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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ユーロ/ドルは「grexit」ショックの逆襲に
注意! ドル/円の調整は78円台までか?

2012年05月21日(月)12:23公開 (2012年05月21日(月)12:23更新)
陳満咲杜

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マーケットは「grexit」を織り込もうとしてきた

 為替市場は激動のときを迎えている。

 先週末、ドルインデックスは一時1月高値の81.78に迫り、ユーロ/米ドルは年初来安値の更新をトライする勢いだった。また、米ドル/円は終値ベースで79.52円を下回り、円高の余地が広がった。

 世界的な株安とリンクした米ドル高、円高は「リスク回避」であり、「grexit」を強く意識した動きだ。

 この「grexit」とは、「greece」(ギリシャ)と「exit」(出る)を組み合わせた造語で、ギリシャのユーロ離脱を意味している。

 最近のギリシャ政局の混乱で、ユーロ離脱はかつてないほど現実味を帯びてきた。それだけに、「grexit」ショックの収束には時間がかかりそうだ。

 それでは、マーケットは、ギリシャのユーロ離脱をどれぐらい織り込んでいるのだろうか? 最新のCFTCの統計(5月15日現在)を見ると、何となくではあるが、感触をつかむことができる。

 米ドルのネットポジションは285.2億ドル規模に膨らみ、2008年以来の高い水準である。ユーロのネットショートポジションにいたっては、なんと17万3869枚も積み上げられ、ユーロ発足以来の最高レベルを更新していた

 このことから、マーケットは「grexit」を織り込もうとし、また、そういった予測に基づき行動してきたと言える。

 こうなれば、残る問題はひとつしかない。ギリシャが本当にユーロを離脱するか、否かである。

ギリシャのユーロ離脱は、言われるほど簡単ではない

 世界中のマスコミがこの問題を連日取り上げ、いろいろな専門家の意見が紹介されてきたが、離脱を確実視する論調が多い。

 しかし、肝心のギリシャ国民の意向は、どうやらユーロ圏にとどまりたいのが主流のようである

 フランスに関しては、新大統領が誕生したものの、EU(欧州連合)内部でも緊縮財政一辺倒の雰囲気はなく、妥協の余地を模索し始めているとの情報も聞こえてくる。

 以上、マスコミの論調どおりに展開していくか、なお定かではないことを強調しておきたい。

 いつものことではあるが、基本的に、市場センチメントはマスコミの論調によって形成される側面が大きい。今回、ユーロのショートポジションが史上最高レベルを更新したことも、ある意味では理に適うものだ。

 しかし、これもまた、いつものことであるが、市場センチメントが偏り過ぎれば過ぎるほど、反転するリスクも高くなる

 「ギリシャが近々、ユーロを離脱する」と断定する論調は多いが、離脱したギリシャはもちろん、離脱を許したEUの混乱も想定できないほど大きいものとなるだろう。

 それだけに、ギリシャのユーロ離脱は簡単にはいかないのかもしれない。

 ギリシャもEUも、耐え切れないリスクを回避する「動機」は十分にあり、リスク自体は回避できないとしても、「先送り」という選択肢が選ばれる確率が、いちばん高いと考えている。

■ギリシャ離脱が起こらなければ、ユーロの逆襲が始まる!

 実際のマーケットも、このようなことを暗示しているようだ。ユーロ/米ドルの週足チャートをご覧いただきたい。

ユーロ/米ドル 週足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

 昨年6月、今年1月と、ユーロ/米ドルは安値を2回つけている。いずれもギリシャ危機に端を発したものだが…

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