■米ドルは「ダイバージェンス」の状況となっている
IMM通貨先物における米ドルのポジション動向を見ると、引き続き、米ドルの売り越しは先週時点でも高い水準を示しており、市場関係者の多くがさらなる米ドル安に賭けている様子がうかがえる。
しかし、米ドルが急落してきたとはいえ、2008年につけた安値まではなお距離があるのに対して、売り越しの水準は、2008年に安値をつける前のレベルをすでに超えていた。
つまり、「ダイバージェンス」の状況を露呈している。
これは、多くの市場関係者の予想どおりに米ドル安が進まなければ、マーケットに多くのショート・ポジション(売り持ち)が積み上げられているため、その反動は大きいということである。
レベル的には、ユーロや豪ドルで対米ドルのロング・ポジション(買い持ち)が増えており、要注意だ。
■日本の格付け引き下げは、短期的には材料視されない
さて、格付け機関のS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が4月27日(水)に、日本のソブリン(国家に対する信用)見通しを格下げしたが、目先、その影響は限定されるだろう。
今回の震災と原発事故の深刻さは世界中に知れわたっており、やはり市場関係者の予想の範囲内であるため、すぐには円売りの材料とならないだろう。
本格的な円安局面となるには、なお時間が必要だ(「『円キャリー』再来との見方は正しいのか?最近の円下落が『悪い円安』であるリスクも」を参照)。
もっとも、ユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルの連日の高値更新に対して、円の反騰は限定的である。
ゆえに、ユーロ/円、豪ドル/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場が強くても、4月の高値を更新できていない。
また、最近の米ドル安は対ユーロや対豪ドルで顕著になっているが、その反動があれば、ユーロ/円や豪ドル/円にも波及してくる可能性はある。
この点を考慮すれば、S&Pの見通し変更があっても、短期的には市場に無視され、円売りの材料とはならないだろう。
■円高のピークはすでに過ぎ去った
テクニカルの視点でこの問題を解釈するならば、最近の米ドル/円とドルインデックスとの相関関係を見るべきだろう。
言い換えれば、米ドル安のトレンドが強いから、円サイドの材料が無視されがちなのだ。
この意味では、ドルインデックスの反騰なしでは、米ドル/円の本格的なリバウンドは難しいとも言えるだろう。
下に示した「ドルインデックスと米ドルの比較図」をご覧いただければ、最近の両指数の相関性の高さを、より鮮明に読み取っていただけると思う。
(出所:米国FXCM)
本格的な「円安トレンド」となるには時期尚早だが、さらなる「円高トレンド」への逆戻りでもない。この意味では、クロス円も含めて、円高のピークはすでに過ぎ去ったという判断をなお堅持しておきたい(「東日本大震災と為替の動きを読み解く。円高のピークは過ぎたというシナリオも…」を参照)。
当然のように、ドルインデックスがこのまま市場最安値を更新していくのであれば、このような見方は修正する必要が出てくるだろう。
だが、現時点では、あくまでサプライズシナリオとして対応したい。
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