■利上げレースにおいて、円は出遅れた
為替市場では、最近は円安傾向が鮮明になっている。米ドル/円が200日移動平均線を越えるのは、昨年6月以来の出来事である。
また、ユーロ/円は昨年3月以来、英ポンド/円は昨年8月以来の高値をそれぞれ更新しており、豪ドル/円は昨年高値まで迫った。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 日足)
この円安の蓋然性について、前回のコラムでは長期スパンの視点でお話しした(「危機で露呈した日本のカントリーリスク。果たして、円高傾向は続くのか?」を参照)。
だが、先週の急激な円安の進行は、明らかに短期スパンの要素によるものだと思う。
それは他ならぬ、利上げレースにおいての円の出遅れであろう。
■マーケットの関心は利上げの有無とそのタイミングへ
この点については、ユーロが堅調に推移していることが好例である。
財政状況が問題視される国々について、たび重なるソブリン(国家の信用)格下げや国債利回りの上昇(国債価格の下落)があったにも関わらず、ユーロは底堅く推移している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
これは、利上げ観測がユーロを押し上げているとみるほかあるまい。
ゆえに、足元のマーケットの関心は利上げの有無とそのタイミングに集中しているといっても過言ではない。
同じように、最近発表される経済指標の結果が芳しくないとはいえ、英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)も利上げせざるを得ないといった観測が、英ポンドを支えている。
豪ドルや加ドルなどの資源国通貨は、金価格の上昇、原油高を背景にした堅調さに加えて、さらなる利上げもあり得るという観測さえある。
リスク回避型の金のロング(買い持ち)筋が、同時に、リスク選好度の高い豪ドルを買ってもおかしくはないといったムードも作り出されている。
また、米ドルについても、同じような観測がにわかに台頭してきている。
米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)幹部のタカ派発言が相次ぐ中、4月1日(金)に発表された3月分の雇用統計が改善されたため、QE2(追加的量的緩和)終了後の早期利上げというシナリオを市場関係者が描き始めているようだ。
一部では、QE2自体の早期終了もあり得るといった過激な予想もあるそうだ。
■目先は「米ドル買い」よりも「ユーロ買い」のほうが安心
ところで、4月1日(金)の為替相場では、米国雇用統計が改善したにも関わらず、それが米ドルにもたらした「サポート」の効果はかなり限定されていた。
円以外のその他の通貨に対して、米ドルは全上昇幅をほぼ帳消しとする動きになっていた。これは米ドル全体が対円を除いて、依然として弱いままだということを改めて市場関係者に印象づけた。
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言うまでもなく、米ドルの弱さを決定づけているのは量的緩和策の継続だが、より重要なのは…
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