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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

「円キャリー」再来との見方は正しいのか?
最近の円下落が「悪い円安」であるリスクも

2011年04月04日(月)16:25公開 (2011年04月04日(月)16:25更新)
陳満咲杜

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利上げレースにおいて、円は出遅れた

 為替市場では、最近は円安傾向が鮮明になっている。米ドル/円が200日移動平均線を越えるのは、昨年6月以来の出来事である。

 また、ユーロ/円は昨年3月以来、英ポンド/円は昨年8月以来の高値をそれぞれ更新しており、豪ドル/円は昨年高値まで迫った。

世界の通貨 vs 円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 日足

 この円安の蓋然性について、前回のコラムでは長期スパンの視点でお話しした「危機で露呈した日本のカントリーリスク。果たして、円高傾向は続くのか?」を参照)

 だが、先週の急激な円安の進行は、明らかに短期スパンの要素によるものだと思う。

 それは他ならぬ、利上げレースにおいての円の出遅れであろう。

マーケットの関心は利上げの有無とそのタイミングへ

 この点については、ユーロが堅調に推移していることが好例である。

 財政状況が問題視される国々について、たび重なるソブリン(国家の信用)格下げや国債利回りの上昇(国債価格の下落)があったにも関わらず、ユーロは底堅く推移している。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 これは、利上げ観測がユーロを押し上げているとみるほかあるまい。

 ゆえに、足元のマーケットの関心は利上げの有無とそのタイミングに集中しているといっても過言ではない。

 同じように、最近発表される経済指標の結果が芳しくないとはいえ、英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)も利上げせざるを得ないといった観測が、英ポンドを支えている

 豪ドルや加ドルなどの資源国通貨は、金価格の上昇、原油高を背景にした堅調さに加えて、さらなる利上げもあり得るという観測さえある。

 リスク回避型の金のロング(買い持ち)筋が、同時に、リスク選好度の高い豪ドルを買ってもおかしくはないといったムードも作り出されている。

 また、米ドルについても、同じような観測がにわかに台頭してきている。

 米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)幹部のタカ派発言が相次ぐ中、4月1日(金)に発表された3月分の雇用統計が改善されたため、QE2(追加的量的緩和)終了後の早期利上げというシナリオを市場関係者が描き始めているようだ。

 一部では、QE2自体の早期終了もあり得るといった過激な予想もあるそうだ。

目先は「米ドル買い」よりも「ユーロ買い」のほうが安心

 ところで、4月1日(金)の為替相場では、米国雇用統計が改善したにも関わらず、それが米ドルにもたらした「サポート」の効果はかなり限定されていた。

 円以外のその他の通貨に対して、米ドルは全上昇幅をほぼ帳消しとする動きになっていた。これは米ドル全体が対円を除いて、依然として弱いままだということを改めて市場関係者に印象づけた

米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 言うまでもなく、米ドルの弱さを決定づけているのは量的緩和策の継続だが、より重要なのは利上げ見通しの不透明さとその時期に関する予測である。

 言い換えれば、確実視されているユーロの利上げと比べて、そもそも利上げの有無さえはっきりしない米ドルの利上げ時期を予測することは、至難の業だということだ。

 したがって、目先は「ユーロ買い」のほうが安心なのである。

今後、円はホットマネーのリスク回避先となりにくい!?

 これと同じロジックで、円安の理由を推測できる。

 今回の震災によって、日銀は市場に多大な流動性を提供している。日銀に利上げ観測があるわけではなく、米ドルよりもさらに利上げレースで遅れをとっているため、円売りが進んでいるというのは納得できる。

米ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

 ファンダメンタルズでは、福島の原発事故は最悪の状況を回避できるかもしれないが、放射能汚染が拡大している点は看過できない。

 これまでもこのコラムで指摘してきたように、円は「翻弄される通貨」である一方、一貫して円高傾向が続いてきたのは、日本への信頼があったからこそだ「危機で露呈した日本のカントリーリスク。果たして、円高傾向は続くのか?」など参照)

 その信頼が今回の原発事故で大きく毀損された。ネガティブ・ポイントになりかねない円は、これまでのように、ホットマネーのリスク回避先として選ばれる可能性は小さいと思われる。

 その上、原発事故の処理が長期化すれば、日本経済と財務再建に多大な打撃を与えるリスクも浮上してくる。これは、円を持つリスクを投資家に一層真剣に考えさせることだろう。

■「良い円安」と「悪い円安」をどのように見極めればよい?

 さて、ここに来て「円キャリートレード」が再来しているといった見方が増えてきている

 だが、円が下落しているという結果は同じなのだが、その本質は違っている。

 かつての「円キャリートレード」は、単に低金利の円を調達して高金利通貨に転換し、その金利差を享受していた、いわば「良い円安」であった。

 それに対して、円のリスクを嫌悪した円売りは「悪い円安」であろう。見た目が同じ「円キャリートレード」に見えるとしても…

 それでは、「良い円安」と「悪い円安」をどのように見極めればよいのか?

 筆者は、日本国債のマーケット動向に注目すべきだと思う。

 これまでのように、円安が進行しても国債価格が安定していれば「良い円安」とみて問題ないが、日本国債の価格下落(利回り上昇)を伴った円安進行があるなら、「悪い円安」の可能性を疑うべきだ

今こそ、日本は思い切った真の改革を行える好機!

 1990年にバブルが崩壊して以降、日本は真の構造改革を怠ってきたと言われている。

 小手先の対応しかせず、さまざまな問題を先送りしてきた永田町と既得権益の保全に明け暮れる霞が関の体質をチェンジできない限り、すでに火の車となっている財政は今回の震災でさらに悪化し、近いうちに財政破たんの可能性もクローズアップされるだろう。

 (ちなみに、今回の原発事故も、電力業界と監督官庁の馴れ合いが背景の1つだと指摘されている…)

円安を伴った国債下落があれば、それは「日本売り」を意味するものと警戒すべきであろう。

 もっとも、「多難興邦」という中国の格言がある。国は災難の試練でより強くなるというものだ。

 この点で言えば、財政赤字を含めて、諸問題の先送りを絶ち、今こそ思い切った真の改革を行える好機とも言える。

 政治主導の構造改革といった言い方は今では「死語」となりつつあるが、本当に必要とされるのは、既存の仕組みの再生ではなく、新たな仕組みの創出である。

 だからこそ、「危」を「機」としてとらえなければならない

 円高の終えんが「宿命」であれば、「良い円安」になるよう願わずにはいられない。

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