■アルパリ(UK) Limitedが破綻。アルパリジャパンにも影響
1月16日(金)、アルパリジャパンより、親会社でカバー先であるアルパリ(UK) Limitedが破綻することがリリースされた。
これを受けて、アルパリ・グループの日本法人であるアルパリジャパンにおいても、口座を持っている顧客が保有するすべてのポジションが強制決済されることが発表された。また、新規ポジションの保有、入金、口座開設についてもできなくなる。
以下は、アルパリジャパンのウェブサイトに公開されたリリースだ。
■破綻の原因は「スイスショック」!
アルパリジャパンのリリースによると、アルパリ(UK) Limitedが破綻に追い込まれたのは、1月15日(木)のSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])による、ユーロ/スイスフランの防衛ライン撤廃を受けて、スイスフランが暴騰したことが要因。
【参考記事】
●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落!スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!
スイスフランの暴騰を受けて、アルパリ(UK) Limitedに口座を持っている顧客の多くが有効証拠金以上の損失を被った。
通常であれば、顧客が追証(追加証拠金)を入れればいいわけだが、今回の場合、スイスフランの動きがあまりにも急激だったことから多くの顧客が追証を迫られてしまった。さらに、顧客が追証を入れることができず、損失をカバーできなかったことにより、その損失がアルパリ(UK) Limitedに引き継がれてしまい、1月16日(金)でアルパリ(UK) Limitedが破綻する事態になったということだ。
■アルパリジャパンの顧客資産は無事なのか?
なお、日本国内のFX会社はすべて顧客資産を信託保全することが義務づけられている。したがって、アルパリジャパンも顧客資産は信託保全しており、今回のリリースでも、「お客様からお預かりしている資産はすべて完全信託保全の対象」になっていると発表している。
アルパリジャパンが発表したとおり、完全信託保全が実行されていれば、アルパリジャパンに口座を持っている顧客は口座内の資産が消失する心配は基本的にはないはず、ということになる。
ただ、金融庁からは1月16日にアルパリジャパンに対して、顧客資産の保全を図ることなどを求めた行政処分が下っている。これはアルパリ(UK) Limited破綻の影響が日本法人であるアルパリジャパンに対しても及ぶことを懸念して出されたものだ。
これに対し、1月17日(土)になって出されたアルパリジャパンのお知らせでは、通常どおり出金依頼をすれば、出金処理を実施するとしている。出 金処理は1月19日(月)より順次行うが、手作業での個別処理になるため、通常より送金手続きに時間がかかることが見込まれるという。
さらにこのお知らせの中でアルパリジャパンは「お客様からお預かりしている資産はすべて完全信託保全の対象となっており、お預かりしている資産はすべてご返金させて頂きますので、どうかご安心頂けますようお願いいたします」と発表している。
アルパリジャパンに口座を持つ顧客の資産が無事保全され、出金されることを祈りたいが、アルパリジャパンの発表内容から判断する限り、その可能性は高そうだと思える。
アルパリジャパンは日本国内における有力なメタトレーダー(MT4)導入会社の1つだった。今までアルパリジャパンに口座を持っていた人で、それ以外のメタトレーダー(MT4)導入会社に移りたいという人は以下のコンテンツをご参考に。
【参考コンテンツ】
●メタトレーダー(MT4)が使えるFX会社を徹底比較!
■アルパリ以外でも損失を被った会社も…
今回の一連の「スイスショック」で損失を被った為替関連会社はアルパリ(UK) Limitedだけではない。
たとえば、英国を本拠とするIGグループの傘下で、スプレッド・ベッティング業務を行っているIG indexは3000万ポンド(53億円)の損失が出たと発表している。
また、米FXCMも顧客が有効証拠金を上回って損失になった額が2億2500万ドル(1米ドル=117円換算で263億円)に達したことを明らかにしている。
米FXCMの株式は米国市場で上場されているが、その株価は一時、90%以上も下落。同社は破綻する可能性が極めて高いと株式市場では見られていたことを示している。
しかし、米FXCMは米投資銀行ジェフリーズの親会社リューカディア・ナショナルから3億ドル(1米ドル=117円換算で351億円)の融資を受けることが決定。破綻は回避された。
これら2社のグループには、IG証券、FXCMジャパン証券という日本法人があり、日本でもFXサービスを展開しているが、FXCMジャパン証券はウェブサイト上で、同社の財務基盤に影響はないとのリリースを出している。
以下は、FXCMジャパン証券のウェブサイトに公開されたリリースだ。
■外為どっとコムは「強固な財務基盤を維持」と発表
今回の“スイスショック”に関して、これまで明らかになったところでは、日本国内のFX会社よりも、欧米のFX会社で大きな損失が出たケースが目立っている。
その背景には、スイスフランが日本人に今一つなじみの薄い通貨であり、欧米のFX会社よりも日本国内のFX会社の方がスイスフランをトレードする顧客がかなり少ないといったことがありそうだ。
日系のFX会社には自社の財務状況に問題はないとの発表を行っているところもある。
たとえば、外為どっとコムは今回の“スイスショック”を受けて出されたお知らせの中で、「金融商品取引業者の財務の健全性を示す『自己資本規制比率』が本邦FX専業会社の中でも最高水準の1396.5%(2014年9月末時点)に達するなど、今般の相場激変の前後を通じて強固な財務基盤を維持」していると発表している。
また、GMOインターネットもリリースを出し、“スイスショック”が「当社の連結業績に与える影響は軽微」であることを明らかにしている。
GMOインターネットの傘下には金融系の持ち株会社・GMOクリックホールディングスがあり、GMOクリックホールディングス傘下にGMOクリック証券、FXプライムbyGMOという2つの国内FX会社が連なっている。
GMOインターネットの業績への影響が軽微ということは、GMOクリック証券、FXプライムbyGMOでは、“スイスショック”による大きな財務的問題などは起こっていないものと思われる。
今回の「スイスショック」が財務状況に影響を及ぼすFX会社は他にも出てくるのか? 今後の動きにも引き続き注意しておきたい。
(ザイFX!編集部・庄司正高&井口稔)
※本記事では記事の当初公開以降に出てきた情報をあとから追加しています。
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