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億トレーダーもスイスフランショックに巻き込まれる
「SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が無制限介入を開始してから、ユーロ/スイスフランは一度も1.20フランを割っていませんでした。昨年(2014年)12月にはSNBがマイナス金利の導入を発表して、100pipsほど跳ね上がって稼げたこともあり、『もう一度!』と思って1月初旬に20万通貨、ロングにしました」
そう振り返るのはFXトレーダー・ぶせな氏。スキャルピングを得意として億を稼ぎだす上級者だ。ところが、今回のスイスフランショックでは、ぶせな氏と同じような思惑のもとで取引していた人の多くが打撃を受けた。
【スイスフランショックに関する参考記事】
●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!
「SNBがいつまで1.20フランを防衛できるのかと懸念もあったので、損切りのストップ(逆指値注文)を1.20フランの5pips下、1.19950フランに入れていました。ストップも5pipsちょっとすべっただけの1.19899フランで約定したので、5万円弱の損失で済んでいます」
逆指値を入れたレートで明暗が…
ぶせな氏の場合は、1.20フランのすぐそばにストップを置いていたために難を免れたようだ。ぶせな氏のストップ(逆指値)が約定したのは18時30分。SNBの発表があった直後だ。
下記のチャートはぶせな氏が使っていたGMOクリック証券の1分足チャート。
SNBの発表から1分間で1.20フランから1.17フランまで急落したが、まだまともなローソク足となっている。ぶせな氏のストップ注文が約定したのは、この1分の間だ。おそらく1.20スイスフランの直下に置かれたストップ注文はギリギリまともに約定していたのだろう。
しかし、そのあと、18時31分の足は同値線となり、レートが停止されていた様子がうかがわれ、その次のローソク足は19時21分。この間の50分は取引が停止されていたようだ。
1.20フランから50pips、100pipsと離れて置かれたストップは、おそらく19時21分の取引再開後のレートで約定したのだろう。そのレートは1.03スイスフラン台。少なくとも1400pipsほどすべって約定したことになる。米ドル/円なら14円幅のスリップだから恐ろしい……。
ストップ注文のしくみをおさらいしておくと、これは「指定した価格をトリガーにして発注する成行注文」とも言える。1.19フランに置かれたストップ注文なら1.19スイスフランを通過した時点で成行注文が発動して、1.19フランの次の価格(ネクストプライス)で約定させにいく。
想定よりも1000pips下での決済で借金が…
今回はネクストプライスが大きく飛んで1.00フラン台、あるいは0.9フラン台となり、巨額の損失を被る人が少なからず出たようだ。
「DMM.com証券を使って、トラリピ(※)のような取引をユーロ/スイスフランでやっていました。スイスフランショック直前の1月12日(月)にもSNBが1.20フランの防衛ライン維持を明言したばかりでしたし、強制ロスカットとなっても93万円ほどの資金が残るだろうと計算していました」
そう振り返るのは、FXブロガーの幸福賢者さんだ。
「計算上だと強制ロスカットとなるのは1.14フランあたり。ところが、実際にロスカットされたのは1.04348フラン。30万通貨ほど持っていたため、合計673万円の損失になりました。口座残高がゼロになるだけでなく、317万円の『借金』が残りました」(幸福賢者さん)
FXでは強制ロスカットのしくみがあるため、「基本的には」借金が発生することはない。だが、今回のように為替レートが急変したときには、口座に入金していた証拠金額以上の損失が発生し、FX会社に対する負債が発生することがある。
(※編集部注:「トラリピ」については、以下の参考記事をご覧ください)
【参考記事】
●進化したトラリピ犬氏のトレード術(1) 1年9カ月の完全放置で確定利益430万円!
●進化したトラリピ犬氏のトレード術(2) 「円高に弱い説」を覆し、過去最高益!
過去にもある「FXで借金」のケース
FX取引で借金が発生するのは決して珍しい話ではなく、東日本大震災やギリシャショックで市場が急変したときにも、多額の「ロスカット未収金(トレーダーのFX会社に対する負債)」が発生している。
今回は急変したのがスイスフランということもあり、東日本大震災時のような巨額の未収金が発生することはないだろう。
しかし、今回は値の飛び方が尋常じゃない。幸福賢者さんのように、想定よりも1000pips以上離れて約定した人が多く、件数や合計金額は少なくても、1人あたりの金額は過去にない規模になりそうだ。
「FX会社からはさっそく電話がきましたが、今はまだ払う気はありません。『1.14スイスフランで強制ロスカットされるから』と安心していたのに、1000pipsもすべって約定されるのはさすがにひどすぎる。訴訟も視野に弁護士と相談して、今後の方針を決めようと思っています」(幸福賢者さん)
強制ロスカットの遅れはFX会社の過失とする判例も
強制ロスカットを巡っては、すでに判例が出ている。強制ロスカットされるレートに達してから18秒経過してから決済されたため、想定以上の損失が生じたとして起こされた裁判だ。この判決で裁判長は次のように述べている。
「ロスカットまでに一定のタイムラグが生じることは契約上想定されているが、10秒を超えれば合理的範囲内とはいえない」(「日本経済新聞」より)
幸福賢者さんの強制ロスカット注文が約定したのは18時36分。しかし、肝心の強制ロスカットが発生するレート(1.14フラン)を飛ばして、1.04フラン台へと下落しているため、「どこから10秒を数えるか」という起点が不明瞭であり、難しい判断になりそうだ。
こうした金融商品を巡るトラブルでは、裁判ではなく、「証券・金融商品あっせん相談センター」などの金融ADR(裁判外紛争解決手続)機関を利用して、解決する手もある。スイスフラン絡みの約定で納得のいかない人は、相談するとよいだろう。
前代未聞!? サクソバンクでは約定レートを修正
さて、1月15日(木)18時30分以降のスイスフランは混乱の極みだった。筆者も18時40分ごろにユーロ/スイスフランを売ろうとしたが、注文は通らなかったし、同じように19時ごろまで取引ができなくなっていたFX会社は多かったようだ。
「ゲインキャピタル・ジャパンのメタトレーダー4(MT4)で自動売買しているのですが、米ドル/スイスフランの損切りオーダーが機能していないことに気がつきました。
レートを見てみると、レート配信が止まっている。『これはマズい!』と思ってサクソバンク証券でヘッジのポジションを建てようと成行発注しましたが、すぐには注文が通りませんでした」(システムトレーダーのahahaFx さん)
このように一時、レート配信が止まったFX会社がある一方、YJFX!のように一貫してレートを出し続けた会社もあった。
また、ahahaFx さんが利用していたサクソバンク証券のように、18時30分から19時1分までに約定したスイスフラン絡みの取引について、約定レートを修正した会社もある。
値動きの急変をとらえ、5秒で85万円の利益!
