■G20終了。世界的なコミットメントに重要な意味あり
週末の2月22日(土)~23日(日)に、シドニーでG20(20カ国地域財務相・中央銀行総裁会議)が開催され、G20がすべて同意した声明文が公表されました。
週明け(2月24日~)のアジア市場では、声明文を受けた反応はほとんど見受けられませんでしたが、この世界的なコミットメントが非常に重要な意味を持っていることは事実であります。

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各国の利害が入り混じり、2カ国間でさえ合意点を探すのが難しい世界情勢の中にあって、20の地域や国々が同時に合意することは、かなり困難な作業であることは容易に想像できるというものです。
■G20で初の数値目標が設定できたのは画期的だが…
さて、今回のG20では、初めて数値目標を設定できたという点では画期的なものだったと思われます。
しかし、5年間で全体のGDPを2%引き上げるという大まかなメドだけがつけられただけで、直接実効性のある政策に持ち込んでいくには、まだまださまざまな問題が残されています。
市場としても、「あまりにも大局観過ぎて反応のしようがない」といった見方が強いようです。
■リスクは低減しているとあえて盛り込んだか
それよりも、今回の声明文では、
「我々は、最近の世界経済における改善の兆しを歓迎する。とりわけ米英および日本の成長が強まっている一方で、中国や多くの新興国において強固な成長が継続し、ユーロ圏において成長が再開している。いくつかの主要なテールリスクは低減している」
と冒頭でまとめられ、市場が現在恐れているテールリスク、つまり新興国のデフォルトやリーマンショックのよう急激な金融市場の混乱、または、ダボス会議以降、急激に高まっている日中関係の悪化などから起きる地政学リスクなどについてはG20が集結して、決してそんな事態にはさせず、そのリスクが低減しているということをあえて盛り込んできたと言えます。
■G20はテーパリングを容認。新興国への影響は最低限に
また、米国のテーパリング(※)については、
「我々は、多くの先進国において金融政策は引き続き緩和的である必要があると同時に、物価安定と経済成長の見通しを踏まえ、然るべきタイミングで正常化すべきであることを認識する。このような将来的な進展は世界経済にとって良いことであり、緩和的な金融政策への依存度を低下させることは、中期的には金融の安定性にとって有益であろう」
と容認する立場を主張。
新興国への影響なども、
「我々の中央銀行は、金融政策の在り方については、継続的な情報交換や世界経済に与える影響への配慮との関連で、引き続き注意深く測定され、明確にコミュニケーションが行われる、というコミットメントを維持している」
として、最低限に抑えることを約束しました。
(※ 編集部注:「テーパリング」とは、米量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
■政策による為替レートの変動自体を容認する文言も
さらに、
「市場が様々な政策の変更や各国の状況に反応する際には、資産価格や為替レートが調整される。これは時に成長に悪影響を与え得る過度な変動をもたらすかもしれない。多くの国はこれに対し準備があるが、我々の主な対応は、国内のマクロ経済政策、構造政策、金融規制・監督政策の枠組みを更に強化・改良することである」
と、政策による為替レートの変動自体を容認する文言も盛り込まれました。
■新興国市場の混乱も火種残したまま
このような声明文を受けて、市場で燃え上がった混乱の火消しにいったんは成功したかのように見えます。
ただ、現状ではその火がまったく消し去られたと考えるのは時期尚早でしょう。市場のどこかで必ずやくすぶっているはずです。
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉も実質、先送りされた今、市場は新たな材料を探すべく気迷いムードに包まれていますが、新興国市場での混乱はいまだに火種を残したままです。

(出所:CQG)
問題の根幹は非常に根深く、G20を中心に最大限の注意を今後も払っていかなければならないでしょう。
■次なるきっかけは日銀の量的緩和か
その火種を消し去ることができるかどうか、次なるきっかけは日銀の行動にかかってくるのではないかと考えています。
最近の日銀審議委員の発言にも何度か表れているとおり、2014年4月の消費税引き上げに向けて、追加の量的緩和の可能性が取り沙汰されています。
市場が納得する緩和政策を近々実施できるかどうかが、目先のカギとなるのではないでしょうか。
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