(「トレーダーとしての松本大を大解剖(1) 数十億円の上場益を捨てた男」からつづく)
では、どれぐらいすごい量の取引だったのか?
■想定元本で10兆円ぐらいのポジションを持っていた!
「一つ、金利先物の例をお話ししましょう。
その昔、短期金利の先物ではシカゴの取引所に上場していた米ドルの3ヵ月金利先物が世界一取引量が多かったんです。ところが、1995年に今の東京金融取引所ですね、あそこの円の3ヵ月金利先物が1回だけシカゴを抜いて世界一になったことがあったんです。
そのとき、実は僕はその円の3ヵ月金利先物全体の10%のポジションを持ってました。売りか買いか一方向にそれだけのポジションを持ってたわけじゃないんです。複雑に入り組んだ取引をしていて、それが膨らんでいった結果、そうなっていたんですね。
そのとき、想定元本でいうと、10兆円ぐらいのポジションになってました」
一つひとつ説明しよう。東京金融取引所とは、FXファンにはおなじみ、「くりっく365」を扱っているあの取引所のことだ。今はTFXという略称で呼ばれるが、その当時はTIFFE(タイフ)と呼ばれていたらしい。
そして、東京金融取引所には「くりっく365」だけでなく、円の短期金利先物も上場されているのだ。
そして、想定元本とは……FXにたとえると、証拠金ではなくて、取引数量のようなもの。仮に口座へ10万円入金して、1万米ドル(1ドル=90円として90万円分)買ったとすると、この10万円の方ではなく1万米ドル(90万円)の方が想定元本に相当するイメージになる。
つまり、想定元本というのは、数字が大きくなりやすいものなのだが、それにしても、10兆円というのはすごい金額だ。
そんな巨額の取引を行っていて、しかも売りと買いが入り組んでいて、自分が儲かっているか、損しているか、わからなくなったりしないのだろうか?
「それは全部しっかり計算して、どんなに複雑でもリアルタイムで今いくら儲かっているか、損しているか、わかるようにしてあるんです」
■裁定取引的なことをデリバティブで実現
松本大氏がやっていたトレーディングの具体的なところに迫るのはなかなか難しそうなのだが、それはたとえば、相場全体の上げ下げには関係なく利益が得られる裁定取引(アービトラージ)とは違うのだろうか?
裁定取引は似たような金融商品で価格差が拡がったり、縮んだりしているものを狙う取引。価格差が拡がったとき、割高になった方を売ると同時に、割安になっている方を買い、その価格差が縮小したときに同時に決済して利益を得る。
松本氏はそんな取引をやっていたのだろうか?
「裁定取引のようなこともやってましたよ。
ただ、マーケットに出ていって、割高な方を売り、割安な方を買うのが本来的な裁定取引ですが、そこで、マーケットで直接売買するのではなく、それと似たことをオプションなどのデリバティブを使って実現しようとしていました。
割高な方をさらに高く売り、割安な方をさらに安く買えるようなアイデアをデリバティブで考えて、機関投資家向けに提案し、相対で取引したりするんです。
そうすると、裁定取引による利益に、機関投資家向けデリバティブ取引による利益が上乗せされるわけです。そんなことの積み重ねでしたね」
■デリバティブトレーダーでも相場観は関係ある!
松本氏の話を聞いていると、トレーディングといっても、買いポジションを持っていたら相場が上がって儲かった、相場が下がって損したといった単純な話とはかなり違うようだ。
緻密な計算に基づき、相場が上がっても下がっても儲かるようなことをやっていたように見える。
となると、デリバティブトレーダーには特に相場観のようなものは必要ないのだろうか?
「相場観は関係あるんですよ。デリバティブトレーダーでも、その相場観は利益を大きく左右します」
「たとえば、オプションのポジションを何か持っているとしますね。そのとき、そのリスクを軽減するために、オプションの“原資産”となっているものを下がったら買い、上がったら売るということをやるんです。
これをダイナミックヘッジと言いますが、このとき、どこまで下がったら買う、どこまで上がったら売るというのは、計算で自動的に出てくるものではなくて、トレーダーの相場観が関係してくるんです。
そして、そのタイミングによって利益は大きく上下します。
つまり、デリバティブトレーダーは難しい理論を駆使して、緻密な計算を重ね、どう転んでも儲かるようなポジションを組んでおくのが基本なんですが、そこからさらに大きく儲かるかどうかは、相場観によるんですね。
だから、相場が上がるか下がるかということは、毎日、毎時間、毎分考えているような感じでしたよ」
■ロイターから電話がかかってきたとき、何と答える?
相場観がデリバティブのトレーディングにも関係あることはわかった。
ただ、記者がどうしても普通にイメージしてしまうトレーディング——それは個人のデイトレーダーさんのイメージなのだが、デスクにたくさんのモニターを並べ、いろいろなチャートを見て、ニュースを見て、場の雰囲気を感じて、ココだ! と思ったときにドンと買うといったようなものだ。
松本氏はそんな感じのトレーディングはやはり、やっていなかったのだろうか?
「それは自分のトレーディングのメインではないです。けれど、そういうこともやってました。
単純な相場観でボーンと買ったり、ボーンと売ったりするわけですね。その場合、必ず利益が出るとは限らないわけですが…。
僕がボーンと買うと、ロイターとか時事通信社とか、いろいろなところから電話がかかってくるんですよ。『買いませんでしたか?』みたいなことを聞かれるんです。10回中9回ぐらいは、全然違う話をして、電話を切るんですけどね。
たまにちゃんと答えると、それが通信社の情報端末に出ちゃったりして、それでみんなが僕と同じ方向に買いにきたりとか…。そんなこともありました」
■歴史に残るような為替のトレードとは?
さて、ここまで松本氏にトレーディングの話をいろいろ聞いてきたが、ザイFX!としては、為替のトレーディングについても聞きたいところだ。松本氏が行っていた為替のトレーディングとはどのようなものだったのだろうか?
「僕は日本で働いていたけれど、ゴールドマン・サックスの本社はニューヨークですよね。だから、最終的な損益はドルで見るんです。そうすると、儲かった円はドルに替えないといけない。
それは定期的に替えればいいかというと、やっぱり少しでもいいタイミングで替えたいと思うようになりました」
こうして、いわゆる“実需の買い”的なものが、為替のトレーディング的なものへ変化していったそうだ。
そして、松本氏には為替で自慢のトレードがあるという。それはまさに歴史に残るようなトレードだった…。
「僕は79円台でドルを買ったことがあるんですよ」
(「トレーダーとしての松本大を大解剖(3) 歴史的トレード、79円台でドルを買った!」へつづく)
(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/中野和志)
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