その上、1985年の「プラザ合意」がその後日本で発生したバブルの元凶であったことから、中国の拒否反応がより強いものであることも理解できる(「菅総理の中韓批判はバカ正直すぎる!円高を進行させているのは日本政府自身」を参照)。

そうなると、これからの世界経済はますます不均衡になる。「通貨戦争」を含め、各国の摩擦がさらに激化していくことも覚悟しなければならない。
「通貨戦争」が進むと最悪の場合、保護貿易主義のまん延とそれに対する報復の応酬を招き、世界経済の失速と深刻な景気後退へとつながっていくだろう。
1930年代の大恐慌のように…
■韓国G20で合意が得られない場合、相場はどうなる?
これに対して、世界的に株式市場は回復しているのではないかといった反論がある。「二番底なし」と断言する政府高官やエコノミストも多く、筆者の考えは杞憂と片付けられがちだ。
だが、歴史を振り返れば、こういった局面だからこそ警戒すべきである。
2007年7月、当時のポールソン米財務長官は「今はかつてないほど健全で力強いグローバル経済」と絶賛し、その後、“ある人物”とともに「サブプライム問題はコントロールされている」と発言していた。
その“ある人物”とは、何を隠そう、現在のFRB議長を務めていらっしゃるお方だ。
したがって、仮にG20で何の合意も得られなければ、これこそ深刻な問題であり、次なる危機を引き起こすだろう。
合意できなかった場合、マーケットのとらえ方によって、次の2つのシナリオが考えられる。
1つ目は、米国は米ドル安を一層放任するとの思惑から、米ドルのさらなる暴落が見られるというもの。
2つ目は、世界経済がより不均衡になるとの不安から、株式などのリスク資産から資金が流失し、米ドルが避難先として買われるというシナリオだ。
いずれにせよ、年内は相場の「大揺れ」を覚悟したほうがよさそうだ。
■中国がくしゃみをすれば、マーケットがカゼを引く
ところで、中国の利上げは多くの市場関係者にとって寝耳に水の出来事だっただろう。正直、筆者も驚かされた。
米国の追加の量的緩和を控える状況下で、人民元の大幅切り上げを拒否する中国にとって、このような決定は自らを難しい立場に置いているように見える。つまり、ただでさえ先高感の強い人民元の利上げは、ホットマネーをさらに引き寄せることになる。
中国当局は人民元の大幅上昇を容認するはずはなく、為替相場と資本流動の管制を一層厳しく行うに違いない。

中国の利上げ決定は、G20の前だけにさまざまな憶測を呼ぶ。
米国と裏取引したという見方をすれば、米国の追加の量的緩和は市場予想よりも遅れるだろう。
もっとも、国内の過剰流動性と不動産バブル、インフレの膨張は当局にとって待ったなしの状況であったことから、「やむを得ず」といった視点は正論であろう。
原因はともかく、かつて「米国がくしゃみをすれば、世界がカゼを引く」と言われたように、現在は「中国がくしゃみをすれば、マーケットがカゼを引く」状況なのだ。今週の値動きはその証である。
皮肉にも、今後中国の経済成長の減速が確実になればなるほど、米ドルはリスク回避の観点から買われやすくなる。
けれど、中国の利上げは、他ならぬ中国当局が「利上げをしても問題ない」とこれからの経済運営に自信を持っている証明である。
よって、大きなトレンドとしての米ドル安は当面続くのでは!
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