■マレーシア航空機撃墜でVIX指数は急上昇
VIX指数は急上昇している。マレーシア航空機が撃墜されたことを受け、マーケットが動揺しているからだ。いつものようにリスクオフのムードで株は下落、金と米ドル、そして円は買われる傾向にある。
このコラムでもたびたび強調してきたように、歴史的な低水準にあるVIX指数が反騰してくる運命にあるなら、何らかの材料があとに続く形でマーケットの変動率を拡大させるはずだ。
民間航空機の撃墜というショックな事件をもってこの仮説が証左されること自体、まったくよろしくないが、材料はどうあれ、値動きの蓋然性を説明する上では、まったくの偶然とは言い切れないのでは。
7月11日(金)の本コラムに、筆者がもっとショックな材料が出る可能性を指摘していただけに、こう言っても後解釈ではないだろう。もちろん、今回の材料をもって材料の出尽くしという意味合いではないことも強調しておきたい。
【参考記事】
●ポルトガル最大手銀行をめぐる信用不安!もっとショッキングな材料が出る可能性も…(2014年7月11日、陳満咲杜)
そもそも今回の事件は、長くリスクオンに慣れてきたマーケットのように、国際社会の一種の怠慢に起因している側面が大きい。
ウクライナ東部の紛争と混乱が周知されているにもかかわらず、同空域上空は多数の国の飛行機が通過しており、回避措置をまったく取っていないと聞く。危機意識と危機管理の欠如は、いつも慢心と傲慢に起因することが多いが、今回も然りであろう。
地政学リスクは常に存在しているが、「大きい安定」に慣れていたマーケットはその都度反応し、その後、乗り越えてきた。
しかし、今回もそのパターンで終わるかどうかは不透明だ。事件の真相解明につれ、オバマ政権に軍事行動を迫る圧力が高まるかもしれないし、中東の混迷と相俟って、地政学リスクの一段の拡大は十分あり得るからだ。
■本来ならば円は一段と買われてもおかしくないが…
もっとも、今回の事件を受け、為替マーケットの反応は限定的で、比較的、株式のほうが激しく反応した模様。低い変動率に留まった為替マーケットと違い、株式のほうが内外とも大きく上昇していた分、地政学リスクの浮上により反応したと言える。この意味でも、株式市場の行きすぎがうかがえる。
そして、リスク回避先としての円は、本来一段と買われてもおかしくないが、現時点では円買いの勢いは加速しているとも言いにくい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨vs円 1時間足)
長く低下し続けたボラティリティーは、狭いレンジ変動を強いられているだけに、打破するにはより大きなエネルギーを必要とするのかもしれない。
逆説的となるが、この意味において、地政学リスクはこれから収まるより、一段と拡大されていく可能性が大きいのでは。
ところで、ミセス・ワタナベさんらの行動は…
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