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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ドル/円の下落トレンドが再開されたが
ドル安は円以外の通貨でより進む!

2009年05月15日(金)18:25公開 (2009年05月15日(金)18:25更新)
陳満咲杜

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前回のコラムでは、ドル全面安の展開と、ドル/円が頭打ちとなって「三尊型(※)」を形成する可能性を指摘した。市況はまさにそのとおりの展開となっている「ドル安トレンドが次第に加速し、ドル/円が「三尊型」を形成する可能性も?」参照)

 特に、バロメーターとして挙げていたユーロ/ドルの200日線のブレイクは象徴的な出来事だった。

(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるためで、人の頭と両肩に見立てて「ヘッドアンドショルダーズトップ」と呼ぶこともある)

■先週末から相場が逆転し始めた!

 ただ、筆者の予測とはやや異なって、対ユーロ、対英ポンド、対豪ドルでのドルの下落はどちらかと言えば緩やかであったものの、対円では一直線の下落となった。その値幅は、4営業日で4円50銭程度となった。
米ドル vs 主要通貨 4時間足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル vs 世界の通貨 4時間足

 結果的には、クロス円(ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場も揃って下値を切り下げており、軟調な値動きとなっている。

 ロジックを整理してみる。

 まず、2009年の年初から「円を除いたメジャー通貨(ユーロや英ポンドなど)が対ドルでリバウンドし、それがクロス円相場の堅調をもたらし、これに相まってドル/円が上昇する」ということが相場を読み解くカギとなっていた。しかし、先週末からは逆転している

 すなわち「ドル/円の下落に伴ってクロス円相場が軟調となり、それがメジャー通貨対ドルにおいても、メジャー通貨上昇のスピードを落とす」といった関係になりつつあるではないかと推測できる。

■当面のクロス円相場が天井を打った可能性

 ドル/円が底割れとなると、当然のように、クロス円相場の見通しも修正しなければならない。結論から申し上げると、当面のクロス円相場は天井を打ったか、もしくは、これからもう少し上昇したとしても、さほど高いレベルにならないのではないかと見ている

 すぐにベア・トレンド(弱気相場)へ転換するとも想定しにくく、また年初来安値の更新もないであろう。
主要通貨 vs 円 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 日足

 それというのは、ドル/円は下落トレンドを再開したものの、2008年に見られたような急激な下げではなく、総じて緩やかなもので、おもに対円以外でドル安が進行すると見ているからだ。

 この理屈を説明するには、まず、2008年の状況を振り返る必要がある。
 シンプルに言えば、2008年に見られた円高は、リスク回避先として円が評価されたところが大きかった。しかし、その評価に受動的な要素が大きいことも見逃せない。

 つまり、「円キャリートレード(※)」に伴って、異常なレベルにまで積み上げられた円売りポジションの解消が背景にあり、円高の主役はユーロ/円、英ポンド/円や豪ドル/円などクロス円であった。

(※編集部注:「円キャリートレード」とは、金利の低い円を売り、相対的に金利の高い外貨を買って金利差を稼ぐ手法のこと)

■リーマン・ショック後のリスク回避先は「円」から「ドル」に

 2008年9月に発生した「リーマン・ショック」以来の世界的混乱の中で、ドルが避難先として選好された

 ドルは、対ユーロ、対豪ドル、対英ポンドなどで急伸し、対円においても本来は上昇するはずだったが、前記の理由からむしろ売られていた。その反動こそが、2009年の年初から見られている対円での上昇の原動力になっていると言えるだろう。

 パニック的な市場心理がかなり改善され、リスク選好が復活し始めた3月以降、反動的に、ユーロ、豪ドル、英ポンドなどの主要通貨に対するドルの下落は進んでいた。

 しかし、対円では前記の異なる「反動力」によって、先週までは「ドル高/円安トレンド」をキープしていた。だから、先週末からの「ドル安/円高」は異なる意味合いを持つと見るべきなのだ。
米ドル vs 主要通貨 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル vs 世界の通貨 日足

■ドル全面安が加速してもクロス円は暴落しない!

 つまり、2008年における対円での外貨下落は「円キャリートレード」の円売りポジション解消という受動的な要素が大きかったためであったのに対し、足元で見られるドル安/円高は「反動の反動」であって、円高の主役とはならない。

 言い換えれば、ドル全面安が加速してくると、2008年に見られたドル高の時の裏返しで、その受け皿は円以外の通貨になると思われる。円の上昇力は他の通貨に比べて弱いと推測されるため、クロス円は2008年に見られたような暴落にはならないとみる。

 一方、新興国の株価が2008年安値から50%以上も上昇しているように、短期的には市場の楽観心理が過剰に働いている恐れもある(市場心理はいつも行き過ぎるものだ!)。

 従って、短期的にはユーロ、英ポンド、豪ドルなどの主要通貨の対ドルでの上昇が一服する可能性もあるが、上昇トレンドは維持されるだろう。

■メジャー通貨対ドルの上昇が一服すると考える根拠は?

 ちなみに先週、ドル/円が天井を打って下落すると予測できたのは、テクニカル分析以外で、以下の2点も参考になった。

 まず、くりっく365の統計データが個人投資家の「円キャリートレード」再開を示唆していたこと。第2に、ドル/円も含めて、クロス円相場の上昇に懐疑的な見方を示す一部専門家がそろって上値予測を出していたこと。

 同じように、本日、メジャー通貨対ドルの上昇が一服するのではないかと見るのも、下記の材料が参考となった。

 量的緩和策によって英ポンドとユーロが暴落すると予測していた一部アナリストが、同じ政策を根拠として英ポンド高、ユーロ高を予想するレポートを出していたのだ。筆者の見方も含めて、この興味深いテーマを次回に説明したい。

(2009年5月15日 東京時間13:30記述)
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