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ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?

プライスが消えた…。現役インターバンク
ディーラーが語ったスイスショックの瞬間

2015年01月21日(水)22:14公開 (2015年01月21日(水)22:14更新)
ザイFX!編集部

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 外国為替市場を震撼させた“1.15スイスショック”

 2015年1月15日(木)、日本時間の18時30分ごろ、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])はユーロ/スイスフランにおける1.20フランという防衛ラインを突如撤廃。この結果、わずか20分という短時間のうちにユーロ/スイスフランという通貨ペアは約3800pipsという、とてつもない大暴落を巻き起こした。

【参考記事】
ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!

スイスショック時のユーロ/スイスフラン 5分足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 5分足

 SNBが引き起こしたこの“大事件”は一夜にして英国の大手FX会社(アルパリ(UK) Limited)を破綻に追い込むまでの騒ぎとなった。

【参考記事】
ついに破綻も! スイス中銀の爆弾発言は欧米のFX会社にどう影響したのか?(広瀬隆雄)

 外国為替市場の歴史に残るであろうこの“大事件”が起こった瞬間、インターバンク市場はいったいどんな状況だったのだろうか?

 ザイFX!では国内の金融機関に勤める現役為替ディーラーにスイスショックが起きた瞬間の状況を聞くことができた。今回はその模様をお届けしよう。


騒然となったディーリングルーム

 酒田譲司氏(仮名)は長年、為替のインターバンクディーラーを務めてきた。普段、スイスフランのトレードをすることもあるが、それはたまにだけということだ。

 そんな酒田氏が語る“スイスショック”の瞬間とは…

 「最初は何が起こっているのか、わかりませんでした。そのうち、SNBがフロア(対ユーロでのスイスフラン高の上限)を撤廃したというニュースが流れたんです。

 ディーリングルームは騒然となりました。お客さんからの照会の電話も数多くかかってきましたね。

 自分はこのとき、米ドル/円のロングを持っていたんですが、そのトレードはいったんやめました」

ユーロ/スイスフランはプライスがない赤い表示状態に

 「現在、トレードはEBSをメインに使って行っています。そして、EBSはプライスが立っていないと表示が赤くなるんです。

ユーロ/スイスフランは1.20フランを割れてから、この赤い表示の状態が続きました。

 そんななか、ときどきゲリラ的に売り注文が入ることはあるんですが、買い注文は入らず、約定しません。そうすると、その売り注文のプライスがどんどん下がっていくという状況になっていったんです」

 EBSとはエレクトロニック・ブローキング・システム(電子ブローキング・システム)の略で、外国為替の電子取引端末の1つ。酒田氏によると、「外国為替のインターバンク市場におけるEBSのシェアは非常に高く、これがインターバンク市場そのものと言っていい」という。

【EBSに関する参考記事】
YEN蔵さんに聞く為替ディーラーの世界(2) 凄まじき仲値の攻防。米屋が出てるぞ~!?

 このEBSには人が手動で入力した注文だけでなく、普段はプログラムが自動的に出すビッド(買い値)とオファー(売り値)が表示されるような状態になっているそうだ。酒田氏によると、ユーロ/スイスフランが1.20フランを割れてからは、プログラムによるそういったプライスは、プログラムが引っ込められたようで、まったく出なくなったとのこと。

 そういったプライスのないEBSの赤い表示状態のなか、散発的に手動で出された売り注文が表示はされるがむなしく約定せず、ユーロ/スイスフランの為替レートは底なし沼に吸い込まれるがごとく、みるみる沈んでいったということなのだ。

なんと、0.015フランでいったん約定したものもあった!

