■FOMCの決定の開示方法が変更された
この見方が正しければ、マスコミ各社で大きく取り上げられている「QE3」についても、もしかしたら、騒ぐほど実施の可能性は高くないのかもしれない。また、実施されたとしても、そのインパクトは市場のセンチメントほど強くはないといった推測もできる。
今回のFOMCでは、インフレターゲットの導入だけでなく、FOMCの決定を開示する方法も、FRB史上初のやり方で行なわれた。
これこそが肝心であり、「QE3」実施の有無やそのインパクトを解明するカギとなるだろう。
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昨年までのFOMCでは、年に4回、米国の成長率、失業率、消費者物価指数(CPI)などの指標に基づいて、現時点と向こう何年かの見通しをリリースしてきた。
加えて、今年から、短期金利の見通しを公表することとなった。マーケットとのコミュニケーションを図ることを目的としており、政策の透明化を狙う改革であって、大きな「戦略」の転換だ。
■より詳細な検証材料が提供されるように変更された
昨年までは、FOMC後の声明文の文言によって政策の変更が伝えられてきたが、今回からチャート方式となった。これは、FOMCに、より幅広い政策策定の余地をもたらすことだろう。
以前の声明文を公表する方法は、メンバーの合意によってその文言が決められた。一方、新たな方式ではメンバーごとの見方が反映されている。なお、金利見通しはFOMC参加者全員に対するアンケートとなっていて、投票権を持つメンバーに限定しないようにされた。
さらに、メンバーの予測を表すテンプレートも用意されており、なかなかユニークである。そのテンプレートはマークをつける方法によるドットチャートで、各ドットにはそれぞれのメンバーの異なる期間の予測が示され、2012年、2013年、2014年末、あるいは、それより長い期限が記されている。
特定のメンバー名は開示されないものの、各ドットはFOMCメンバー1名の予測を示している。ドットチャート形式のテンプレート上では、17人のメンバー全員の見通しが公表された。
これは市場に一層透明化された印象を与え、より詳細な検証材料が市場関係者へ提供されるようになったと言える。
■量的緩和策を行わずに、FRBが目標を達成できる可能性も
それでは、FRBはなぜ、より透明化された金融政策を目指し、市場とのコミュニケーションを図ろうとするのか?
マーケットの金利予測やコンセンサスに対する影響を保ちたいという狙いがあることは、容易に想像できる。
それ以上の大きな背景として、名目金利が長期間にわたって低い水準のまま置かれている状態では、市場参加者への伝達効果が大きくなることが考えられるだろう。
つまり、実質ゼロ金利が続く中では量的緩和策にも限界があると、FRB自身が悟っていて、そのために、市場参加者への「伝達効果」をより重要視し、改革に乗り出したわけだ。
つまるところ、市場とのコミュニケーションがうまく行けば、量的緩和策を行わなくても目標を達成できる可能性がある。
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ゆえに、今回のFOMCの決定を大げさに解釈すべきではないし、市場センチメントの激しい変化に翻弄されないように気をつけたいものである。このあたりについては、また次回に詳しくご説明したい。
往々にして、市場センチメントは行き過ぎになるものである。リスク要素として、十分にご注意いただきたい。
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