では、ここで松本氏に為替の長期見通しを聞いてみよう(この取材は2010年6月末に行っています。その点はご了承ください)。
■クルーグマンの見解はおかしい!
「為替って交換レートですよね。だから、基本的に『ドルの底は抜けない』と昔から思ってるんです。『ドルの底が抜ける』っていろいろな人が言ってますけどね。
僕はクルーグマン(※)と話したことがあるんですが、そのとき、『ドルの底が抜ける』というのはおかしいだろうと言ったんです。
というのは、世界の金融資産の6割はドル建てなんですよ。為替は交換レートだから、ドルを売ったら、その分、何かを買わないといけない。世界の6割のものを大量に売って、他のものを大量に買うなんて不可能ですよね。
だから、ものすごく長い目で見ていくと、徐々にドルが人民元に取って代わられるといったことはあり得るかもしれないけれど、当面はドルの底が抜けることはあり得ないと思っています」
(※「クルーグマン」とは、プリンストン大学&ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授のポール・クルーグマンのこと。2008年にノーベル経済学賞を受賞)

■発達した国債マーケットは米国債と日本国債だけ
では、円はどうだろう?
「日本もいずれ少子高齢化がもっと進んで、それによって税収が不足して、財政問題がさらに深刻化してくると円安になることもあるでしょう。
ただ、当面は円も強いでしょうね。というのは、世界の金融市場で発達した国債マーケットは米国債か日本国債しかないんですよ。
ドイツ国債もありますが、それはドイツマルク建てのドイツ国債じゃなくて、ユーロ建てのドイツ国債なんです。
ユーロ建てのユーロ債はないから、ユーロってなんか緩いんですね。
そうすると、危機になったとき、いざというときに買えるものは、やっぱり米国債と日本国債ということになる。お金の置き場所がそこしかないんです」
■ユーロ財務省がないことがユーロの問題
では昨今、何かとお騒がせのユーロはどうなのか?
「ユーロは結局、ユーロ財務省というものがないわけですね。ユーロ圏の財務省は各国独自なわけです。そして、域内で問題が起きたとき、各国が負担の割合をどうするか事前の合意がない。
ギリシャなんて経済規模は大したことがないのだから、ユーロ圏ほどの図体があれば、別に問題にならないはずなんです。
けれど、問題が起きた時の枠組みがまだきちんとできていないので、小さな問題が増幅されてしまうところがある。
トレーダーとしては、本当はこんなにユーロを売らなくていいんだけれど、話が増幅されて売られるから、自分も売った方がいいよねということで、結局、ユーロは売られてしまうわけです。
だから、ユーロ圏各国が付け焼き刃的ではなく、根本的にこの問題を治すんだという合意ができないとユーロはダメだと思います。ただ、そのことは明日にでも変化があるかもしれませんが…」
■初心者にやさしい1000通貨単位の取引
さて、ソロモン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックスでトレーダーとして大活躍してきた松本大氏は、1999年にマネックス証券を設立。今はマネックスグループとマネックス証券の代表取締役社長という立場になっている。
ザイFX!の読者が当然一番興味があるのはFX。マネックスグループ内でのFXのサービスはどんなふうになっているのだろうか?
「当社のグループ会社でFXを扱っているのは総合ネット証券のマネックス証券とFX専業のマネックスFXです。サービス名はマネックス証券が『FX PLUS』、マネックスFXが『外貨deサポート』ですね。また、その他にマネックス証券、マネックスFXでは、FXの取引所取引である『大証FX』も取り扱っています。
FXだけをやるのなら、専業のマネックスFXの方が簡単にできていいと思います。また、資産運用を総合的にやりたい、その中でFXもやっていきたいという方なら、マネックス証券の方が他の金融商品も取り揃えているのでいいでしょうね」
これに加えて、記者としては、マネックス証券の「FX PLUS」もマネックスFXの「外貨deサポート」もどちらも1000通貨単位で取引できることを利点として挙げておきたい(1000通貨単位で取引できるFX会社はまだ少数派だ)。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)