 その背景にはユーロ/スイスフランの流動性の低さという問題があった。

 「実は米ドル/円なら100円割れという、現在のレート(116~118円程度)からかなり遠いところにも、今も買い注文が入ってるんです。

 でも、ユーロ/スイスフランの場合は誰も1.20フラン割れを想定していないから、1.20フラン割れのところにはまったく買い注文が入っていない。

買い注文がまったくないから、ストップロスの売り注文を執行しようとしてもできないのです」

米ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

ユーロ/スイスフラン 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 週足

 ユーロ/スイスフランは一応、主要通貨同士の通貨ペアではあるが、元々の取引量が少ない上に、1.20フラン割れはマーケットの想定外のことであったため、1.20フランより下は買い注文のまったくない空白地帯になっていたようだ。

 「0.85フランあたりまで急激にレートが下がっていったあとは、おそらくSNBの介入もあって、1.05フランあたりまで回復してきました。ここまでで30~40分ぐらいの話でしょうか。その付近でやれやれ売りが出てきて、ストップロスも執行されているようでした」

スイスショック時のユーロ/スイスフラン 5分足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 5分足

 酒田氏によると、このパニック的なユーロ/スイスフラン大暴落の過程では、なんと「0.015フランで約定したものもあった」という。しかし、これはさすがに「ミスヒットということで、最終的にはキャンセルされたと思います」とのことだった。

 また、大暴落の最中、酒田氏自身はユーロ/スイスフランに買いで入ったそうだ。

「かなり下がったところで買ってみたんです。でも、思ったよりもさらに下がっていって、最終的には儲かりましたが、しんどかったですね」

米ドル/スイスフランにもプライスがなかった

 ユーロ/スイスフランは米ドルが絡まない、いわゆる「クロス通貨」。となると、米ドルが絡んだ2つの通貨ペアからそのレートを算出することができる。つまり、ユーロ/米ドルと米ドル/スイスフランのレートがあれば、ユーロ/スイスフラン自体の取引が全然なくても、ユーロ/スイスフランのレートは理論的に算出できるはずなのだ。

 スイスショックの瞬間のユーロ/米ドルと米ドル/スイスフランはどうなっていたのだろうか? 酒田氏に聞いてみた。

 「ユーロ/米ドルは動きは激しかったですが、普通にプライスは立っていました。けれど、米ドル/スイスフランはユーロ/スイスフランと同じようにプライスは立っていなかったんです」

ユーロ/米ドル 15分足

(出所:米国FXCM

米ドル/スイスフラン 15分足

(出所:米国FXCM

 ドルストレートである米ドル/スイスフランであれば、もしかしたらレートはあったのではないか?と記者は思ったのだが、そうではなかった。

 さすがに外国為替市場で最大の取引量を誇り、スイスフランが絡んでいないユーロ/米ドルのレートがなくなることはなかったものの、米ドル/スイスフランについては、ユーロ/スイスフランと同様、レートのまったくない状態にしばらく陥っていたということだ。

FX会社はカバー先によって、状況が違っていた可能性

 ところで、個人投資家への取材内容やネット上の書き込みなどを見ると、今回のスイスショックでは恐ろしいことに、ストップロス注文を入れていた位置よりもかなり下のレートで約定した例が結構あるようだ。

 また、FX取引では、建てたポジションの含み損が拡大した場合、通常は口座の証拠金がすべてなくなってしまう前に強制ロスカットが執行されるしくみになっている。

 しかし、その執行が遅れた結果、口座の証拠金がゼロになるだけでなく、さらに損が拡大して、FX会社に対してトレーダーが多額の借金を抱えてしまった例もあると聞く。

【参考記事】
スイスショックで借金の悲劇! 個人投資家を直撃、裁判への動きも…

 上の記事でも解説しているが、ストップロス注文は設定したレートを通過した瞬間に発動される成行注文のようなもの。約定するレートはストップロス注文を設定したレートそのものではなく、ストップロス注文レートを通過したあとにあった最初のレートということになる。

 したがって、ストップロス執行時に約定レートが少しすべることは普通のことと言えるが、数百pipsとか1000pips以上もすべったとなると、すぐに納得はしにくいところだろう。

 しかし、先ほど酒田氏が語ってくれたとおり、スイスショックの瞬間は、ユーロ/スイスフランも米ドル/スイスフランも、インターバンク市場でレートのない異常な状態が続いていたということだから、ストップロス注文が大きくすべるケースがあったことは仕方がない、というところだろうか。

 さらに酒田氏からは次のような話も出てきた。

 「FX会社のフローを集めている金融機関などもストップロスを執行できないようでした。ただ、FX会社はカバー先によって、状況がだいぶ違っていた可能性があるのではないでしょうか。

