■キプロス問題は早々に収束すると予想する理由とは
余談のようだが、要するにキプロスの問題はかなり特殊である。ギリシャの10分の1ぐらいの経済規模で、かつロシア資本、移民資本に頼っているから、EUにとってキプロスの預金封鎖、あるいはEU離脱は「禁じ手」にはならない。
また、ロシア筋と言われるグレーゾーンの資金を痛めつけること自体が目的ではないとしても、キプロスを安易に救済した場合、助けられるのがグレーゾーン資本であることをEU関係者は知っている。
イタリアやスペインと違い、キプロスは切り捨てられてもよいとEU幹部らは内心で思っているかもしれない。
ゆえに、キプロスショックにマーケットはあまり動揺していないし、最後はキプロスが折れて、EUの指示どおりにやるのではないかと思う。
預金封鎖など過激な手段が出されても、それはキプロスに限定され、その悪影響はEU全域に広がらないといった楽観論さえあるから、キプロス問題の早期収束が予想される。
■米ドル全面高はいったんスピード調整の公算が高い
となると、マーケットの関心はやはり、再度日米金融政策に回帰してくる。肝心の米FRB(連邦準備制度理事会)の政策やバーナンキFRB議長のスタンスは、前回のコラムで指摘したとおり当面変調なしだから、マーケットは安心感を持っている。リスクオンムードは当面維持されるだろう。
【参考記事】
●相場が熱い!金余り相場はいつまで続く? 米株高とドル全面高の同時進行に死角あり(2013年3月15日、陳満咲杜)
一方、株高と同時進行してきた米ドル全面高は、仮にトレンドを維持できたとしても、いったんスピード調整の公算が高いだろう。
前回指摘していたように、豪ドルや英ポンドの、米ドルに対する反騰が見られていたから、キプロス問題が落ち着けば、ユーロも切り返しやすいだろう。
【参考記事】
●相場が熱い!金余り相場はいつまで続く? 米株高とドル全面高の同時進行に死角あり(2013年3月15日、陳満咲杜)
200日線のサポートがキプロスショック後も維持されること自体、ユーロの当面の底打ちを示唆するサインと読み取れる。
(出所:米国FXCM)
■キプロス問題が早期収束ならクロス円が上昇か
肝心の米ドル/円は、黒田新総裁の就任で「事実の売り」といった米ドルロング筋の利益確定も見られたが、これでトップアウトしたと判断するのは時期尚早であろう。
新体制となった4月の日銀会合で、「量、質とも拡大」と公言された量的緩和策の中身を見ないと、積極的な円買いを仕掛けにくいと思われる。
本格的な「事実の売り」があれば、4月の日銀会合以降になるのではないかとみる。
ゆえに、当面クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も堅調な推移になるだろう。
前回コラムにて予測していたように、リードする豪ドル/円で101円の大台の打診があれば、ほかのクロス円通貨ペアが追随してくることも十分想定できる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 4時間足)
筆者の予想どおり、キプロス問題が早期決着できれば、クロス円がもっとも上昇しやすいとも思われる。
【参考記事】
●相場が熱い!金余り相場はいつまで続く? 米株高とドル全面高の同時進行に死角あり(2013年3月15日、陳満咲杜)
最後に強調しておきたいのは、ここでいう早期決着は問題の根本解決ではなく、先送りであるということだ。今までのEU危機がそうであったように。
このあたりは、中国人が一番よく心得ているかもしれない。海外移住してしまう多くの中国人は、中国共産党が結局問題を根本的に解決できず、先送りするしかないことをよく知っているのだ。だからこそ、海外に活路を求めているのである。
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