■米ドル/円が調整を行うとする理由は「時間」にあり
では、なぜ米ドル/円がスピード修正しなければならないか。
前述の理由以外に、やはり時間の概念が重要になってくる。言い換えれば、時間が経つにつれ、米ドル/円がさらなる上値を追うモメンタムが低下してくるから、調整する可能性が大きくなるわけだ。この理屈を下のチャートをもって説明したい。
(出所:米国FXCM)
チャートに示しているように、2007年高値から2011年10月安値まで米ドル/円は大きく下げてきた。
同下落波のなかで、2008年高値からきれいな下落ウェッジ型というフォーメーションを形成していた。
テクニカルアナリシスの原則では、下落ウェッジというフォーメーションは上放れしやすく、また上放れした場合、反騰のスピードが速いとされている。足元の値動きから考えても、同原則はかなり納得できるものであろう。
実際、同下落ウェッジの抵抗ラインをブレイクしたのは2012年の2月で、そこから米ドル高・円安の基調を構築していた。
このような視点から考えれば、賢い読者の皆様はすぐピンとくるだろう。すなわち、「アベクロ」効果などと言われる足元の円安は、単純に言えば、2012年2月の上放れが点灯した強気サインの継続で、米ドルの強気変動は安倍さんの出番が決まる前にとっくに決定されていたのだ。
ゆえに、いくら「アベクロ」効果といえども、大きなトレンドの一環としての位置づけにすぎず、これをむやみに過大評価すべきでないことは自明の理だ。
■米ドル/円は約1年のサイクルで天井を打っている
この見方では、もう1つ注目のポイントとして浮上してくる箇所がある。つまり、前述の下落ウェッジの上放れは2012年2月に達成されたにもかかわらず、なぜ同年3月にていったん頭打ちし、同9月までだらだらと値を下げていたか、である。
この謎が解ければ、足元の米ドル/円が置かれている状況を理解できる。
結論から申し上げると、それは、頭打ちのリズム、すなわちサイクルが決定要素として作用しているからだ。
下落ウェッジ内におけるトップからトップへ数えたサイクルはほぼ1年単位であることに気がつけば、2012年3月でいったんトップアウトしていることに納得できるだろう。
(出所:米国FXCM)
単純計算すると、2011年4月高値から1年が経過していたから、いったんトップアウトの時期がきたわけだ。
■桜のようにいったん散る運命にある米ドル/円
ここでまた、もう1つ重要なヒントが得られた。
すなわち、下落ウェッジの上放れをもって米ドル/円はブル(上昇)トレンドに転換したが、変動リスクは下落ウェッジ内と変わっていない。少なくとも同下落ウェッジが完全打破されるまで、このリズム(サイクル)は続く公算が高い。
ここまで書くと、もう余計な説明はいらないだろう。
4月の中旬に入っている米ドル/円、いくらきれいに見えても、桜のようにいったん散る運命にある。
週足におけるRSIの弱気ダイバージェンスからも、いっそうの確信が得られる。
(出所:米国FXCM)
この意味では、米ドル/円が100円の大台乗せるか乗せないかは問題ではなく、問題は、いったん頭打ちした後の調整幅にあるのではないかと思う。相場の次の一手はいかに。
(4月12日 13:00執筆)
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