 というのは、英系の銀行は割とずっとプライスを出し続けていたんです。一方、米系の銀行はプライスを止めていたので…」

 英系と米系にそんな違いがあったのか、酒田氏の話だけでは確定的なことは言えないが、1つの情報としてお伝えしておきたい。

通常時は気にならないカバー先が気になってくる

 今回のスイスショックでは、FX会社によって、ストップロスのすべり方が違っていたことがあったようなのだが、酒田氏の話を聞くと、それはそのFX会社のカバー先がどれだけの数あるのか、どんな金融機関なのかといったこととも関係あるのではないかと思えてくる。

 通常時はFX会社のカバー先をそれほど気にすることはないかもしれないが、このような異常時には差が出てくるのかもしれない。

 ザイFX!の「FX会社おすすめ比較」では、各FX会社の「FX会社詳細情報」のページにカバー先を記載しているので、気になる人はチェックしてみてはどうだろうか。

 たとえば、FX取引高トップのGMOクリック証券「FXネオ」の場合、そのカバー先は以下のようにたくさんある。

【参考コンテンツ】
FX会社おすすめ比較:GMOクリック証券「FXネオ」

 ただ、直接のカバー先が少ないからといって、すぐカバーに不安があると考えるのは早計だ。

 たとえば、1万通貨までなら米ドル/円0.27銭原則固定と業界最狭水準のスプレッドで取引できるSBI FXトレードの場合、カバー先はSBIリクイディティ・マーケット1社となっているが、SBIリクイディティ・マーケットは計27社のカバー先を持っている。

【参考コンテンツ】
FX会社おすすめ比較:SBI FXトレード

 なお、今回のスイスショックで米シティグループとドイツ銀行が各1億5000万ドル(約175億円)、英バークレイズが1億ドル未満(117億円未満)の損失を出したとの報道も出ているが、酒田氏は「日本の金融機関では大した損失は出ていない」と話していた。日本の金融機関はスイスフランをあまり取引しないからということだ。

次のターゲットはデンマーククローネや香港ドルとの噂も

 このスイスショックの影響は今後も尾を引くのだろうか? インターバンクディーラーとして、日々相場と対峙している酒田氏の見解を聞いてみた(本記事の取材は2015年1月19日(月)に行っている)

 「スイスフラン絡みで損失を出したヘッジファンドや金融機関のトレーディングデスクは利益の出ているその他のポジションをいったん閉じるということをやっています。

 そんなこともあり、今のところ、リスクセンチメントはあまり良くないですが、たとえば、日本株などを見ても、下げはそれほどきついわけではなく、スイスショックの影響は限定的だと感じます。

 マーケットでは、スイスフランの次にターゲットとなるのはデンマーククローネや香港ドルではないかというウワサも流れていますが、それは現実的ではないと思っています」

 デンマーククローネや香港ドルは、先日までのスイスフランと似たような形で中央銀行が大規模な介入などを行い、為替レートを人為的に狭い範囲で動かないようにしている。

 デンマーククローネの場合は、コントロールの対象となっている相手の通貨はユーロ。為替レートの変動は1ユーロ=7.46038クローネの上下2.25%以内(1ユーロ=7.29252~7.62825クローネ)に留められている。

ユーロ/デンマーククローネ 月足

(出所:米国FXCM

 また、香港ドルは米ドルを対象として、相場がコントロールされている。こちらは1米ドル=7.75~7.85香港ドルの範囲内に収めるような政策が行われているのだ。

米ドル/香港ドル 月足

(出所:米国FXCM

 そして、酒田氏はこうした政策が破られることはないと見ているということだ。

 なお、ユーロ/デンマーククローネはサクソバンクFX証券「スタンダード口座」IG証券「ミニ取引」OANDA JAPAN「ベーシックコース・MetaTrader4」などのFX口座で取引できる。

 また、米ドル/香港ドルはYJFX!「外貨ex」ヒロセ通商「LION FX」サクソバンクFX証券「スタンダード口座」FXCMジャパン証券「プレミアム口座」OANDA JAPAN「ベーシックコース・MetaTrader4」などのFX口座で取扱いがある。こうした特殊な通貨ペアのトレードに挑戦することをオススメするわけではないが、ご参考まで。

(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔)

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