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JPモルガン・佐々木融さんに聞く(1)
なぜ、「弱い日本の強い円」なのか?

2012年03月03日(土)10:00公開 (2012年03月03日(土)10:00更新)
ザイFX!編集部

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■ビッグマックで購買力平価を考えてみる

 今、仮にビッグマックが米国だと4ドル、日本だと320円で売られているとしよう。為替は1ドル=80円だとする。

 そしてこの後、米国ではインフレが進み、一方、日本の物価は横ばいだったとする。その結果、何年後かにインフレが進んだ米国のビッグマックは4倍の16ドルまで値上がりしていたとしよう。日本の物価は横ばいと仮定したから、日本のビッグマックは相変わらず320円だ。

 このとき、もしも為替が1ドル=80円のままだとすると、日本の320円のビッグマックは米ドル換算で4ドルになる。一方の米国では16ドル。両者には大きな開きが生じている。

 しかし、実際にはそうはならず、これは為替相場が動いて調整されることになる。このケースだと購買力平価の理論的には1ドル=20円まで円高が進むはずである。米国の物価が4倍上がり、日本の物価は横ばいなのだから、米ドル/円レートが4分の1に下がれば釣り合うという理屈だ。

 そうすれば、日本の320円のビッグマックは米ドル換算で16ドルとなり、米国で売られているビッグマックと同じ値段になる。

 以上が購買力平価の考え方だ。

 もしも為替相場が動いて調整されなければ、日本で4ドル相当のビッグマックを米国に持っていって売れば16ドルになるので大儲けになる。

 食品のビッグマックを輸送して売るのは無理があるとしても、日米間では、さまざまなモノが貿易によって動いているので、日本が圧倒的に有利になる、そのような状況になってしまう前に、日本から米国へどんどんモノが輸出されるようになるだろう。

 その結果、そうはならずに為替相場は円高方向に動くはずなのである。

■FXの短期トレードには購買力平価は役立たない

 とはいえ、「購買力平価で為替の動きが説明できるのか、じゃあ明日から米国マクドナルドのウェブサイトでビッグマックの価格を毎日チェックして、FXのトレードに役立てるぞ!」と考えるのは無理がある。

 「購買力平価は15~20年といった長期でざっくりと成り立つものです。短期の為替相場を見通すのには役立ちません。

 実際の為替相場は大きく上下動しながら動いていくので、たとえば、米ドルが購買力平価より大幅に割安になったからといって、すぐに上昇するとは限らないのです。

為替相場はずっと上下に動き続けながらも、購買力平価の方向へ向かう調整が絶え間なく行われているようなイメージでしょうか。

 為替相場を短期的にではなく、長期的にみるときは、購買力平価がもっとも重要な考え方であるのは間違いありません。

 よく、『10年後、20年後に米ドル/円相場はどうなりますか?』という質問を受けるのですが、それはざっくり言って『日米の物価上昇率の差が今後どう推移するか次第です』ということになります。

 今と同じように、米国の物価上昇率が日本の物価上昇率より高い状態がもしも今後も続いていくとしたら、20年後には、今よりも確実に円高になっていると言えるでしょう」

 物価上昇率には消費者物価指数とか、企業物価指数などいくつかの種類がある。また、購買力平価は基準になる時期を決めて算出するのだが、その設定された基準によってその値は変わってくる。

 このように購買力平価は万能のツールでないことを注意しながら見る必要があるのだが、購買力平価で為替の大きなトレンドを把握することはできる。

■購買力平価のチャートはほぼ直線的な右肩下がり

 以下の2つのチャートは米ドルと円の購買力平価だ。いずれも購買力平価の基準は1970年1月に設定されている。上が消費者物価指数による購買力平価、下が企業物価指数による購買力平価だ。

 2つのチャートには、それぞれ実際の「米ドル/円チャート」も表示されており、さらに「購買力平価チャートと米ドル/円チャートの乖離幅の平均」も表示されている。

(出所:JPモルガン・チェース銀行)

(出所:JPモルガン・チェース銀行)

いずれの購買力平価のチャートも1970年代後半以降は、ほぼ直線的な右肩下がりになっていることがわかるだろう。

 これがすなわち、長期的にはずっと「米ドル安・円高」が続いてきた大きな背景になっているということなのだ。

 いっしょに表示されている米ドル/円の実際のチャートを見ると、長期的には右肩下がりのトレンドを描いているものの、その途中では大きく上下動している。

 このチャートを見れば、購買力平価を頼りに短期的なFXのトレードをやろうとするのは無理があることが改めてわかるだろう。しかし、長期的な為替相場を理解するには、購買力平価がやはり重要ということもよくわかる。

「JPモルガン・佐々木融さんに聞く(2) 大英帝国衰退と英ポンド下落は関係ない?」へつづく)

(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/和田佳久)

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