■日銀黒田総裁の異次元の政策が市場に衝撃
「小出しの日銀」といったイメージの修正は、昨日(4月4日)の日銀政策発表で完全に白(川)黒(田)ついた。
着任早々、総力的かつ徹底的な緩和策を打ち出した黒田総裁の手腕に、日銀や世界金融に精通したプロでさえ驚きの表情を隠せず、また、いわゆるリフレ派の最右翼の発想さえ超えた政策の中身は、市場関係者に大変な衝撃を与えている。
もうサプライズを超えた次元となるから、異次元と言う以外に適切な言葉が見つからないほどだ。
ゆえに、マーケットの反応は激しい。執筆中の現時点で、米ドル/円は97円の大台をいったんブレイクし、高値更新。
ユーロ/円、英ポンド/円も軒並み高騰、1日の値幅(上昇)にして、共に2012年11月にアベノミクスが発表されたとき以来の最大記録を達成している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 VS 円 4時間足)
豪ドル/円に関しては、筆者が常に指摘してきたように、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)通貨ペアをリードし、101円の大台というメインターゲットを達成している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
今回のコラムでは日銀政策の中身に関する詳細な記述は省くが、要するに前代未聞、あるいは日銀において未曽有の総力緩和となっており、現時点で日銀が切れるカードを1回ですべて切ったといった感じだ。
■大胆な政策は、市場センチメントの修正も目的
ここまでやってしまうのか、安倍首相の想定さえ超えたのではないか、と言われるほど過激な政策で、日銀は壮大な実験をスタートした印象が強い。その上、「デフレを退治するためにあらゆる措置を取る」という黒田総裁の決意に改めて感心する一方で、どこか悲壮感さえうかがえる。
考えてみれば、2年以内に2%のインフレターゲットを達成するには、政策自体はもちろん重要であるが、市場センチメントの修正もかなり重要である。
言い換えれば、為政者ほどマーケット心理の重要性を理解しており、マーケットの疑心暗鬼を打ち消して、デフレマインドからインフレマインドに持っていくことがいかに大事かということをわかっている。
何しろ、景気の「気」は、市場マインドに依存する部分も大きい。黒田新政の狙い目もそこにあると思われる。
ということは、ここまで総力的な緩和政策を打ち出すことは、マーケットにサプライズを与えるというよりも、むしろ、マーケットを震撼させること(悪い言い方をすれば、マーケットに脅威を与えることに近い)を目的にしているように見える。
「日銀は有言実行し、目標を何としても達成していくから、国策に逆らう者は皆破産するぞ」と言わんばかりのスタンスが透けて見える。
したがって、昨日(4月4日)の円全面安は、市場関係者が歓喜よりも恐怖感に襲われて行動した結果ではないかと思う。
■米ドル/円は夏場までは100円台に乗らないのではないか
では、肝心の米ドル/円はどこまで上昇するだろうか。
難しい問題となるが、結論から申し上げると、前回のコラムで指摘したとおり、黒田新政にもかかわらず、筆者はやはり97~98円台をもっていったん頭打ちするのではないかと思う。
100円の大台の達成は、少なくとも夏場までないとみる。
【参考記事】
●キプロス問題はEUにとってメリットも!?ユーロのリバウンドを予測する理由とは?(2013年3月29日、陳満咲杜)
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
4月5日(金)朝の高値から100円の大台までたった3円しかない。4月4日(木)1日の値幅は4円近いものだったし、100円の大台は目前だ。マーケット関係者が恐怖におびえて誰も円買いなどしないなら、達成しない方がおかしいように見えるかもしれない。
正直、筆者も迷い、確信を持てないが、あえて言うなら、値動きは材料の先に行くものだから、予想よりはるかに過激な黒田新政といった材料でも、今の値段に織り込まれている公算が大きい。
昨日(4月4日)のように、1日3円以上の値幅を継続させていくのは、いささか無理がある。
■米ドル/円の次なるターゲットは98円台半ばと予想
一方、97円の大台はすでに達成されているから、次は98円台半ばが照準となると思う。根拠は以下のとおり。
まず、あの「2.26事件」が与える示唆だ。
【参考記事】
●米ドル/円急落は為替市場の「2.26事件」!? 90円を割れれば、さらに下落する可能性も(3月1日、陳満咲杜)
下のチャートを見てみよう。
(出所:米国FXCM)
「2.26事件」(チャート上の日付は25日)当日の大陰線は、かなり重要な示唆を与えている。
当日の日足は、その前の計16本の日足を被せ、また、それ以降の日足、計7本をはらんでおり、重要な指示力を有する。
指示力とは2つの側面においてだ。
まず方向において。同日高値、安値のブレイクをもって、次の方向が決定されるというのがテクニカルアナリシスの定石だ。
次はターゲットに関する示唆。ブレイクされた後、同日値幅をそのまま加減し、いわゆる「倍返し」をもってターゲットとするといった経験則がある。
日銀会合前、米ドル/円は一時93円の節目まで迫っていたが、これは「2.26事件」の安値にはほど遠かった。そして、昨日(4月4日)、「2.26事件」当日の高値である94.71円をブレイクしたから、あの大陰線が持つ指示力が証左されることとなった。
この場合、上値のターゲットは98.56円前後と計算される。これが目先のターゲットとして浮上してこよう。
次に、2011年10月安値75.53円(日銀介入前の最安値)を起点とした…
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