昨日は黒田総裁が「まったく金融引き締めの状況にない」と断言したことで、超緩和の異常事態をまだ当面は続けると強調した。これでドル円は円売りで反応はしなかったが、日本株は暴騰した。日経先物は朝がたに27500円大の前半まで。
円相場への反応はニューヨーク時間に入ってからだった。131円台に突っかけると、もうネバーカムバック状態となって、ひたすら高値負い。ユーロ円も141円台まで上昇した。円の全面安となったのが、円を売っておくのがいちばん安全という感触も強まった。
同時にドル金利が上昇に向かったのも大きい。10年ものの利回りは3%台に乗せてきた。円がマーケットをリードしていたので、ユーロドルなどは値幅が小さい。下がるには下がったが、やっと1.06台に入ったというところまで。私もユーロドルのショートで参戦しているので、効率が悪いと言わざるをえなかった。
しかし黒田総裁は「国民は物価高を受け入れている」などと発言してしまったのは、過去に麻生首相が「カップラーメンは400円」としゃべったのと同じくらい間の抜けたことだとの認識はあるのだろうか。もちろん金融行政のトップにいるのだから、世界的にインフレ撲滅のために総利上げモードに突入しているのは承知しているはずだ。それなのに電気料金の値上げや生鮮食料品の値上げに困窮している国民の感情を本当に逆なでする事になったらどうなるだろう。
インフレに弱いのは長期債をはじめとするフィクスド・インカム・アセット全般である。名目がフィックスされているから、物価上昇には価値の減退を免れない。一般市民にとってフィックスド・インカム・アセットの代表が年金収入である。かっぱえびせんが120円だったのが130円になるだけでも大変なのに、これから医療費や輸入品が値上がってはたまらないというわけだ。
もう1ヶ月あまりで国政選挙があるというのに、年金生活者の4000万票を落とすことにでもなったら、自民党はふたたび大敗する可能性もありえる。そのときには黒田総裁の更迭論も出てくるだろうし、日本円も利上げの芽が出てくるとなると、ドル円なんかも一気に100円割れまで進んでしまうかもしれない。相場のパラダイムチェンジというやつだ。
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