■通常は逆相関になる米ドルと金が正相関になっている理由
ところで、米ドル全面高とはいえ、2015年年初来の主役はユーロであり、ユーロ安の底打ちなしでは米ドル高の頭打ちとはならないだろう。ユーロサイドの事情から考えて、まず米ドルと金(ゴールド)の関係を見てみたい。
伝統的に逆相関関係にある米ドルと金が、2014年11月あたりから正相関の関係に転換、共に上昇してきた上、最近はともに頭が抑え込まれた様子が下のチャートでわかる。
米ドルと金の相関関係は、必ずしも珍しい現象ではないが、数カ月も続く場合、やはり何らかの特殊要素があると考えるべきだ。
米ドルと金の正の相関関係について、近年の好例は2010年1月11日(月)~2010年6月10日(木)までの6ヵ月間が挙げられる。同時期においてドルインデックスは16%高で金は12%の上昇を遂げた。言うまでもないが、それはいわゆるギリシャ危機に伴ったリスクオフの結果だった。
この前例からみると、米ドルと金の相関が伝統的な逆相関に戻らない限り、リスクオフの終焉といった判断は時期尚早であろう。目下、ギリシャ危機が再燃しており、ユーロ安自体、かなりオーバーシュートの状態にあるものの、なお性急な判断はできない状態だ。
ユーロに限っては、リバウンドがあってもスピード調整にすぎず、本格的な反騰はなお先ではないかとみる。この場合、再度の安値更新があっても不思議ではなかろう。
■目先のユーロの切り返しはポジション調整にすぎない
ところで目先、ユーロ/米ドルはECB量的緩和時の水準に戻ってきた。前述のオーバーシュートに伴うスピード調整の他、スイス中銀による市場介入が効いている側面が大きいのではないかと思う。要するに、ユーロ買い・スイスフラン売りにより、ユーロ/米ドルも高くなったわけだ。
(出所:米国FXCM)
スイス中銀はスイスフランの上限を撤回したものの、ユーロ/スイスフランになお介入し続け、1.05~1.10フランというレンジ内で推移させることを目指していると言われる。
スイス中銀幹部がこのようなうわさを否定しなかったので、市場関係者はユーロ売りに躊躇しており、また、ユーロのショートポジションが過大に積み上がっているだけに、利益確定の先行があってもおかしくなかろう。
言い換えれば、目先、ユーロの切り返しはポジション調整の結果であって、ユーロ安トレンドの修正にはなっていないから、これが一巡したあとは、ユーロの安値更新を覚悟したほうが良さそうだ。
■米ドル/円はレンジ拡大の可能性はあるものの…
ECBが緩和に踏み切ったあと、「元祖緩和通貨」の円は主役を奪われ、最近影が薄い。
狭いレンジに留まっている米ドル/円は、今晩(2月6日)の米雇用統計次第で、いったんブレイクの値動きを見せてもおかしくないが、米ドル/円の動きはユーロ/円次第といった性質から抜け出すのも時期尚早であろう。
米ドル/円の変動レンジの拡大は見込めるが、ブル(上昇)トレンドへの復帰は、なお先だろう。大いなる保ち合い相場の継続を有力視。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
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