足元で進行している危機のほうがより深刻に見えるし、ポジション動向を見ても、ユーロショートの積み上げは史上最高レベルを更新している。
ところが、肝心のレートは、相応して右下がりとはなっておらず、右上がりの傾向を見せている。前述のように、ユーロは先週末、かろうじて年初来安値更新を回避したが、このことも、ひとつの手掛かりだと思う。
まとめると、「grexit」ショックでマーケットは荒れてきたが、ギリシャが本当にEUを離脱しないかぎり、マーケットの逆襲がこれから始まる可能性も大きいということになる。
今週(5月21日~)あたりから、その可能性が意識され始めるのではないだろうか?
■米ドル/円は、円高トレンドに復帰してしまうのか?
さて、次は米ドル/円である。こちらに関しては、終値ベースで79.52円を下回ったことから、従来のようなウェーブカウントは消滅してしまった(「日本のバブル崩壊後、日本円は買われた。EUが混乱するほど、ユーロは買われる!?」参照)。
では、これから円高トレンドに復帰してしまうのだろうか?
この質問の答えは、同じくチャートから見つけたい。米ドル/円の月足を見てみよう。
(出所:米国FXCM)
本コラムの2月17日号で指摘したように、米ドル/円は198ヵ月サイクルをもって、2011年10月安値で底打ちした可能性が高い(「19カ月サイクルがユーロの切り返しを示唆。性急なユーロ売りは避けたほうがいい」を参照)。
1995年に安値をつけて、それがボトムになったのと同様、サイクルの底打ちパターンとして、大型下落ウェッジの形成と上放れといった特徴も見せている。
前回の底打ちの場合、1990年4月高値から1995年4月安値まで、5年をかけて下落ウェッジのフォーメーションを形成した。
一方、今回は、2007年6月高値から2011年10月安値まで、約4年半をかけて同じフォーメーションを形成した。
両フォーメーションともに、時間をかけて形成された分、その上放れには重要な意義がある。
■米ドル/円は78円台がサポートゾーン!
テクニカルの視点では、フォーメーションの形成期間が長ければ長いほど、それを打破した後のトレンドも長く続く傾向がある。
1995年安値からの切り返しは1998年9月まで続いた。このことを考慮すると、2011年10月安値から始まった切り返しが2012年3月高値で終了したとすれば、あまりにも短い。これでは、理屈に合わないということになる。
したがって、2011年10月31日安値からのウェーブカウントを再定義する必要がある。
(出所:米国FXCM)
2011年安値を起点とした上昇ウェーブ自体は健在であるだろう。3月高値からの反落はあくまで調整波と数えたい。
目先で、2011年安値から2012年・年初来高値までの全上昇幅の61.8%押しに当たる78.86円レベルのサポートに注目しておきたい。
加えて、現執筆時点で、200日移動平均線は78.52円レベルにある。
以上から、78円台をサポートゾーンとして意識し、調整のメドを計りたい。市況は如何に!
(2012年5月21日 東京時間9:00執筆)
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