米ドル/円は151.88円へ上昇し、2022年、2023年の高値に迫る。
日銀会合を通過して円安が大幅に進行!
市況は、波乱し続けている。まず、日銀会合を通過した後の大幅な円安の進行があった。米ドル/円は、一時151.88円まで上昇し、2022年、2023年高値を突破していく勢いであった。
(出所:TradingView)
円売りの根拠は、後付け解釈としては、いろいろなものがあった。日銀のマイナス金利解消があっても実質金利がなおマイナスの円が売られやすいとか、当面、日銀の緩和(国債買い入れ)は続くから円売りに安心感を与えたとかだ。そうした解釈は、それ自体は間違いではないが、円の急落を解釈するには、やや強引だと思う。
何しろ、前述の根拠は事前に予想できたもので、まったくサプライズではなかった。まったくサプライズがなかったことが、実は本当の理由ではないかと思われる。何しろ、今回の日銀会合は、かなり「異常」だったからだ。
中央銀行が重要な会合の前に、意図的に一部の内容をマスコミに流し(いわゆるリーク)、マーケットの反応を確認するのは珍しいことではない。
しかし、今回のように日銀が決定内容を何もかもマスコミにリークし、相場もそれを完全に織り込んでいたというのは珍しい。
結局、その後の反動も大きかったこと、また、円の反動安が大きかったことは日銀の想定を超えていたと推測される。
米ドル/円は、噂で円が買われて一時140円台半ばに。
日銀会合当日は、円が売られて典型的な「事実の売り」に
もっとも、円の反動安が大きかったのは、以下のような理由からだろう。
事前のリークで円の金利は急伸していたが、日銀会合で決定した政策修正事項(マイナス金利解消、YCC撤回、株ETF買い入れ停止)は、事前にさんざん報道され、また広く知れ渡っていたから、米ドル/円は、一時140円台半ばまで円が買われていた。これは、典型的な「噂で買い」であった。
そして、日銀会合前だから「事実の売り」ではなかったものの、米ドル/円の切り返しが観察されたのは、前述のように実質金利や日米金利差による判断が、円売りポジションの解消(高田日銀委員の発言前では円売りが主流であった)を一巡させたからだと考えられる。
日銀会合当日の米ドル/円や主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円の急落は、典型的な「事実の売り」だったが、事前の逆転ではなかったので、かえって円売りの度合を一段と拡大させた。
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日銀の金融政策正常化以降、日本国債10年利回りの急落も基本的には同じ構造であった。この意味合いでは、日銀の誤算であったかもしれない。ただし、株式市場にとっては一件落着なので、続伸したのもわかりやすく、日銀の思惑のとおりであったかもしれない。
米FOMCを経て、米ドルはいったん全面安へ。
しかし、スイス中銀の想定外の利下げで波乱は続く
さらに、「鬼門」となる3月FOMC(米連邦公開市場委員会)も無風通過だったと言える。FRB(米連邦準備制度理事会)は「意外」にもタカ派の姿勢を見せず、2024年年内3回の利下げのシナリオをそのまま維持した。日米株ともに史上最高値を更新し、米ドルがいったん全面安になったのも自然な成り行きと思われた。
(出所:TradingView)
なにしろ、FRBは「ハト派」だったと解釈され、米金利の低下で米ドル売りが優勢となり、ユーロや英ポンドなど主要外貨に対する米ドルの反落が理に適っていた。対円でも、150.27円までいったん反落、円売りに歯止めがかけられたように見えた。
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しかし、波乱が続いている。昨晩(3月21日)米ドル全体は大きく切り返し、英ポンドなど外貨は大きく反落した。もちろん、円は再度売られ、これから安値を更新していく勢いを目先まで示されている。
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スイス中銀による想定外の利下げが、波乱を強めたと言われている。
市場コンセンサスとして、スイスの利上げがあっても今ではないとされる。想定外の利下げで、EU(欧州連合)や英国の早期利下げが連想され、米ドルが買われたわけだ。
ドルインデックスで見るとわかるように、FOMC通過後の反落幅をすべて帳消しにし、FOMC当日(3月20日)形成された日足における重要なサインを否定していた。
チャートのサインによると、米ドル全体はしばらく強含み。
米ドル安への転換があっても、後ずれに?
本来ドルインデックスにおける3月20日(水)のローソク足(緑の矢印)は、3月6日(水)以来の高値を更新した後で反落、大幅安で大引けしたから「弱気リバーサル」と認定されていた。
(出所:TradingView)
その弱気サインが一晩で否定されたわけで、むしろ3月8日(金)安値を起点とした切り返しの可能性を証明したと言える。
もっとも、3月8日(金)のローソク足(ブルーの矢印)は「スパイクロー」のサインだった。しかし重要な水準に対するいったんの下放れだったことに鑑みると、昨日の大幅な切り返しがあって、目先はむしろ「フォールス・ブレイクアウト」のサインとしてあり得る。
すなわち、いったん下放れしたのが「ダマシ」であった可能性がある。この場合、米ドル全体はしばらく強含みで、米ドル安への転換があっても後ずれになると推測できる。
だからこそ、高値更新したばかりのユーロ/円や英ポンド/円のさらなる上値トライの勢いはいったん低減したように見えるし、米ドル/円の高値を追うスタンスにも距離を置きたいと思う。詳細は、また次回、市況はいかに。
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