■注目されたバーナンキ議長の会見だったが「ニュースなし」
「ニュースなしとは、グッドニュースだ」。
これはウォール街の格言であるが、現地時間4月27日(水)に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)と、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の記者会見は、ドル安派にとって、まさに格言どおりの内容となった。
ひと言でいえば、事前予想どおりの展開だっただけに、米ドルはさらに売られた。現執筆時点、ドルインデックスは節目の73.00に迫る水準まで下落している。
FRBは計画どおりに「QE2(追加的量的緩和政策)」を6月に終了させ、その後もしばらく低金利政策を維持する方針だ。
バーナンキ議長は量的緩和策の効果を「自画自賛」するほど肯定し、インフレをさほど問題視せず、景気見通しに慎重な姿勢を堅持した。
議長の記者会見は「筋金入り」のハト派ともいえる内容だったが、「ヘリコプター・ベン」のニックネームがあるバーナンキ議長であるだけに、発言自体を「ニュースなし」ととらえる市場関係者は多かっただろう。
つまり、「米国株買い」「米ドル売り」を行う投資家に、安心感を与える内容だ。
■米ドル安が一服して、「織り込み済み」による反動がありそう
ところで、会見におけるバーナンキ議長の発言がほぼマーケットのコンセンサスに沿ったものだっただけに、「米ドル安トレンド」がさらに続くかどうかは興味深いところだ。
テクニカルの視点では、最近の米ドル安はオーバーシュートである。したがって、FOMCとバーナンキ議長の会見というイベントを通過して、「材料出尽くし」で米ドルがいったん反発してもおかしくはない。
言い換えれば、「ニュースなし」となったからこそ、米ドル安が一服してくるのではないかと思っている。
「ウワサで売り、事実で買い戻す」とまではならなくても、「織り込み済み」による反動はありそうだ。
実際、米ドルは先週からオーバーシュートを深めており、足元では、その動きが一段と進んでいる。
しかし、前述のように、テクニカルの視点から単純にみれば、そろそろ米ドル安が一服してくる時期に入ってくるだろう。
■米ドル安はオーバーシュートの様相を深めている
わかりやすく説明するため、先週21日(木)に会員向けに書いたレポートの一部を引用させていただく。
下記のドルインデックスの日足チャートと併せて、ご覧いただきたい。
(出所:米国FXCM)
本日(21日)ドルインデックスは2009年11月安値(74.17)を下回り、急落しているが、オーバーシュートの様子を深め、近々下落一服し、反発してもおかしくないと見る。
根拠は以下のとおりである。
1、昨年12月安値と今年1月高値から引かれた「下落ウェッジ」の下限を打診(トライ)しているが、フォーメーションの指示どおりなら、反騰する機運が高まる。
2、オシレーター系指標は半年以上に「強気ダイバージェンス」を構築し、19日からの急落をもってクライマックスを示唆。
3、2009年11月安値を中心に、サイクル論における「相擬性」が強まる。2008年12月安値から2009年11月安値までの期間を、そのまま2009年11月安値から推移すると、2010年11月の安値を計算できたように、2008年7月安値から2009年11月安値まで要する期間から計算すれば、足元では安値のピークをつけやすい時間帯にある。
4、ただし、2009年11月の安値を下回った事態を過小評価すべきではなく、リバウンドがあっても従来のように力強い反騰ではなく、オーバーシュートの状態を3カ月~4カ月の期間をもって解消した後、また安値をつけていく可能性もある。この辺の分析は今後の課題となる。
以上、4月21日(木)時点での判断だったが、足元の状況に照らしても、1番目の「下落ウェッジ」というフォーメーションを再描写する必要がある以外、大きな修正はないと思う。
特に、3番で提起したサイクル論に基づくアプローチでは、足元で米ドル安のトレンドが加速しているように見えるものの、そろそろ、いったん底打ちとなる時間帯に入っていると思う。
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