■チャイナショックが市場を震撼!
このところ、チャイナショックがマーケットを震撼させている。
中国株は、わずか4週間足らずで最大33%も暴落、時価総額にしてギリシャGDPの14年間分の金額が吹っ飛んだ格好となった。中国の個人投資家は、一時総パニックの状況に陥り、にわかに経済危機の様相を呈していた。
(出所:CQG)
中国市場のパニックは、まず商品相場に伝染し、商品相場の総崩れで日本株もパニック売りにさらされ、日経平均は一時、1万9115円まで急落したほどだ。前々回のコラムの最後に「中国株の暴落、日本にとって決して対岸の火事ではない」と警告したのも、そのためであった。
【参考記事】
●ギリシャ問題は合意でも決裂でもユーロ安。上海株暴落! 中国株バブル崩壊にご用心(2015年6月26日、陳満咲杜)

(出所:米国FXCM)
日本株が外部要素に弱いことは、今に始まったものではない。しかし、日中経済相互関係の深さから考えると、中国が本当に経済危機になれば、日本経済に深刻な打撃を及ぼすから、日本株がパニック的な反応を示したとしてもサプライズではない。
もっとも、投資家はマスコミの報道に影響されやすい。今回、中国株の暴落に関しても案の定、「中国経済崩壊か」、「中国共産党政権崩壊か」といった記事が一部日本のマスコミにあふれていたことが、市場センチメントを悪化させたところは大きい。
■日本や欧米諸国は中国政府を過小評価しすぎ!?
しかし、冷静に考えてみれば、中国株の暴落は確かに深刻な問題であるものの、たちまち経済危機にまで発展する可能性は小さく、また、コントロールできないほど、中国政府は軟弱でないことも明らかだ。
なぜなら、全体主義国家の性格が強い中国は、世界トップの外貨準備高を有し、外部に限定的な開放しか許していない、基本的にローカルな市場である中国株市場をコントロールする財力も手段もたくさんあるからだ。
その上、中国政府の意思と能力を、日本を含めた西側がいまだに過小評価しがちで、問題の本質をよく理解できていない評論が氾濫していることも、大きな問題だ。
■中国株の下落は経済問題から政治問題へ転換
確かに今回は、株の暴落スピードが速すぎる、誰も経験したことのない相場だったと言える。それは未熟な中国の個人投資家が初めて信用取引に手を染めた反動であり、また、一方通行になりやすい中国株式市場特有の構造的問題でもある。
その上、中国管理当局にとっても、このような事態は初めて経験するわけで、経験不足による対応の遅れや拙速な小手先の政策が逆にパニックに拍車をかけたことも事実であった。
しかし、事態が深刻化していくにつれ、筆者は逆にそろそろ収まるのではないかと思い、一昨日(7月8日)から短期スパンにおける中国株の投機好機(買い)に恵まれたのでは…と考えるようになった。
なぜなら、中国株の暴落は、もはや経済問題ではなく、政治問題になっているから、政治問題の次元で考えれば、これ以上長く続かないことを悟ったからだ。7月8日(水)の昼のつぶやきではこのような指摘を行った。

7月8日(水)の上海株は、前日よりなんと-7%に近いほどの大きなギャップをつけてオープン、大引けも-6%に近い暴落ぶりだった。ただし、こういった「非常事態」を見れば、一層確信ができ、その日(7月8日)の夜、株式評論家の北浜先生に冗談のツイートを送るほど余裕たっぷりだった。

そして、昨日(7月9日)も窓をあけてオープン、一時-3.7%まで売られたが、一転して大幅上昇、一時6.9%高となり、まさに世紀の大逆転を見せた。ちなみに本日(7月10日)も続伸、執筆中の現時点では一時7%高に迫った場面もあった。
(出所:CQG)
中国政府が取った対策の中身については、現在詳しく報道されているからここでは詳説しないが、重要なのは前述のように、中国政府は問題の本質を解消できないとしても、パニックを収める手段と能力があることは疑う余地がないということだ。
それをわかっていないと、大きな判断ミスにつながる可能性が大きいから、先のツイートで述べていた「反対意見」とは、こういった疑いへの反論を意味する。
■中国株が落ち着けば市場はリスクオン基調へ
上海株について長く書き、まるで中国株コラムのようになって申し訳ないが、言いたいことは以下の2点にある。
1.ギリシャより中国のリスクが大きかったことが今回の相場で証明され、同時に複数のリスクが発生した場合、マーケットがより大きいリスクに反応する傾向になる。
2.ゆえに、中国株暴落によるリスクオフが当面収まったから、相場はしばらくリスクオンのムードに復帰しやすい。
1に関しては、中国株の騒ぎで、ギリシャ問題が最終決着のまだ見えないなか、「蚊屋の外」におかれ、この間、ユーロの値動きは極めて限定的だった。むしろ、中国株暴落の影響で、リスクオフの円買いや豪ドルなど資源国通貨の下落が目立ったことも納得できる。
2に関しては、中国株騒動で米ドル/円が大きく反落したが、騒ぎの一服で米ドル/円も落ち着きを取り戻すだろう。下のチャートに記したサポートラインを維持する限り、米ドル/円はブル(上昇)基調を、なお維持できるとみる。
(出所:米国FXCM)
最後に、チャイナリスクは一時収まったが、これで終焉したとは思わない。チャイナリスクが再来した時、日本の皆さんがまた色メガネをかけて見るなら、今回と同様、本質をつかめないリスクが大きいので、注意が必要だ。市況はいかに。
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