■日銀緩和への過剰な期待の剥落も株安・円高を推進する
そして、「異次元の材料」ほどではないが、強気ロジックの本音である日銀緩和観測がアテにならないか、実るにしてもだいぶ遅れたタイミングに出るのではないかと推測できるので、マーケットに氾濫する過剰な期待が一段と剥落していくことも当面の株安・円高トレンドを推進しよう。
換言すれば、外部要素の悪化なしなら日銀の予想どおりのインフレターゲットが実現される可能性が高いから、さらなる緩和なし。
逆に、さらなる緩和が必要であれば、その時は間違いなく外部要素の大幅悪化といった事態が起こっているはずだ。そのような時、マーケット関係者が熱望する緩和策が発動されても、だいぶ株安・円高が進んだ後、といった局面も想定されるので、多くの市場関係者にとって、もうどうでもよい話になる可能性も。
ただし、現在のように、緩和、緩和との期待一心でロングポジションを持ち、もっぱら待つという事態は正常ではなく、むしろ日銀が緩和に踏み切った時は、すでに多くの市場関係者にとって「後の祭り」状態だったという局面があれば、それこそが正常だと思う。
その時こそ、日本株や米ドル/円の押し目買いが報われる可能性が増すのではないかとみる。
■米ドル/円があっさり100円を割るとみる理由とは?
話を現在に戻すが、米ドル/円の変動率を見る限り、なおかなり低い状態にあることは間違いない。変動率の低下は必ずしもリスクオフへの転換を意味しないが、VIX指数で見るリスクオンの限界といった視点と相俟って考えると、これから変動率が正常に戻った場合、やはり円安ではなく、円高の方向に動くだろう。
なぜなら、リスクオンを極め、変動率も極端に低下している(ロイターの報道では、過去最低の水準に切っているという)足元でも、米ドル/円は105円以上ではなく、101円台前半を辛うじて維持している状態だからだ。
これからリスクオフにちょっと振れていき、また変動率が正常なレベルに戻っていく場合、100円割れなどは割とあっさり起こるのではないかと思う。
(出所:米国FXCM)
ユーロ/米ドルのトップアウトもあるため、ユーロ/円の場合はもっと動くと想定されるから、近々136円の節目割れも視野に入る。
(出所:米国FXCM)
そのほかのクロス円についても基本的な見方は同じだ。
英ポンド/米ドルの場合、ユーロ/米ドルほど明確なトップアウトシグナルを点灯していないが、1.7ドルの節目手前から失速していることからすると、少なくとも上昇一服の公算は大きい。したがって、英ポンド/円も近々167円の節目割れを意識しておきたい。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
■超金融緩和で市場関係者のリスク感覚が麻痺している!
豪ドルとNZドルあたりでは、もっとも利上げ余地の大きいNZドルでさえ、0.8800~0.8850ドルのレジスタンスを突破できずにいるから、答えはおのずと出るだろう。
(出所:米国FXCM)
最後に、同じくロイターの記事には、恐ろしいことが書かれている。その記事によると、「超金融緩和でリスク感覚が麻痺、市場の弱気派が1987年以降でもっとも少ない」とのこと。果たしてこれは杞憂にすぎないだろうか。その真相は、もうすぐ明らかにされる。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)