■キプロス騒動はEUにとってメリットも
今回の騒動で、EU圏のリーダーたちの管理手腕の「未熟」さが再び露呈され、ユーロへの信頼が再び損なわれている。
ただし、EUにとってまったくマイナスばかりではないことも明白だ。キプロス支援が新たな選択肢、つまり「銀行危機を処理する場合、納税者ではなく、銀行の投資者と顧客に負担を求める」という手法がこれからも通用するなら、問題諸国にとって大きな牽制要素となる。
が、市場恐慌を引き起こさないため、EUが火消しに躍起になっており、ダイセルブルーム氏も発言を撤回せざるを得なかった。
したがって、一部市場関係者は、キプロス問題の処理手法は長い目でみればEUとユーロにとってプラスであると主張し、イタリア、スペインなど問題諸国への波及も今のところ限定的で、とりあえず収まったのではないかと思う。
この意味では、筆者は前回の見方を堅持し、短期スパンではユーロが下落し続けるのではなく、いったんリバウンドを果たす余地をなお有するとみる。
■ユーロ/米ドルは1.2750ドル前後の安値で目標達成か
材料が値動きの後についてくる、といった筆者のロジックに沿ってもう一度、ユーロ/米ドルの値動きをチェックすれば、3月25日(月)のユーロ/米ドルの高値が、ちょうど2月25日(月)の安値と合致していたことがわかる。
(出所:米国FXCM)
2月25日(月)は272pipsの下げ幅を持つ大陰線で、あのイタリア政局不安が伝わってきた日である。
言い換えれば、事前にダイセルブルーム氏の発言は予想しようもないが、2月25日(月)安値を上回れずにいたこと自体、ベア(下落)トレンドの継続サインとして受け取れる。
現在のところ、2月25日(月)の値幅と大陰線を持つ意味合いから図れば、一昨日(3月27日)の1.2750ドル前後の安値をもって、その目標を達成させた感触もあり(具体的な分析は筆者のブログに譲る)、200日線を下回っているものの、ユーロの下値は限定的ではないか。そして、底打ちを確認できれば、いったんリバウンドをしてくるだろう。
キプロスの問題は、これからも相場に影響力を残すと考えられるが、目先のこの問題はもう通過したと思われる。
■さらに安値を更新するには、新たなマイナス材料が必要
換言すれば、ダイセルブルーム氏の失言は今週(3月25日~)のユーロの安値に織り込まれ、さらなる安値を達成させるには、EU圏からさらに何らかのマイナス材料が必要である。
ほかの外部要素では、現在もっとも注目されるのはFRB(米連邦準備制度理事会)の政策、米株高、日銀政策ではないかと思う。
FRB政策に関しては、米株高の継続がもっとも証明材料となるように、最近FRB幹部は相次いでハト派発言を繰り返し、マーケットの見方(FRBの早期出口政策模索)を牽制している。
ゆえに、量的緩和策の継続が米株高を支え、NYダウのみならず、より米経済全体をカバーし、より代表的な指数となるS&P500も史上最高値を更新した。これはリスクオン相場が継続されやすい環境にあることを示唆している。
(出所:米国FXCM)
■米ドル/円相場は4月の日銀会合待ち
ところで、保ち合い状況が続く米ドル/円相場は、モメンタムが失われているように見える。
2012年年末から急伸してきただけに、スピード調整が必要云々よりも、黒田新総裁を迎えた日銀の政策待ちといったところが大きいだろう。
黒田氏は「質、量ともに大胆緩和」と明言し、インフレーターゲットを「2年以内に2%」と掲げている。その手腕を拝見しようといったところが市場関係者に共通した思惑だ。
外債購入といった「禁じ手」を使えない以上、2%のインフレーターゲットの達成は決して容易ではないといった認識がマーケットのコンセンサスだから、4月3日(水)からの日銀会合でよほど目を見張る政策を打ち出さない限り、日銀はかえってマーケットを失望させてしまうだろう。
この意味では、来週(4月1日~)米ドル/円は正念場を迎えるだろう。
日銀会合後、「事実の売り」、つまり想定された政策の中身に失望し、円買い戻しが促進されるか、それとも米ドル/円の一段高を迎えるかは、見どころであろう。
ただし、結論から申し上げると、仮に米ドル/円の高値更新があっても、上値は限定的で、2012年11月から始まった米ドル/円のブル(上昇)トレンドはいったん頭打ちになる公算が大きいとみる。
その根拠に関してはまた次回、詳しく説明したいが、レベルに関しては、97~98円台が限界ではないかとみる。市況はいかに。
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