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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

QE3は実施されないとみる4つの理由。
だから、米ドルは底打ち、反発する

2011年08月19日(金)18:52公開 (2011年08月19日(金)18:52更新)
陳満咲杜

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■株安と連動した米ドル高があってもおかしくないのだが…

 昨日、欧米株は再び急落してきた。欧州系銀行の資金不足懸念に加え、欧米経済指標の悪い結果がリスクオフの動きをもたらし、米ドル安に歯止めをかけるとともに、金の史上最高値の再更新を促した。

 ただ、言うまでもないが、ドルの総合力を表すドルインデックスについては、従来あったような「有事のドル買い」にはほど遠い状態だ。米「格下げショック」以降、世界金融市場が不安定になり、世界的景気後退がすぐに始まるのではないかといった懸念が、悲観的な市場センチメントを醸し出しているのにである。

 ちなみに、米有力投資銀行のモルガンスタンレーとゴールドマン・サックスは揃って経済成長見通しを下方修正し、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)の調査によると、米富裕層は今後の経済展望に総じて悲観的な見方を示している。

 だから、このような市場センチメント悪化が本来、株安と連動した形でもっと米ドルを押し上げてもおかしくない。

 しかし、ドルインデックスは8月17日(水)に73.45まで安値を再トライしたばかり。8月18日(木)はリスクオフの動きで買われたが、本稿執筆時点では74.25前後までの小幅な切り返しに留まっている。 

ドルインデックス 8時間足

(出所:米国FXCM)

 それに伴い、ユーロ/米ドルは8月17日(水)に再び1.45ドルの大台を一時回復し、英ポンド/米ドルは8月18日(木)まで5日間続伸、5月3日(火)以来の高値を記録している。 

ユーロ/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足

ソブリンリスク(国家に対する信用リスク)を抱えるEUや大騒乱があった英国の事情を考えると、米ドルのパフォーマンスがいかに芳しくないかが浮き彫りとなっている。

 そして、リスク回避先としてのスイスフランはスイス当局の警告を受け、高値圏で足踏みしているものの、かつての上昇モメンタムを見せていない。

唯一「敢闘」しているのが円であり、日銀の再介入のリスクがあるにもかかわらず、円は歴史的な高値ギリギリの水準まで迫っている。 

米ドル/スイスフラン 週足
米ドル/円 週足

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■米ドル高になっていない原因は何か?

 リスク回避で米ドルと円が買われるといった論調がマスコミに溢れているが、本当のところはやや異なる部分があると思う。

 米ドルに関しては、前記のように、米ドル全体はかろうじて底割れを回避した程度で、「買われている」と言えるほど強くはない。

 また、円買いに関しては、日本資金の還流と海外筋の円債物色が大きな背景として浮上しており、必ずしもリスク回避型の円買いが起こっているとは限らない。

先週のコラムで、筆者は「株安、米ドル高、債券高の流れが続く」という見方を述べていたが、足元では株安、債券高が確認されたものの、米ドル高の流れは起きていない「来年は中国絡みでさらなる危機が! 株安、米ドル高、債券高の流れは続く」参照)

 ここで、その原因を考えてみたいと思う。

 もっとも、前記の見方の基本ロジックはいわゆる「悪い米ドル高」にあった。つまり、景気後退懸念で金融相場が混乱することによって相場変動率が拡大、市場流動性が枯渇することで、結局米ドルの需要が増大し、これが米ドル買いにつながるといった発想である。

 当然、このようなロジックにはリスク回避型の米ドル買いニーズも含まれるが、米ドルを単純なリスク回避先ととらえるよりも、決済通貨、あるいは基軸通貨としての地位と役割が米ドルにあることがより重要である。

 この点においては、「米ドル」と「円などの米ドル以外の通貨」には雲泥の差があることを忘れてはいけない。

 となると、足元のドルインデックスの軟調は何を暗示しているのだろうか?

 大きく考えて原因は2つしかない。

■米ドルの基軸通貨としての地位が消滅する前触れなのか

 1つは米ドルが軟調なのだから、8月18日(木)の株の急落は一時的なものであり、株式市場はいずれ回復してくると考える「逆説」である。

 もう1つは米ドルが買われていないのは、米ドルの基軸通貨としての地位が消滅する前触れととらえる考え方だ。

 金融市場における見方とロジックは往々にしてスパンによって異なってくるし、場合によってはまったく異なる見方が異なるスパンで両方成立することもあり得る。

 前記の2つの原因について、筆者は一見まったく違ったアプローチになるが、両方成立するのではないかと思う。

 要するに、短期スパンでは、8月18日(木)の株式の変動は米「格下げショック」の蒸し返しに過ぎず、欧米株がこのまま一直線に下がっていくとは思わない。米ドルが買われていないのだから、株式市場の反応は景気後退のリスクを過剰に織り込んでいるのだと割り切る。