スイスフラン急騰劇で利益を得た人もいる。FXトレーダーの余弦さんもそのひとりだ。
「19時ごろ、5万円を入金してユーロ/スイスフランを10万通貨売りました。ゼロになる覚悟で売ったんですが、5秒で85万円になりました。
ただし、借金にならければゼロになっていい覚悟で、『追証なし』の海外業者を使いました。追証がない安心感はありますが、海外業者(※)なので信用リスクは非常に高い。まったくオススメはしませんが、『ゼロになってもいい』という覚悟のときにはいいかもしれません」(FXトレーダーの余弦さん)
(※編集部注:ザイFX!では日本人が海外業者でトレードすることはまったく推奨していませんが、今回は特殊な状況下における特殊な事例としてご紹介しました)
スイスフランショックではFX会社の経営への波及も…
国内資本のFX会社であれば影響は軽微か
スイスフランショックではFX会社の経営への波及も懸念される。1月16日(金)には英国に拠点を置くアルパリ(UK) Limitedの破綻が発表され、日本法人のアルパリジャパンでも即座に利用者が保有するポジションの強制決済が発表された。
【参考記事】
●ついに破綻も! スイス中銀の爆弾発言は欧米のFX会社にどう影響したのか?
しかし、日本のFX会社への影響は麻生太郎財務相が「日本への影響は極めて限定的」というように、軽微だとする見方が濃厚だ。
FX取引高1位のGMOクリック証券と同一グループのFXプライムbyGMOを2社合計して発生したロスカット未収金は1.1億円と少額だし、マネックス証券も1.6億円。しかもそのほとんどは海外子会社での発生分だ。
「日本人にとってスイスフランはなじみのある通貨ではありません。取引を見ても、だいたいスイスフラン/円が全体の6%程度、ユーロ/スイスフランに至っては1%程度です。それを考えれば、日本人を主要顧客とするFX会社の損失は、そう大きなものではないでしょう」(ネット証券幹部)
金融先物取引業協会が発表している店頭FX会社のデータを見ると、2014年12月の取引金額のなかで、スイスフラン絡みの通貨ペアが占める割合はわずか0.2%でしかない。
(出所:金融先物取引業協会)
2014年後半から増えていたユーロ/スイスフランの買い
ただし、気になるデータもある。上の通貨ペア別ランキングでもクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)、ドルストレートが上位を占める中、ユーロ/スイスフランが11位につけているように、ユーロ/スイスフランの取引は2014年後半から増えていた。
(出所:金融先物取引業協会のデータよりザイFX!編集部が作成)
SNBが無制限介入を開始した2011年9月に急増して、2013年からは停滞傾向にあったのだが、2014年後半からは再び増加していたのだ。
【無制限介入開始に関する参考記事】
●為替介入で大暴落したスイスフラン! 大損失を被った個人トレーダーも!?
積み上がっていたユーロ/スイスフランの売りポジション
取引金額は月間の取引を合計した、いわばフローの数字だが、月末時点でどんなポジションになっていたのか、ストックを示す数字もある。
(出所:金融先物取引業協会のデータよりザイFX編集部が作成)
これは通貨ペア単位ではなく、スイスフランという通貨に対する買い、売り、それぞれの量を示したものだが、圧倒的にスイスフラン売りの残高が大きい。2014年12月末時点で814億円の売り越しだ。そのほとんどはスイスフランショックで決済されたのだろう。
FX業界全体で見れば大きな金額ではなくとも、損失の発生した個々人にとっては大打撃となっている場合も多いと思われる。
欧米のFX会社を中心に新たな損失の発表や、あるいはヘッジファンドなどの破綻、ポジションの巻き戻しなど、まだまだスイスフランショックの影響は残りそうな気配でもある。大きな損失を負った個人投資家については、何らかの形で救済されてほしいものだが……。
(取材・文/ミドルマン・高城泰)
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