■中国ブラックマンデーから暗雲立ち込め、急落劇へ
市場センチメントの一夜にしての急変。先週末のアジア市場から始まったマクロファンド勢のリスク資産縮小の動きは、週明け8月24日(月)のNY市場で一気に投げ出されることになりました。
翌8月25日(火)のフィナンシャル・タイムズが報じているように、「中国ブラックマンデーによる株価急落で市場に暗雲が立ち込めた」相場展開となったワケですが、8月24日(月)の午後10時過ぎの数分の出来事は、これまで経験したことがないような急落劇と化しました。
■投げが投げを呼んで、米ドル/円も一時116円台まで急落!
欧州時間から急落していた時間外の日経平均先物が、一時1250円安の1万7160円まで暴落。この動きをきっかけに、相場は急転直下の動きに。
市場の投げが投げを呼ぶという「極限状態のリスクオフ」となると、米ドル/円は、119円台半ばから116.15円まで、「ちょっと目をそらしている隙に」下落。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
その後に寄付いたNYダウも、1089ドル安の記録的な急落となりました。

(出所:米国FXCM)
ただ、その後はNYダウが90ドル超安まで急速に買い戻されたほか、日経平均先物も50円安まで1200円の買い戻しとなると、米ドル/円は119.475円まで値を戻す展開。
一時、1.9015%まで急低下していた米10年債利回りが、その後、プラス圏まで上昇したこともショートカバーを余儀なくさせています。引けにかけてはNYダウが再び下げ幅を拡大したこともあり、米ドル/円は、118.35円まで下押しするといった、乱高下となりました。
■中国人民元切り下げの意味とは?
思い起こせば、中国人民銀行が、「実質的な人民元の切り下げ」を断行した際、市場では、「中国当局が経済状況の悪化を全面的に認め、通貨切り下げを突然行わざるを得なかったほど、中国経済が悪化している証拠」との声も聞かれていたわけですが、一方では、「ファンド勢のポジション調整が終われば落ち着くだろう」と、あまり、今回の政策変更の意味を深刻に受け止めていなかった向きも多かったように思います。
【参考記事】
●中国経済悪化で米利上げ先送り説浮上!人民元基準値切り下げで何が起きたのか(8月13日、今井雅人)
しかしながら、8月20日(木)にNYダウが、1万7000ドルを下抜けて安値引けとなったことをきっかけに、急速なセンチメントの悪化が蔓延。
この問題を過小評価していた市場は、これまで買っていた日経平均や、彼らにとっては虎の子のポジションだった米ドル/円のロングを一気に売り払うことになりました。
■エマージング通貨も急落している
WTI原油先物(※)の40ドルを下回る急落とともに、マレーシアリンギットやシンガポールドルなどエマージング通貨も急落しています。
(※編集部注:「WTI」とは、米国テキサス州西部とニューメキシコ州南東部で算出される原油の総称。「WTI原油先物」は、ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されており、NY原油先物などとも呼ばれる。「WTI原油先物」は、北米の原油価格の指標となっている)

(出所:米国FXCM)

(出所:CQG)
■GPIFなど公的年金が米ドル/円や日経平均で買い!?
急落後の2日間、連日GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的年金資金の買いが、米ドル/円や日経平均に断続的に観測されています。
その成果もあってか、米ドル/円は120円台まで値を戻しています。
ただ、チャート上で重要なレジスタンスレベルとなっている7月8日(水)の安値120.41円や200日移動平均線の120.72円などが戻りのメドとして意識されており、急激な買い戻しにもつながっていません。

(出所:米国FXCM)
中国人民銀行が1年物預金金利と貸出金利を0.25%、預金準備率を0.5%同時に引き下げるという異例の緊急利下げを行うなど、中国当局もその対応に苦慮していますが、今回の「実質的人民元切り下げ」に端を発した急激な資本市場における調整の動きが、マクロ的な構造変化を水面下で進行させてしまうような深刻な状況となっている可能性も否定できません。
しばらくは、落ち着きどころを探るべく、神経質な展開が続きそうです。
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