予想より高い米CPIにもかかわらず、株や米ドルは
なぜかスピード調整のような動きに!
昨日(2022年10月13日)、マーケットは大波乱となった。想定より高い米9月CPIが発表されると、当然のように米株は急落、そして米ドル全体は急伸した。
(出所:TradingView)
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米10年物国債利回りは一時4.063%の高値を付け、米ドル/円も32年ぶりの高値を更新。いったん147.66円をトライした。
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しかし、その後、一転して米株の急反発がみられ、NYダウは2.83%の上昇率を記録した。
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ザラ場において、一時540ポイントの下落があったにも関わらず、その後960ポイントに近い反騰幅を達成。2020年4月以来、1日における最大の変動幅を記録した。
S&P500やナスダックも似たような値動きで、安値割れから劇的な大反転を果たした。きっと、多くの市場関係者は度肝を抜かれたに違いない。
為替マーケットでは株式市場ほどではないものの、ドルインデックスが113.85の高値から反落。112.25の大引けをもっていったん頭打ちを示し、英ポンドをはじめ、諸外貨の切り返しが一層、鮮明になってきた。
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米ドル全面高の流れはなお維持されているものの、高いCPIのリリースで逆にスピード調整らしい値動きになったことは、多くの市場参加者にとってサプライズであった。
ミセス・ワタナベは米ドル/円145円台後半から売りを仕掛け、
介入を待っているが…
米株の急反転について、普通なら、いろんな理屈を引っ張り出して、いろんな解釈が行われるところだが、今回はあまり聞こえてこない。要するに、事後的な解釈でも容易ではないのだ。
短期ショート筋の買い戻しとか、売られすぎ(米ドルに関しては逆に買われすぎ)だったからといったテクニカル要素のみが挙げられ、理屈屋を恐縮させるほど、昨日(10月13日)の市況は波乱となった。
もちろん、売られすぎなどの理由自体は立派な根拠である。ただし、売られすぎだから大きくリバウンドしてくるとは限らないし、米インフレの高騰で2022年年内大幅利上げ継続の見方が圧倒的(11月0.75%利上げがほぼ確実)になった途端、米株の大逆転が起こったこと自体、やはり尋常ではない。相場は理外の理だ。やはり、底打ちの一環として捉えるべきではないかと思う。
ただし、それもあくまで仮説で、市況をていねいにフォローして、基調の改善をしっかり確認しておかないと安心できない。 結局のところ、相場のことは相場に聞くべきで、昨日(10月13日)の米株の波乱をいったん底打ちのサインとして認識するなら、同サインの有効性をこれからの市況に合わせて追認するほか方法はない。
為替市場に関しては、昨日(10月13日)ザラ場において政府・日銀の介入があった、という認識があるが、筆者はそう思わない。2度目の介入があれば、より大きな変動率があったはずだが、昨日(10月13日)の米ドル/円の市況は、いたって通常の範囲内であった。
おもしろいことに、日経新聞の報道でもあったように、ミセス・ワタナベさん(日本個人投資家)たちは介入を見込んで、145円台後半から多量の米ドル売りを仕掛けていたようで、政府・日銀の介入を切なく待っていると思われる。
仮に政府・日銀が2度目の介入をなかかなか発動しない場合、彼らのショートポジションがまた踏み上げられる可能性がある。その場合、逆に米ドル/円の一段高をもたらす存在となるだろう。
2度目の介入がなかなか発動されないのは、1度目が失敗に終わったから
では、政府・日銀による2度目の介入が期待されているのに、なかなか発動されない理由はどこにあるか? 憶測にすぎないが、一番大きな原因は9月22日(木)の介入が失敗に終わったこと、そして、英ポンドの市況に示唆されたこともあるかと思う。
米ドル全面高の流れにおいて、日本単独の介入が効かないことはすでに証明された以上、当局は、より慎重なスタンスを取らざるを得ない。147円台より150円といった大きな心理的な節目で再介入した方がいい、といった考えがあってもぜんぜん不思議ではないだろう。
さらに、史上最安値を更新した英ポンド相場に、英当局は介入しなかったが、今のところ回復しており、このまま維持できれば、介入しなくても英ポンド危機が自然に終焉していくことも想定できる。
もっとも、円安に多大な危機感をもつ日本当局に比べ、英当局の危機感がどれくらいあるかはよくわからないが、史上最安値を更新したということは、米ドル/円の感覚で言えば360円を超える円安の進行を静観していたということなので、「大人の対応」であったに違いない。
良し悪しは別にして、ここで言いたいのは、米当局の協力なしでは、「介入行為自体が逆効果しか得られない」というリスクの方が大きいということだ。介入すればするほど当局を逆張りする意欲が刺激され、さらなる円安を推進していく、といった理屈も繰り返し指摘してきたので、ここで繰り返す必要もなかろう。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は再度、高値更新の可能性あり! 2度目の為替介入があれば、むしろ押し目買いの好機と映る。日銀が介入するほど米ドルが買われて逆効果に?(2022年10月7日、陳満咲杜)
日本当局の単独介入で円安は阻止できない
さらに、前述のように、「介入したから」、また「再度介入を示唆しているから」と便乗するミセス・ワタナベさんたちの「介入プレー」も問題を生じさせている。
介入を見込んで先に米ドル売り・円買いをしていたら、実際、当局の介入があった場合、一時の米ドル下落があっても、たくさんの米ドル買い戻し(ミセス・ワタナベさんたちの利益確定)が行われ、結果的に当局の介入効果をさらに減少させる存在になりかねない。
「さらに」と強調したのは、2度目の介入は、仮に総額が同じ場合は、通常、最初の介入時に比べ、その効果が半減すると統計上の結果があるからだ。2度目の介入が、そもそも初回より効果が弱いのであれば、「介入プレー」の存在でさらに介入効果を削ることになるはずだ。
いずれにせよ、日本当局の単独介入だけでは円安を阻止できないことを再度、記しておきたい。
そして、米ドル全面高のスピード調整はすでに進行している可能性が大きいから、前回のコラムで述べたとおり、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の好調を、引き続き有力視したい。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は再度、高値更新の可能性あり! 2度目の為替介入があれば、むしろ押し目買いの好機と映る。日銀が介入するほど米ドルが買われて逆効果に?(2022年10月7日、陳満咲杜)
ユーロ/円はもちろん、最近の「問題児」である英ポンドでも、対円の2022年年初来高値更新があり得るので、政府・日銀の2度目の介入の有り・無しにかかわらず、円安をリードするのが米ドル以外の主要外貨となる時期に入っていくと思う。市況はいかに。
14:00執筆
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