■「FRBショック」でマーケットの基調は米ドルの投げ売りへ
足元の為替市場では、主要通貨に対する米ドルの反落が顕著となっている。
前回のコラムでは、先週以降のユーロなど外貨の切り返しの背景を解説させていただいたが、日本時間1月26日(木)未明から、「外貨のショートカバー(買い戻し)」から「米ドルの投げ売り」へと、マーケットの基調は変化している(「仏格下げが『プロ』の絶好の利食いの場に。ギリシャ破綻があれば好材料になり得る!」を参照)。
皆さんもご存知のように、この米ドル売りを加速させたのはFOMC(米連邦公開市場委員会)後のリリースである。
まとめると、FRB(米連邦準備制度理事会)は今回、次の3つの政策をアナウンスした。
1、2014年の年末まで実質ゼロ金利を堅持
2、FRB史上初となるインフレターゲット(2%)の導入
3、経済状況しだいで「QE3(量的緩和策第3弾)」に踏み切る
このインパクトは強かった。債券王こと、米国のビル・グロス氏は「FRBの決定は事実上の『QE2.5』だ!」と表現するほどで、「FRBショック」の様相を呈している。
■最近の米ドル売りは1月16日に始まった調整の一貫
筆者は、このコラムでもずっと強調してきたが、マーケットの値動きは、一見するとファンダメンタルズによって形成されているように見えるが、「相場の真実」はむしろ逆である。値動きに追随してファンダメンタルズが好悪材料を提供し、後を追う形で値動きの蓋然性を証左する仕組みとなっている。
現時点では、米ドル売りを「FRBショック」といった材料で誰でも解釈できるが、実際のところは、米ドルに対する調整のニーズが強かったため、先に米ドルの反落が起きて、その後で、必然的に米ドル安を証左する材料が出てきたのである。
それは、ドルインデックスのチャートを見ればおわかりいただけるだろう。アタマ打ちは1月16日(月)であり、反落が一巡してきたところで「FRBショック」となった。
(出所:米国FXCM)
それでは、どのような理由でドルインデックスはアタマ打ちとなる必要があったのか? マーケットの内部構造はどのように米ドル反落の蓋然性を示唆していたのか?
後解釈と言われないように、前回のコラムと同様に、筆者が発行している会員向けレポートの第16号(週報)から引用してご説明しよう。まずはチャートの部分からだ。
「上のチャートは15日(日曜日)に作成されたものだが、いわゆる『S&Pショック』で金曜日いっぱいドルが買われていたので、なかなかドルの反落を予測できる局面ではなかった。
もちろん、市場のセンチメントもドル買いに強く傾いていたが、図示のように、13~14週(68日前後)のサイクルが昨年5月からの相場を主導しており、そのサイクルの指示通りなら、ドルが強くても一旦調整してくることを示唆。
そして、その通りにドルが反落し、この反落を位置づけるために今回の『FRBショック』が出てくるわけだ」
なお、このチャートは急いで作っため、サイクルの周期表示が必ずしも正確ではない。また、現在位置しているサイクルが完成された後の予測を削除していることにご留意いただきたい。
「だから、テクニカルだけではなく、ファンダメンタルズでもこのような説明していた。『FOMCによる来年中場まで金利据え置きの見通しがその後の利上げ期待をもたらしていたが、時間軸の削除でマーケットのコンセンサスが合致しにくくなり、米QE3の可能性と相まって、ドルの上値を抑える要因となろう』 」
16日朝の時点では、筆者はFRBの決定を知る術があるわけではなかったが、このような論点を張れるのは他ならぬ、前記テクニカルの視点があるからだ。言ってみれば、為替相場におけるファンダメンタルズの予測と論議自体がほとんど意味を持たず、相場内部構造に基づいてからはじめて有意義かつ精確性をもつアナリシスとなるものだ
ここまで会員向けのレポートを開示したのは、決して自慢しているためではない。
日本時間で1月26日(木)未明から見られている米ドル売りは、あくまでも、1月16日(月)に始まった米ドルの調整の一貫である。
今さら、米ドル売りの根拠を探るのは遅すぎるし、「FRBショック」を大げさに解釈する必要もない。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)