 反面、中長期スパンにおいては、やはり米ドルが基軸通貨の地位を失うのではないかといった懸念が強い。そして、米ドルが株式、債券マーケットの動きと連携せず、買われなくなっている可能性が高い。

ドルインデックス 月足

(出所:米国FXCM)

■米ドルのアキレス腱はQE3の有無にあり

 一般論としては、「逆説」となる前者の推測は論証しにくいところがあり、マーケットのセンチメントを適切にとらえているとは言いにくいが、後者に関しては、市場関係者の懸念がかつてないほど強烈になっているから、市場センチメントとして容易に感じ取れるだろう。

 もし、米ドルの“基軸通貨地位消滅”といった懸念と危惧が正論であれば、米ソブリン格下げがもたらしたショックが大きいことはもちろんだが、米QE3(追加量的緩和策第3弾)に対する疑心暗鬼も重要な要素となるだろう。

 要するに、度重なる量的緩和で米ドルの信用は著しく傷つけられている。これからさらに3回目の量的緩和があれば、米国は自ら基軸通貨の地位を放棄していると多くの市場関係の目に映ることだろう。基軸通貨でなくなるのなら、いくら金融危機でも米ドルが買われなくなる可能性がある。

 なにしろ、信用力をなくした通貨は決済手段として選択されなくなるから、流動性の低下によってその通貨に対するニーズが高まるようなことも起こらない。従って、当面、米ドルのアキレス腱はQE3の有無にあると言って過言ではなかろう。

■QE3は実施されるか? されないか?

 筆者としては、仮にFRB(米連邦準備制度理事会)がQE3を実施しても、必ずしも米ドルの基軸通貨の消滅につながるとは思えないのだが、ここで、まずはQE3の有無について考えておきたい。

 今日、米国が日本の二の舞となりつつあり、「失われる10年」を迎えようとしているから、FRBはそれを阻止するため、何でもやるといった記事が多くのマスコミの紙面を賑わせているが(※)、FRBがQE3を実施するハードルが高まっていることも見逃せない。

 その根拠として、まず第1にFRB内部の反対だ。

 8月9日(火)のFOMC(連邦公開市場委員会)では、2013年まで実質ゼロ金利に据え置くといった合意が得られたものの、計3名の理事が反対票を投じている。これは1992年以来のFOMCでもっとも反対票の多い議決となった。

 どうやら、バーナンキFRB議長もオバマ大統領と同様、そのリーダーシップに陰りが見えるようだ。

第2にインフレである。米7月PPI(生産者物価指数)のコア指数は7ヵ月ぶりの高水準を示した。インフレ傾向が鮮明になってくれば、量的緩和をさらに実施できないことは明らかだ。

第3に政治家からの圧力だ。FRBは独立した機関であるものの、最近ではかつてないほど政治家から圧力を受けている。

 たとえば、大統領選の次期後補である共和党のベリー・テキサス州知事はバーナンキ氏を名指しして、QE3があれば米国への「背信行為」と激しく非難している。これはまさに象徴的な出来事だ。多くの政治家がFRB“暴走”の可能性を警戒している。

(※自慢ではないが、「米国の失われる10年」といった論点は本コラムではかなり前から指摘していた。たとえば、2010年7月2日の記事「今の下げは序の口だ! 米国は『失われる10年』を迎えるだろう」を参照)

■さすがのバーナンキでも、もうお金はばらまけない!

 そして第4に、もっとも主要な問題として、量的緩和策自体に効果がなかったことを挙げておこう。

 本来、量的緩和策の目的は、米国の資産高の波及効果によって、雇用と景気回復を図るものだが、2回の緩和策実施にもかかわらず、結局効果を上げていないことは明白である。

特に2回目の量的緩和は、株高をもたらしただけで、米国の景気浮揚にまったく貢献できていない「失敗」だと思われる。このような事情から、“ヘリコプター・ベン”ことバーナンキ氏といえども(※)、安易にお金をばらまけない公算が高いのではないかとみる。

 ゆえに、QE3実施に対する懸念が消えない限り、米ドル全体は上昇しにくいが、そのQE3は実施されない可能性が高いから、ドルインデックスは時間がかかるとしても、そろそろ底打ちし、本格的な反発をみせてくるといった従来の筆者の見方は堅持したい。

 ただし、「二番底」の意味合いでも、ドルインデックスは5月安値に近いレベルにもう1回迫る可能性がある。

(※編集部注:“ヘリコプター・ベン”とはバーナンキFRB議長のあだ名。バーナンキFRB議長はかつて「デフレ克服のためには、ヘリコプターから現金をばらまけばよい」という趣旨の発言を行ったことがあることから、こう呼ばれることがある)

ドルインデックス 日足

(出所:米国FXCM)

 また、ユーロ/米ドルは最後の上昇を見せてから切り返し、トレンドを反転させていく可能性もある。

ユーロ/米ドル 日足

(出所:米国FXCM)

 これらの可能性には注意が必要だ。

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