■SNBが対ユーロでの防衛ラインを撤廃
2015年1月15日(木)、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])は、スイスフラン高を進ませないために、ユーロ/スイスフランで設定していた防衛ラインの撤廃を発表した。これにより、急激なスイスフラン高が進み、ユーロ/スイスフランは短時間のうちに大暴落した。
SNBはリセッションとデフレを回避するため、2011年9月6日にスイスフランの対ユーロレート(ユーロ/スイスフラン)の下限(ユーロ安・スイスフラン高)を1ユーロ=1.2000フランに設定。そして、これを割りそうになった場合、あるいはそこを割り込んだ場合は無制限の市場介入を行うとしていた。
2011年9月にSNBがユーロ/スイスフランの防衛ラインを設定した際の記事は以下のとおりだ。
【参考記事】
●為替介入で大暴落したスイスフラン! 大損失を被った個人トレーダーも!?
しかし、このところ、ユーロ/スイスフランは下落して、SNBが防衛ラインとしていた1ユーロ=1.2000フランに近づいてきており、その先行きを警戒する声も一部に上がっていた。
【参考記事】
●スイス中銀の防衛ライン1.2フランに超接近! ユーロ/スイスフランはなぜ下落している?
●【警戒】スイス中銀の防衛ラインに接近! ユーロ/スイスフランを取引できる口座は?
そして、1月15日(木)になって突然、SNBはユーロ/スイスフランで設定していた防衛ラインを撤廃したのだった。
今回の防衛ライン撤廃の決定についてSNBは、スイスフランはなお高水準にあるとしながらも、直近ユーロが他の主要通貨に対して下落基調を強めたことにより、スイスフランも連れて下落したことで、「スイスフランの割高感は全体としては小さくなった」と指摘。
さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)との金融政策の方向性の違いが見られる中、米ドル/スイスフランで米ドル高・スイスフラン安が進んだことを防衛ライン撤廃の要因として挙げている。
なお、SNBは防衛ライン撤廃と合わせて、中銀預金金利をマイナス0.25%からマイナス0.75%に引き下げることも発表している。
■SNBの発表を受けて、ユーロ/スイスフランは暴落
SNBの防衛ライン撤廃の発表を受けて、ユーロ/スイスフランは防衛ラインとなっていた1.2000フランをあっさり割り込むと、0.82フラン前半まで、約20分でおよそ3800pipsの大暴落(※)。その後はやや落ち着きを取り戻すと、1.05フラン近辺まで買い戻された。
(※この為替レートはザイFX!にも為替レートを提供しているセントラル短資FXの取引ツールで確認したもの。為替には唯一正しい公式レートというものが存在せず、FX会社によって為替レートは微妙に異なっているものだが、今回は大混乱だったため、FX会社による為替レートの違いが比較的大きくなっているようだ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 5分足)
そのほか、米ドル/スイスフランは1.01フラン前半から、一時、0.71フラン前半へと急落。その後は0.90フラン水準まで反発。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/スイスフラン 5分足)
一方、スイスフラン/円は115円台から一時、162円台前半までおよそ47円急騰後は、130円近辺まで30円ほど急反落するなど、大きく上下に振れる展開となっている。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:スイスフラン/円 5分足)
スイスフランのこの動きは他の通貨ペアにも大きな影響を与え、為替市場は大荒れとなっている。
また、ザイFX!編集部が確認したところ、一部のFX会社ではユーロ/スイスフランのレート配信が一時止まったところもあったようだ。
1月22日(木)に開催されるECB(欧州中央銀行)理事会での追加緩和観測が高まる中、今回のSNBの決定を受けて市場の動きはどうなるのか? 引き続き市場の動向を注意深く見守っていく必要がありそうだ。
なお、ユーロ/スイスフランが取引できる会社とそのスプレッドは以下にまとめているので、ご参考に。
【参考記事】
●ユーロ/スイスフランが取引できるFX会社は?
また、このユーロ/スイスフラン大暴落の影響で、英国のFX会社・アルパリ(UK) Limitedが破綻した。これについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
(ザイFX!編集部・庄司正高)
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