■米ドル安がいったんスピード調整に入ったワケは?
米ドルの全面安が続いているが、いったんスピード調整に入ったもようだ。
ドルインデックスは73.50レベルで安値をつけてから反発しており、ユーロ/米ドルは1.4700ドルのブレイクに失敗し、米ドル/円は再び節目の80.00円を回復してきた。
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ドルインデックスをテクニカルの視点から見れば、5月4日(水)安値から5月23日(月)高値までの上昇幅に対する78.6%押しのレベルで下げ止まっているため、特にサプライズはない。
(出所:米国FXCM)
だが、ファンダメンタルズの面から見れば、次の2点は見逃すことができない。
1点目は、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が6月7日(火)に行った講演で、米国の経済成長に懸念を示したものの、「QE3(量的緩和策第3弾)」について何ら示唆しなかったことで、マーケットのコンセンサスとして「QE3」への期待が大きく後退したことだ。
そして2点目は、6月9日(木)に行われた会見で、ECB(欧州中央銀行)のトリシェ総裁が7月の利上げ実施を示唆したにもかかわらず、ユーロが買われるどころか、むしろ逆に売り込まれたことである。
■「米ドル安」は一本調子には行かない
前者に関しては、「QE3」を期待していた一部の投機筋が肩透かしを食らったことで、ショート(売り持ち)にしていた米ドルのポジションを買い戻したためと見られる。
また、後者に関しては、やはり「ユーロ高」の土台がもろいことを改めて印象づけた格好となった。
言い換えれば、ユーロに関しては、早期利上げだけでは物足りず、継続的な利上げが行われなければ高値を追いたくないという市場心理が透けて見える。
ギリシャ問題を先送りできたとはいえ、「ユーロ高」の基盤が決して盤石ではないことが浮き彫りとなっている。
また、想定できる範囲の金利差はすでに織り込まれ、「米ドル安」が一本調子に行かないことを示唆していると思う。
もっとも、先週のコラムで挙げた米ドルの「四面楚歌」のうち、「QE3」は最大の「殺傷力」を持っているが、この政策が実行される可能性が遠のいたのだから、「米ドル安」が一服するのは当然の成り行きであろう(「FRBは麻薬の誘惑から抜け出せなくなる。『QE3』に踏み切る可能性は小さくない!」を参照)。
また、米国債の債務上限引き上げに関する思惑も米ドルのアタマを抑えていたが、米国内では「政治的な駆け引き」と割り切る専門家も多く、デフォルト(債務不履行)の可能性は高くないといった見方が足元で強まっている。
ゆえに、米ドルのショートポジション(売り持ち)の買い戻しを急ぐ投機筋の動きも納得できる。
■FRBはウォール街の利益を守るのが任務!?
ところで、「QE3」が実行される可能性が完全になくなったかと言えば、現時点では、必ずしもそうとは言い切れないと思っている。
その最大の原因は、FRBという組織の本質を見極めなければわからないだろう。
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