■中銀の自己満足的な政策にマーケットは困惑
とはいえ、はずれて言い訳するのは一部のアナリストに限った話ではない。世界主要中央銀行の総裁さんは言い訳が得意、そのうち某総裁さんの徹底ぶりは市場関係者を震撼させるほどだ。
量的・質的金融緩和を2回もやって、何の成果も得られずに終わっていたにもかかわらず、さらにマイナス金利をつけた緩和に冒進、マーケットの逆噴射(株安・円高)を招いた。
が、張本人からは何の反省もない。言い訳ばかりが繰り返され、さらなるマイナス金利の拡大が示唆されるばかりでは、これからも市場の報復に遭う運命にあると言えるだろう。
だから、これからもマーケットは波瀾万丈に動くだろう。各国の中央銀行は状況を把握する力を失いつつあり、その一方、自己満足的な政策を推進している。マーケットは困惑を深めていくばかりだ。
■金利差と通貨の値動きが逆行している=前途多難
こういった状況や市場心理を反映したように、世界主要通貨ペアの動向は、金利差と大幅に逆行する様相を呈している。
本来、金利差は通貨の高安を左右する重要な要素であるが、マーケットが不安定なほど、金利差の決定力は弱まっていくから、目下の状況は前途多難な先行きを暗示しているように受け止められる。その典型は米ドル/円と主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)であろう。
英ポンド/円の急落は、もはや金利差の視点からまったく説明できないから、同じく急落した2008年の状況を彷彿とさせる。 リーマンショックの再来とささやかれるなか、かなり高い確率でさらなる暴落につながっていく余地があるから、これからも要注意であろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利推移一覧)
■英ポンド/円は目先一服してもおかしくない
ところで、英ポンド/円の相場は、現時点までの暴落はいわゆる「李万ショック」(※)の発生がもたらした結果ではなく、日銀政策が招いた円高と英国のEU(欧州連合)離脱騒ぎのダブルパンチが効いた結果であろう。その分、目先のオーバーシュート感もかなり強く、ベア(下落)トレンドの継続はあっても、目先は一服してもおかしくないとみる。
(※編集部注:「李万ショック」とは、今後、中国で発生すると思われるショックを「リーマンショック」になぞらえた陳満咲杜氏の造語)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/円 日足)
そもそも英ポンド/円の下落が一服するなら、英ポンド/米ドルの下げ一服が前提条件となるが、今月(2月)終値が1.4ドルの節目より下で引ければ、約30年ぶりの出来事となるから、英ポンドの下げ止まりは、目先あまり現実味がないように思われる。
(出所:CQG)
■英ポンド安は行きすぎ、英国のEU離脱懸念は大騒ぎしすぎ
しかし、そこに大きな落とし穴があるのでは…と思う。
何しろ、英国のEU離脱懸念によって、英ポンドは急落してきたが、冷静に考えてみれば、英国はユーロ圏ではないし、元々のEUのオリジナルメンバーでもなく(※)、離脱するかどうかということ自体が大袈裟なテーマだと言える。
(※編集部注:EU(欧州連合)の前身はEC(欧州共同体)であり、そのもっとも古い前身はECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)。英国はECSCの原加盟国ではなかった)
実際、英国がEUを離脱するかどうかということには形式上の問題が多く、仮に離脱してもいくつかの協議で今の地位を保つことは可能だから、騒ぎ自体が行きすぎだといった指摘が出始めている。
マーケットはいつもそうであるが、1つの材料をもって徹底的にトレンドを推進していくが、やがてそのトレンドが行きすぎ、反転のタイミングに差し掛かる。
不思議にも、反転のタイミングに差し掛かっている時、なんらかの事情でファンダメンタルズの材料が後づけで出てくることが多いから、マーケットは一層、先の行きすぎを修正していく。
断っておくが、筆者はこれからの英国の材料を推測できるわけではなく、単純に英ポンド安の行きすぎを指摘しておきたいにすぎない。
長期スパンにおける英ポンド安は不変でも、目先はいったん修正される可能性があるから、英国絡みの材料にご注意。市況はいかに。
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