で、米ドル/円の平均年間変動幅を20円とすると、2010年の年末に向けて、80円割れまでの下落もあり得るだろう。
ちなみに、筆者は、ユーロ/米ドルが夏までに1.3200~1.3500ドルまで下落し、その後年末に向けては、1.5000~1.5200ドルまで上昇すると予想している。
もし、米ドル全体のリバウンドが夏頃まで続くのであれば、たとえば、ユーロ/米ドルと英ポンド/米ドルの急落が、ユーロ/円と英ポンド/円の急落をもたらし、これが円高圧力となって、米ドル/円に波及する可能性が浮上してくる。
つまり、米ドル/円の上値余地は限られてしまう。
半面、米ドル安トレンドへの復帰があれば、米ドル全体のパフォーマンスにつられて、米ドル/円は下値をトライしやすくなるのでは?
途中の乱高下も想定した上で、米ドル/円の平均年間変動幅を20円とすると、2010年の年末に向けて、80円割れまでの下落もあり得るだろう。
ちなみに、筆者は、ユーロ/米ドルが夏までに1.3200~1.3500ドルまで下落し、その後年末に向けては、1.5000~1.5200ドルまで上昇すると予想している。
ユーロ/米ドル 週足
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もちろん、これは大まかな予想であって、前述の市場コンセンサスとは逆であることも重ねて申し上げる。
また、強調しておきたいのは、前述した市場コンセンサスはあくまで平均値であって、筆者と同じシナリオを描く金融機関も少なからず存在している。
一方、欧米の利上げ時期や程度に関しては、各社でかなり意見が分かれており、平均値としてのコンセンサスが得られなかったことも付け加えておく。
最後に、2009年も残すところ、あとわずかだが、読者の皆さんや編集部の方々に、大変お世話になったことにお礼を申し上げる。
来年もたくさんの方々と切磋琢磨できるよう、がんばりたいと思う。
それでは、皆さん、メリークリスマス&よいお年を!
もちろん、これは大まかな予想であって、前述の市場コンセンサスとは逆であることも重ねて申し上げる。
また、強調しておきたいのは、前述した市場コンセンサスはあくまで平均値であって、筆者と同じシナリオを描く金融機関も少なからず存在している。
一方、欧米の利上げ時期や程度に関しては、各社でかなり意見が分かれており、平均値としてのコンセンサスが得られなかったことも付け加えておく。
最後に、2009年も残すところ、あとわずかだが、読者の皆さんや編集部の方々に、大変お世話になったことにお礼を申し上げる。
来年もたくさんの方々と切磋琢磨できるよう、がんばりたいと思う。
それでは、皆さん、メリークリスマス&よいお年を!
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