利上げ加速との観測で米ドル高基調維持。日銀による2度目の為替介入があれば、押し目買いの好機と映るか
米連銀総裁などの発言によって、米利上げ加速といった観測がまた強まり、米ドル高の基調が維持されている。
(出所:TradingView)
ゆえに、今晩(10月7日)の米雇用統計が良ければ、一層、米ドル高がもたらされると推測され、逆に想定より悪ければ、米ドル高一服の材料として株式市場の切り返しを支援していくだろう。いずれにせよ、しばらく波乱含みの展開を覚悟していくしかない。
米ドル全面高の継続で、一番困るのは日銀かもしれない。いったん3兆円に近い資金を使って円買い介入を行ったが、目先までで介入の効果がほぼすべて帳消しにされている。このままでは、米ドル/円の再度高値更新があってもおかしくないから、再度介入せざるを得ない情勢となっている。
(出所:TradingView)
しかし、一般論として2度目の介入があっても、通常その効果は低減していくから、米ドルのロング筋にとって、日銀の2度目の介入があれば、むしろ押し目買いの好機と映る。
介入すればするほど米ドル買いに躍起になる投機筋の逆張りで、むしろ一段と米ドルが買われるなら、介入自体が逆効果になるリスクさえある。
英ポンドは「自然」な底打ちを果たした公算が大きい
対照的に、史上(1971年以降の変動為替相場史上)最安値を更新した英ポンドは、今のところ英中銀による英ポンド買い介入の気配はなく、むしろ「自然」な底打ちが形成されやすいかと思う。
なにしろ、英ポンドの暴落、また先週月曜(9月26日)あたりのフラッシュクラッシュは、米利上げ見通しより英新政権の財政政策がもたらした混乱やパニックといった側面が大きかった。先週(10月3日~)、史上最安値から大きく切り返してきた以上、底打ちを果たした公算が大きい。
(出所:TradingView)
要するに、相場の力によって英ポンドの底が形成された可能性が大きい一方で、日銀の介入によって一時底打ちとなった円の方は疑わしく、逆にさらに売られる可能性がある。米利上げ加速といった観測が高まれば高まるほど、その格差も鮮明化してこよう。
なぜなら、英ポンドはすでにパニック的なフラッシュクラッシュを経験、また史上最安の水準にあるから、これ以上の売り込みは無理がある。
対照的に、円の史上最安値は357円~360円あたりなので、急速な円安の進行があったとはいえ、やはり絶対水準で言えば、英ポンドとは比べものにならない。
英ポンド安と円安のどちらに余地があるかと言えば、明らかに円の方が余地は大きいと思われる。
だからこそ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)としての英ポンド/円は、先々週(9月19日~)から歴史的な変動率をもって大きなサインを点灯し、強気内部構造を示していた。
クロス円の代表格は、本来ユーロ/円であるはずだが、英ポンドの変動率が圧倒的に大きかったから、直近の好例としてやはり見逃せない。
日銀の2度目の介入時に英ポンド/円の押し目を狙える!
英ポンド/円の先週(9月26日~)の足型は、歴史的な変動率をもって典型的な「スパイクロー」のサインを形成、2021年安値ゾーンを再打診した形で内部構造を再確認したと思われる。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
同安値の148円台は、対米ドルで史上最安値を更新した英ポンドが対円の究極の安値として記録したわけなので、これからよほどのことがない限り割り込みはないと、ほぼ断定できる。
さらに、先週(9月26日~)は事実上、大陽線で大引けしたことも、重要なサインであった。今週(10月3日~)以来の高値がいったん先々週(9月19日~)の高値を更新していたことから考えて、事実上「強気リバーサル」のサインを果たし、これからの高値更新を示唆するサインとして、支配力を発揮していくと推測される。
したがって、先週(9月26日~)安値の割り込みさえ回避できれば、紆余曲折があっても、これから英ポンド/円の高値再更新は確実視され、メインスタンスとして英ポンド/円の押し目買いを実行していくべきであろう。
この意味合いにおいて、日銀の2度目の介入があれば、英ポンドのロング筋にとって、むしろ歓迎される出来事だ。
押し目買いの場合は、できるだけレンジにおける下限を狙いたい。英政策不安の後退で英ポンドの波乱の再来が期待しにくいなら、日銀介入によって起こる一時的な円の急騰を期待するのが現実的で、その際、英ポンドの押し目を狙えるというわけだ。
ユーロ/円の切り返しは月足においてサポートゾーンを鮮明化
このような見方は、ユーロ/円にも通用するだろう。先週(9月26日~)のユーロ/円の切り返しは、月足においてサポートゾーンを鮮明化させた。
それは2018年高値と合致していただけに、8月からの切り返しを継承していることを示唆しただけではなく、新たな変動レンジ入りを暗示していると思われ、これから上値余地を拡大していくだろう。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
もちろん、米利上げ加速といった観測の高まりでユーロ/米ドルの安値再更新があれば、こういった構造が崩れる可能性もある。
しかし、ユーロ/円はクロス円の代表格として相場全体の内部構造を示唆する存在になりやすいから、大局観から得られた感触は、米ドル全体の見通しにも役に立つことが多い。
したがって、前述のユーロ/円の内部構造から考えて、米利上げ加速の観測が再燃したものの、米ドル全面高の一段進行につながるとは限らない、という可能性がむしろ増大したのではないかと思う。
言ってみれば、米ドル全面高の一服があるからこそ、クロス円にとって「好都合」である。そして、日銀の介入があれば、主要クロス円においてむしろ押し目買いの好機であることも、また「都合のよい」話である。
このあたりの解釈やフォローは、また市況に合わせて再度行いたい。市況はいかに。
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