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植田日銀のキーマン!内田副総裁の講演が印象的だった点とは?
内田副総裁は植田日銀におけるキーマンです。副総裁は長く日本銀行の主流派を歩み、2013年1月22日に発表された「政府・日本銀行の共同声明」や「バズーカ1」「バズーカ2」「YCC(イールドカーブ・コントロール)」といった主要政策の裏で活躍されてきました。
副総裁による5月27日(月)講演は印象的なものでした。いつも冷静沈着なイメージのある副総裁が「今回こそはこれまでと違う(This time is different)」という強い言葉で講演を締めくくっていたからです。
講演の冒頭、
「大きな論点は、現在の物価を巡る動向の変化が、不可逆的なデフレからの構造変化を意味するのか、あるいは、単に世界的なインフレによってもたらされた一時的な現象にすぎないのか」
と問うています。そして副総裁の出した結論は、
「1点目(不可逆的なデフレからの構造変化を意味するのか)については、自信を持って『イエス』と答えられます。労働市場の環境が構造的かつ不可逆的に変わったためです。この先、女性やシニア層から多くの追加的な労働投入を期待することには無理があります」
「2点目の、デフレ的なノルムの克服については、答えはそこまで明白ではありません。世界的なインフレがもたらしたコスト・プッシュ圧力が減衰しても、企業は現在の価格設定行動を続けるでしょうか?その鍵は、やはり労働市場です。労働市場の構造変化が持続する限り、企業は、働く従業員を保持し、惹きつけるために、充分な利益と賃金を生み出すビジネス・モデルを 構築しなければなりません」
現在のインフレがデフレからの不可逆的な構造変化と結論されたのには驚きました。しかし、その理由が金融緩和の結果としてもたらされたのではなく、「労働市場の環境が構造的かつ不可逆的に変わったため」とされています。
これには、がっかりです。
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岸田首相が植田総裁を呼んだのは叱責ではなかった?
いずれ人口減で働き手がいなくなり、労働市場がタイトになることは自明でした。ならば、これまで行った超金融緩和に意味があったのか、という疑問がわきます。限界に近い緩和政策などせず、単に待っていれば良かったのではないかと思います。
その他に、内田副総裁の講演はさまざまな疑問があるのですが、「This time is different」という言葉で終わっているのですから、次は当然、日本の利上げがいつ来るのかにかかっているでしょう。
しかし、内田副総裁が2月8日(木)奈良で行った講演では、日本のインフレ期待は諸外国と違い2%でアンカーされていないので、引き締めは極めて緩慢に、ゆっくりと行うことになると言ったばかりです。
ではなぜ「引き締めスピードが速くなるかもしれない」と想起させるような講演を内田副総裁は行ったのでしょうか?
そのポイントとなったのは、植田総裁と岸田首相の会談にあったように思えます。週刊誌報道によると、4月26日(金)の日銀金融政策決定会合後の植田総裁発言で円安が加速したことを、岸田首相は問題視、叱責するために植田さんを首相官邸に呼んだということになっています。
しかし、その程度のことで、わざわざ首相が中銀総裁を呼ぶでしょうか。
本格的に円安を修正するため、金融政策を引き締め方向にシフトするように要請したのではないでしょうか。
(出所:TradingView)
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6月前半は重要経済指標の発表やイベントが目白押し
7月7日(日)には東京都知事選挙もあります。先日の衆院補選で、自民は全敗でした。裏金パーティー券問題もありますが、人々の不満はおそらく「インフレ」に対してでしょう。インフレ対策のため、選挙前の秘策として円高誘導を目論んでいるのかもしれません。
従来の予想では、7月最終日に行われる日銀金融政策決定会合で利上げというのが、最短の利上げでした。しかし、それでは都知事選に間に合いません。6月14日(日)に電撃的に政策変更を行う可能性は低くないと思います。
6月前半は重要経済指標の発表やイベントがたくさんあります。言うまでもなく、6月7日(金)には米雇用統計がありますし、12日(水)には米CPI(消費者物価指数)とFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。
それだけでもお腹いっぱいですが、6月14日(金)の日銀金融政策決定会合において、予想外に利上げを決めたとしたら、驚きで円高方向に少しはシフトするのではないかと思います。
(出所:TradingView)
また、実際に政策変更を行わなくても、6月14日(金)に向けて円高方向への仕掛けがあったとしても驚きません。
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