雇用統計ではマーケットは往って来いの展開となった。まずはデータの内容が予想よりも良かった事である。なかでも平均時給がプラス0.6%となって、賃金インフレがおさまっていないことを想起させた。米ドル金利は急上昇し、それがドル高を誘発。ドル円もユーロドルも150ポイント以上もドル高が進んだ。スピードも急だったので、これまでの利上げペースの鈍化に対する楽観視の行きすぎの調整もあったようである。
しかし雇用環境がタイトになっているのはサービス業に偏っているとみられ、それが利上げペースの鈍化にはまだ正当性があると見なされた。米国株の反発を契機に米ドル金利は再び低下に向い、元の水準まで戻った。ドル相場も雇用統計後に上げていたゲイン分はすべて吐き出した。
1回の雇用統計だけでFRBのビューが変わるとは考えられないが、賃金部分の上昇率には要警戒である。日本のように賃金が上がっていない分にはインフレの悪循環には陥るリスクは少ないが、アメリカをはじめとする世界各国では賃金の上昇が物価高を助長している側面もある。
つまり利上げペースの鈍化とともに遅行してインフレ再燃となる可能性がでてきたわけだ。それがわかっているならば、次回のFOMCでも75ベーシスの利上げでも本来は構わないはずなのだが。
今週はオーストラリアやカナダの金利会合がある。アメリカの金融政策の進め方と直接の関係はないのだが、利上げペースの鈍化の地ならしになるかもしれないのである。すでにペースを落としてきているのだが、今回も50ベーシスとなると、FOMCでの利上げ幅縮小もかなりの現実味を帯びてくる。
日本時間 15時20分
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)