相場はすでに米利下げの可能性を織り込んでいる
2月のFOMC(米連邦公開市場委員会)に近づくにつれ、米利上げサイクルのピークアウトを市場関係者が強く意識しはじめた。
今回のFOMCにて利上げ停止が論議されるのでは、といった観測は、もはや「常識」になりつつあり、いつものように相場は先へ先へと走る習性があるから、実に年後半の利下げの可能性を織り込んでいるところだと思われる。
なにしろ、利上げ停止がFRB(米連邦準備制度理事会)から宣言されていないうちから、米長期金利は、大分低下してきた。
米10年物国債利回りは、2023年年明けから一時3.321%まで低下、市場参観者たちの思惑を反映していたと思われる。
(出所:TradingView)
この意味合いにおいて、現実より大分先へ走ってきたからこそ、来週(1月30日~)のFOMCの無風通過が想定されるなか、米ドル全体が一段売られるのではなく、むしろ買われやすいのではないかと推測される。
なにしろ、米利上げ停止やこれからの利下げ可能性が「ウワサ」のうちに、米ドル全体が大分売られてきたから、「事実」になる確率が高ければ高いほど、今度は一転してむしろ買い戻されやすいと思われる。
ドルインデックスの日足チャートでは、そろそろ底打ちの時期に差し掛かっているように見える
ドルインデックスを見ればわかるように、日足において大きな「下落ウェッジ」を形成してきた上、そろそろ底打ちの時期に差し掛かっている。
同下落波を決定させ、また加速させたのは昨年(2022年)11月10日(木)の大陰線(下記チャートの矢印部分)であったが、同日に米逆CPIショックがあったことが記憶に新しい。
(出所:TradingView)
言ってみれば、米ドル全体における本格的な反落は、昨年(2022年)11月10日(木)から始まって、目先まで続いてきた。
その間、いろんな材料や経済指標があったが、総じて米ドル売り一色で、米長期金利の低下と相まって、米利上げ終焉がトレードテーマ(アイディア)として随分利用されてきたから、実際に米利上げ停止になれば、同テーマの賞味期限も切れる。
トレンドに沿った形で解釈するなら、米ドルのショート筋は随分利益を計上してきたから、そろそろ利益確定に動くと推測され、米ドルのロング筋はさんざん損切りさせられ、手持ちポジションも大分削られたと推測される。
この局面において、米ドルの下げ止まりがあれば、これからの反騰を暗示するサインと読み取りやすく、実際、「下落ウェッジ」というフォーメーションの解釈もそのような理屈で展開されるから、目先、米ドルの下落自体も終盤に差し掛かっていると思う。
米ドル/円チャートでも目先米ドルの下値が限定されているように見受けられる
米ドル/円の構造も基本的に一緒だと思う。昨年(2022年)11月10日(木)の逆CPIショックがもたらした急落(下記チャートの矢印部分)が、その後の反落波の形成に強く影響を与え、2023年年初来の安値更新につながった。
(出所:TradingView)
しかし、前述のように、利上げサイクルの終焉というトレードテーマがさんざん利用されてきた分、すでに賞味期限が切れているか、これから切れることになるから、少なくとも目先では米ドルの下値(すなわち円の上値)が限定される。
まったく市場の原理を知らない素人は、恐らく逆の判断を下すだろう。米利上げが終盤だから米ドルを売ってみたいといった具合だ。素人の発想と逆の方向に行きやすいことも相場習性の1つなので、「相場は理外の理」と心得るべきだ。
昨年(2022年)11月10日(木)の逆CPIショックから、米ドル全面安の進行において、円は確かに昨年(2022年)12月20日(火)の「日銀緩和修正ショック」で上昇率をさらに拡大されてきたが、ユーロなど主要外貨に比べ、特別な存在でもなかった。
言ってみれば、円は米ドル安の受け皿として大きな役割を果たし、円独歩高の状況はまったくなかったから、日銀政策に関する思惑がこれからも続くと思われるが、円の上昇余地を過大評価すべできはない。
米ドルの対極として存在するユーロ、また英ポンドや豪ドルなど外貨のパーフォーマンスに照らして考えると、米ドル安はむしろバランスよく進行してきたと言える。
換言すれば、円サイドの材料(日銀政策思惑)自体、トレードテーマとして鮮明であるが、諸外貨を凌ぐ存在ではないから、むしろ単純に米ドル安の一環として捉えるべきかと思う。ゆえに、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における円の独歩高もあり得ない。
主要クロス円は底打ちのサインを鮮明化
この視点をさらに発揮してクロス円の状況を点検すると、豪ドル/円をはじめ、主要クロス円の多くはむしろ底打ちのサインを鮮明化させているから、主要クロス円における円の反落がこれから見られる公算が大きいとみる。
豪ドル/円の日足を見ればわかるように、現在の値動きは1月18日(水)高値(下記チャートの2)の上に定着している。1月18日(水)は日銀会合があって、政策維持となり一時急騰したものの、その後、一転して大きく反落。典型的な「スパイクハイ」のサインを点灯した。
(出所:TradingView)
本来は2022年年12月13日(火)のローソク足と同様、メインレジスタンスライン(右下がり)のブレイクが「ダマシ」だったことを示唆。その後、安値更新をもたらす存在であった。
しかし、その後、安値更新せず、切り返してからまた高値更新を果たしたから、前述の1月18日(水)のローソク足がもたらした弱気サイン自体が「ダマシ」となって、一転して強気変動の可能性を強化した。
その上、2022年12月20日(火)の高値(日銀緩和修正ショック時)を上放れしたことになり、大きな「インサイド」の点灯や上放れを果たしたから、上値志向を一段と強めたと言える。
さらに、総合的な判断としてもう1つ重要な視点がある。総合的な判断ポイントとして重要、また奥深いから、ほかのクロス円の説明とともに、次回にて詳説したい。市況はいかに。
14:00執筆
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