■リスクオンは円も売られやすい状況で米ドル/円は上昇
円の場合も然り。ユーロに比べ、円の事情はそこまで複雑ではないが、リスク回避先として評価される円もギリシャ問題や中国株暴落の一服を受け、再び売られやすい状況にある。
ゆえに、先週(7月10日)のコラムの指摘どおり、米ドル/円はメインサポートラインを割り込めずにいたから、これが足元、124円台前半までの上昇につながったわけだ。
【参考記事】
●ギリシャGDP14年分を吹っ飛ばした上海株暴落は収まり、相場はリスクオンムードへ(2015年7月10日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
ここからの焦点は、米CPI(消費者物価指数)にあるだろう。イエレンさんが利上げを明言した以上、早期利上げ(9月)の有無が市場関係者にとって、もっとも大きな関心事であろう。インフレ関連指標が上がってくれば、米早期利上げの確実性を高めるので、米ドル高の加速を覚悟しておきたい。
■利上げ路線の米、英と緩和路線の日、欧の違いが…
総合的に考えると、利上げ周期に入る米、英に対する日、欧の政策の相違が目立つから、米ドル、英ポンド(対米ドル以外)が買われやすい半面、ユーロ、円は売られやすいだろう。
そして、ユーロと円で、二者択一を迫られるとすれば、ユーロのほうが、より売られやすいのではないかと思う。何しろ、政策の違いがこれから日欧の間でも拡大していくであろうからだ。
未曽有の量的緩和がもたらしたマイナスの側面(国債市場の硬直化や過度な円安など)が目立ってきた日本では、第3回のQE(量的緩和策)を予想する声がすっかり少なくなったことと対照的に、EUでは、ギリシャ救済のため、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和をさらに拡大していくしかないという見方が主流である。
日欧はともに出口政策には遠い状況にあるが、どちらかというと欧州のほうがより遠いから、ユーロ安の圧力が、より大きいとみる。
■ユーロ/円は「三尊型」を形成中で、下落の可能性あり
このロジックでは、やはり、ユーロ/円のトレンドには強気になれない。まだ判定するのは性急すぎるが、ユーロ/円の日足はいわゆる「三尊型(※)」のフォーメーションを形成しつつあり、これからネックライン割れをもって下落していく可能性を排除できないので、要注意だ。
(※編集部注:「三尊型」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。仏像が3体並んでいるように見えるために「三尊型」と呼ばれていて、人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダー」と呼ぶこともある)
(出所:米国FXCM)
この意味では、これからクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向が、米ドル/円に波及してくるリスクも大きい。ユーロ/米ドル次第だが、仮にこれからユーロ/円の下落が加速した場合、米ドル/円の上昇スピードを緩めたり、または高値を押さえたりする効果も無視できない。
リスクオンになったからといって、円安が必ずしも大幅に加速していくとは限らないことを頭に入れておきたい。
■リスクオフの再来にも要注意、米ドル/円は頭打ち?
もっとも、リスクオフの局面は一服したとしても、それが再来しないとは限らない。ギリシャにしても、中国にしても、これからも不安定な状況は続き、欧米株「バブル」の破裂、いつ起こってもおかしくないだろう。
米ドル/円の円安トレンドは当面続くと思われるが、2011年安値を起点とした大型上昇波の最終段階に位置するだけに、高値の再トライをもって、いつ頭打ちとなってもおかしくないとみる。
このあたりの話は、また次回。市況は如何に。
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