■「実需の買い? 投機筋の売り?」
FX会社や取引所を通じて参加する為替市場。そこにはさまざまな思惑を持った参加者がいる。たとえば実需筋。国境をまたぐ貿易の決済には外貨が欠かせない。トヨタ自動車は年間20兆円ほどの売上があるが、その7割以上は海外売上。ドルやユーロで売った代金を円に換える取引を行なったりする。反対にアマゾンだったら日本での売上を本国に送金するため、円をドルに換えたりするだろう。こういった取引が「実需」だ。
一方、「べつに外貨は必要ないけど、儲けたいから為替を取引するよ!」という「投機筋」もいる。FXを取引する個人投資家だってそうだし、銀行や証券会社、ヘッジファンドもそう。ディーラーたちが高額のボーナスを狙って短期的な売買を繰り返している。
■取引高は小さくても実需や年金が注目されるのは・・・
同じように収益目当てで取引しているけど、ちょっとスタンスが違うのが年金の運用基金など。ヘッジファンドが数日から1年以内での短期的な利益を目指して取引するのに対して、年金基金などの取引はもっと中長期的なのが特徴だ。とくに日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は「世界最大の機関投資家」として知られ、「GPIFがいつ円売りに乗り出すか」が注目されたりもした。
短期筋は「買ったら売って」「売ったら買い戻して」と、すぐ決済するから市場に残るポジションはゼロ。それに対して、実需や年金基金のような参加者は、一度取引を始めたらそうそう決済しない。買ったら買いっぱなし、売ったら売りっぱなしで放置するから、市場にポジションが積み上がっていく。これって意外と影響が大きいみたい。取引高は投機筋のほうが大きくても、企業のM&Aによる外貨需要や年金基金の動向などが市場で注目されやすいのはそのせいだ。
■大口のオプションが置かれた価格は節目になる
それともうひとつ注目されるのが、オプション。オプションにはいろんな種類があるけど、たとえば「1ドル110円に達しなかったら勝ち」なんていう条件のオプションがある。こうしたオプションを資金豊富な大口投資家が利用していると、110円の手前で為替レートが切り返してしまうことがよくある。オプションの利用者が「1ドル110円になったら負けちゃう」と、あせって110円手前で売り浴びせてくるからだ。
どんな参加者がいくらでどんな取引をしているか、どこに大口のオプションが置かれているか、基本的にはヒミツだけど、漏れ伝わってくることもある。FX会社で読めるニュースなどを参考にしてみよう。
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