■英ポンド/円に新たなシナリオ
こういった見方の正誤はともかく、テクニカル上では、英ポンド/米ドルの堅調につられた形での英ポンド/円の高値更新が、新たなシナリオにつながっていることにインパクトがある。
下のチャートに記しているように、英ポンド/円は、従来のシナリオでは5月高値をもって2012年6月安値118.76円を起点とした上昇波が完成した計算だった。
(出所:米国FXCM)
しかし、それが崩れてブル(上昇)トレンドが足元まで続いているから、エリオット波動論における上昇5波構造における第3波を、従来の2月高値ではなく、5月高値に数え直さなければならない(従来のシナリオは、緑色の数字・?つきで表示)。
この場合、英ポンド/米ドルは8月安値から第5波を推進していたこととなり、2012年6月安値から雄大な上昇ウェーブを描いていることがわかる。
■ユーロ/円の頭打ちがまだである可能性が出てきた
この視点から見ると、円安トレンドの進行は、想定より大きいスパンで測らないといけなくなり、同じクロス円であるユーロ/円も、実はまだ頭打ちしていないのではないかと疑問符をつけられる。
同じロジックによる推測で、ユーロ/円の新たなウェーブカウントは、下記チャートのような可能性を示す。
(出所:米国FXCM)
同ウェーブカウントでは、ユーロ/円は早晩5月高値を更新し、英ポンド/円の後を追う形で第5波を展開するだろう。この場合、想定されていたユーロプチバブルの崩壊は、後ズレになることも覚悟しなければならない。
もっとも、ユーロ/円の高値更新があれば、ユーロ/米ドルか米ドル/円どちらかのブル(上昇)トレンド展開が不可欠なので、今のところ、ユーロ/米ドルのブルトレンドへの復帰は想定しにくいから、可能性があるなら米ドル/円の上放れの確率が高い。
したがって、これからの重要なパラメーターとして「ユーロ/円高値更新の有無」が挙げられる。これが市場関係者にとって目先の焦点となろう。
■米ドル/円の保ち合いは、早ければ来週まで
一方、通貨ペアごとのパフォーマンスは異なり、それらが必ず整合性を持つとは限らない。
考えられるもう1つのシナリオ、つまり、ユーロプチバブルの崩壊が規定路線となり、これからも続く場合は、ユーロ/円は結局高値を更新せず、反落してくることになる。この場合、下のチャートに記しているように、従来のシナリオに復帰する。
(出所:米国FXCM)
仮に従来のシナリオに復帰した場合、英ポンド/円は9月11日(水)高値158.55円をもって第5波を早期完成し、これから反落してくる公算も高まる。
両シナリオに合わせて、米ドル/円のウェーブカウントも変化してくるが、現在のところ米ドル/円の下値余地は、前述の大型トライングルの下値ラインに限定される公算が大きい。
同フォーメーションの下放れがなければ、米ドル/円は早晩ブルトレンドへ復帰するだろう。
米ドル/円の大型三角保ち合いは、短ければ来週(9月16日~)あたり、長ければ10月いっぱいまで続くとみるが、この間、ユーロ/米ドルと英ポンド/米ドルの反落が再度加速してくれば、クロス円の頭打ちや反落といったシナリオの可能性がなお大きいとみる。
いずれにせよ、ユーロ/円高値更新の有無に注目すれば、相場の次の一手はなんとなく悟れるのではないかと思う。市況はいかに。
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