(「吉田恒さんに聞く(3) ~円高第2幕は大統領選挙前後に起こる~」からつづく)
前回まで、ドル/円相場のサイクルと、米国大統領選挙年のドル/円の傾向から、「ドル/円95円割れという”円高第2幕”は大統領選挙前後に起こる」と予想し、それを解説してくれた吉田さん。
そのドル/円における円高進行をリードするのはユーロ/ドルだと吉田さんは語る。
ユーロ/米ドル 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
■ユーロ/ドルにおける「00年との逆アナロジー」とは?
「そう考える根拠は『00年との逆アナロジー』ですね」
00年との逆アナロジー…。う~む、これはいったいどういう意味なのか?
「下のチャートを見てください。2つのチャートは似てますよね。長いチャートが00年のユーロ/ドル。短いチャートが今年のユーロ/ドルです。ただし、今年のユーロ/ドルは逆さになっています。
つまり、00年のユーロ/ドルと逆さにした今年のユーロ/ドルはソックリなんです」
■ユーロ/ドルにおける「00年との逆アナロジー」とは?
「そう考える根拠は『00年との逆アナロジー』ですね」
00年との逆アナロジー…。う~む、これはいったいどういう意味なのか?
「下のチャートを見てください。2つのチャートは似てますよね。長いチャートが00年のユーロ/ドル。短いチャートが今年のユーロ/ドルです。ただし、今年のユーロ/ドルは逆さになっています。
つまり、00年のユーロ/ドルと逆さにした今年のユーロ/ドルはソックリなんです」
なんでそんなことが起きているのだろう?
「それは00年と今年のユーロ/ドルを取り巻く環境がちょうど逆だからでしょうね。
00年はヨーロッパでスタグフレーションが懸念されていました。今はどうですか? アメリカでスタグフレーションが懸念されていますよね」
スタグフレーション……最近、特によく聞くようになったが、これは物価上昇と景気後退が同時に進行することを示す言葉。
「中央銀行は物価が上がったら利上げすればいい。景気後退したら、利下げすればいい。けれど、物価上昇と景気後退が同時に起こったら、中央銀行はどちらもできない、動けないわけです。
中央銀行が動けないとなると、マーケットは『その通貨を叩き売っても、どうせ何も動けないだろう』と思ってしまうので、通貨は売られることになります。
普通は通貨がドンドン売られたら、利上げするといった手がありますが、それも当然できません。すると、止まらない通貨安が展開されます。
通貨が下がるのはインフレ要因ですね。スタグフレーションが懸念される中で通貨安になったら、もっとインフレが懸念されます」
通貨安がさらに通貨安を呼ぶような負のスパイラル。こんな止まらない通貨安が展開されてしまったら、その時、通貨当局はどうするのだろうか?
「ただでさえ、物価が上昇しているのに、通貨安がさらにインフレ懸念を拡大させてしまったら、せめて通貨安だけでも止まってくれないかと当局が”口先介入”してくるんです」
■2000年にあった口先介入→協調介入の流れを振り返る
政府や中央銀行の関係者などが、為替水準に関する要望や考えを話すことで、為替相場の動きを変えようとすることが”口先介入”だ。
本当の”為替介入”は中央銀行や通貨当局が実際に通貨を売買して、為替の動きを変えようとするが、”口先介入”は当局の要人がしゃべっただけで、それを実現しようとする。
「ユーロ安が進行していた00年5月にECB(欧州中央銀行)は『ユーロ安を懸念する』という緊急声明を出したんです(下の再掲チャート参照)。すると、いったん、ユーロは上がったんですが、結局は下がっていって、今度はいよいよユーロ安が止まらなくなりました」
■2000年にあった口先介入→協調介入の流れを振り返る
政府や中央銀行の関係者などが、為替水準に関する要望や考えを話すことで、為替相場の動きを変えようとすることが”口先介入”だ。
本当の”為替介入”は中央銀行や通貨当局が実際に通貨を売買して、為替の動きを変えようとするが、”口先介入”は当局の要人がしゃべっただけで、それを実現しようとする。
「ユーロ安が進行していた00年5月にECB(欧州中央銀行)は『ユーロ安を懸念する』という緊急声明を出したんです(下の再掲チャート参照)。すると、いったん、ユーロは上がったんですが、結局は下がっていって、今度はいよいよユーロ安が止まらなくなりました」
00年はアメリカの大統領選挙もありました。止まらないユーロ安を止めるためには欧州だけが頑張ってもダメで、欧州と米国が協力して協調介入しないといけないけれど、『大統領選挙に近い時期では、協調介入できないだろう』という思惑が広がり、もっともっとユーロは下がっていきました。
ところが、米国大統領選を間近に控えた00年9月に協調介入が実現するんです(上のチャート参照)。みんな、ビックリしましたね。それで、結局、協調介入から1ヵ月ぐらいでユーロは大底を打ち、反転していくわけです。
今の話のユーロのところをドルに、ECB(欧州中央銀行)をFRB(米連邦準備制度理事会)に換えたら、今年とソックリじゃないですか」
■この秋、ユーロ/ドルは1.65~1.7を目指す
確かに今はアメリカでスタグフレーションが懸念されている。そして、ずっと長い間、ドル安が続いてきた。そういえばこのところ、”口先介入”も…。
「6月ぐらいからバーナンキが、ポールソンが、ブッシュが『ドル安は困る』と口先介入してきましたよね。
00年も口先介入の効果は1ヵ月ぐらいしかもたず、それからずるずるとユーロは下がりました。今回のアメリカの口先介入も、最初はマーケットがビックリしてドルは上がったけれど、また、ジワジワ下がってドル安ユーロ高のムードになっています。00年とちょうど逆の状態で似ていますよね。
ここまで似ているんだったら、ユーロ/ドルは8月に今まで壁になってきた1.6を上抜けて、1.65を目指し、9~10月に1.65~1.7になっていくという展開になるんじゃないでしょうか」
確かに上のチャートを見ていると、00年と今年が「逆」で「同じ」展開になるのなら、1.65を超えていきそうに思える。
(「吉田恒さんに聞く(5) ~アメリカは8年ぶりに為替介入をやるのか?~」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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