金融マーケットほど初心者を悩ませる場所はないだろう。というのは、いわゆる「生活の肌感覚」がことごとく裏切られがちで、通常の「お勉強」の努力が実らないことが多いからだ。
十数年前、筆者もその一人であったが、多くの学費を払った上、やっと以下の真実に気づいた。
■バイアスを持っていないアナリストはいない
まず、金融相場における正常な姿とは、情報が錯綜し、情報に関する解釈と相場に対する見方で常に正反対なものが数多く存在する状況である。
逆に言えば、共通した認識と見方が示される時こそ、「おかしい」と思った方がよい。また、専門家と一般の方の見方が妙に合致している時期ほど、逆の大相場になりやすいので、要注意だ。
次に、ファンダメンタルズ派にしても、テクニカル派にしても、主観的な判断とバイアスを持たないアナリストはいない。主観のまったくない人がいたとしても、逆に何も結論を出せず、見解を述べられないだろう。
前回も指摘したように、金融市場における因果関係は複雑すぎて、すべてを究明し、理路整然に解釈できる人はいないはずだ。また、価格形成に影響を与える各要素が常に流動的なため、因果関係を特定できるとは限らず、一定のスタンスをもって相場に臨まないと仕事にならない(「ドル上昇トレンドが終えんしたと判断するのは性急だ!」参照)。
突っ込んで言えば、ある程度の「結論ありき」なしではアナリストは務まらない。
■多くのファンダメンタルズ論者は「隠れテクニカル派」だ
そのためか、表面上ファンダメンタルズ派とテクニカル派に分けられるが、多くのファンダメンタルズ論者は「隠れテクニカル派」と言えよう。
少し振り返ってみればおわかりのように、相場がブル(上昇)基調の時はファンダメンタルズをプラス方向に解釈し、相場がベア(下落)基調の時はファンダメンタルズからマイナスの材料を探し出して根拠にしている評論家やアナリストは実に多い。だから結局、皆は一緒なのだ。
だから、一個人として相場に参加するなら、基本的な心構えとスタンスを自ら確立しないと、結局流されるだけで、「お勉強」すればするほど混乱し、困惑し、決断を出せなくなる恐れがある。このような状況から脱出するには、相場の不確実性を悟り、それとうまくつき合うことが先決と言えよう。
■ファンダメンタルズに関する解釈はすべて「我田引水」
今週の例で言えば、まずファンメンタルズでは、4月22日(水曜日)に英国が史上最大規模の国債発行を決定したことを受け、「英国の格付けランキングが引き下げられる恐れがあるから、英ポンドの下落が避けられない」という見通しが多く聞こえてきた。
英ポンド/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 4時間足)
もっとも語られた材料の一つは、2014年までに英政府の負債のGDPに対する比率が79%にまで達するということ。これは英ポンド安のバイアスを持つアナリストにとって、有力な予測の根拠になっただろう。
だが、日本の例から見れば、このような根拠は取るに足らないだろう。日本政府の債務はすでにGDPに対して160%のレベルまで膨らんでおり、円高の傾向は依然続いている。
しかも、円はいずれ95年の高値を更新すると言われており、ポンド安論者のロジックと明らかに矛盾する。
この例から得られた結論は極めて明白だ。すなわち、あらゆるファンダメンタルズに関する解釈はすべて「我田引水」であり、それに基づく結論はほとんど確実性を持たないものと心得るべきだ。
では、テクニカル分析であれば、確実な判断につながるか。
もっとも語られた材料の一つは、2014年までに英政府の負債のGDPに対する比率が79%にまで達するということ。これは英ポンド安のバイアスを持つアナリストにとって、有力な予測の根拠になっただろう。
だが、日本の例から見れば、このような根拠は取るに足らないだろう。日本政府の債務はすでにGDPに対して160%のレベルまで膨らんでおり、円高の傾向は依然続いている。
しかも、円はいずれ95年の高値を更新すると言われており、ポンド安論者のロジックと明らかに矛盾する。
この例から得られた結論は極めて明白だ。すなわち、あらゆるファンダメンタルズに関する解釈はすべて「我田引水」であり、それに基づく結論はほとんど確実性を持たないものと心得るべきだ。
では、テクニカル分析であれば、確実な判断につながるか。
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