■原油相場が上昇し、リスク環境が改善
みなさん、こんにちは。
明日(3月11日)は、メジャーSQ(※)です。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと。株価指数先物は3月、6月、9月、12月の第2金曜日、オプション取引は毎月第2金曜日がSQ算出日となっている。株価指数先物とオプション取引のSQが重なる日は「メジャーSQ」と呼ばれる)
【参考記事】
●ドラギ総裁公言でECBの追加金融緩和はほぼ確実! ユーロは急落するのか?(3月8日、西原宏一&松崎美子)
先月(2月)のSQ時は、多くのヘッジファンドが大規模な売り仕掛けを持ち込んだことから、日経平均と米ドル/円が急落したことは記憶に新しいところ…。
【参考記事】
●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)
ちょうど1カ月前と比較すると、リスク環境はずいぶん改善してきました。
先月(2月)のG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)、そして中国の全国人民代表大会(全人代)を経て、まず原油相場が値を戻し、3月9日(水)のNY市場では、NY原油先物4月限が前日比4.90%も高い1バレル=38.29ドルで終了。

(出所:CQG)
原油相場が急激に値を戻していることもあり、米国株も堅調で、3月9日(水)のNYダウは36.26ドル(0.2%)高い、1万7000.36ドルでクローズ。

(出所:CQG)
リスク環境を圧迫していた原油相場が急激に値を戻していることから、日経平均、米ドル/円、資源国通貨である豪ドル/円なども値を戻してきています。

(出所:株マップ.com)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
■ブラック・ロックが米ドル/円の方針を大きく転換
こうした環境下、1月~2月は米ドル/円のダウンサイドに賭けていたヘッジファンド勢のスタンスにも変化が見られます。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
たとえば、世界最大の資産運用会社、ブラック・ロック。
ドル売り・円買いトレードを「転換」=ブラッロックのリーダー氏
米資産運用会社ブラックロック のグローバル・フィクストインカム担当の最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏は9日、同氏の運用チームが2月に保有していた米ドル売り・円買いのポジションを縮小したことを明らかにした。
リーダー氏は「われわれは逆方向に転換した」と述べ、現在はドルに前向きだと発言した。
リーダー氏は米国株が「完全に」割安とは考えてはいないとの見方を示した上で、前日の会合での「もしかしたら」株式が年内に5─10%上昇するとの自身の発言は予言ではなく、そういうことが起きたらサプライズだと付け加えた。
実際にリーダー氏によると、企業のキャッシュフローの伸びが減速し、自社株買いなど資金調達コストは大きくなって、「株式の上値余地は限られている」ため、リーダー氏が「歴史上最大のアービトラージ(裁定取引)の機会」と呼ぶ期間は終わろうとしているという。
ブラックロックが8日に公表した報告では、リーダー氏が運用責任者を務めるブラックロックの投資信託、ストラテジック・インカム・オポチュニティーズ・ファンド は2月にユーロ、円、ポンドの純持ち高を全て解消した。
リーダー氏は債券市場の利回りが低下して一部ではマイナスになっているため、ハイイールド債と新興国市場への投資配分を増やしたことを明らかにした。
ブラックロックの運用資産額は昨年12月31日時点で4兆6000億ドルに上り、このうち3分の1は債券で保有している。
出所:ロイター
■中国人民元安を見込んだ投資から米ヘッジファンド撤退
加えて、多くの米ヘッジファンドは、中国人民元安を見込んだ投資からも撤退している模様。

(出所:CQG)
米ヘッジファンド、人民元安見込んだ投資から撤退
ファンドマネージャーやバンカーの話によると、中国人民元の大幅な下落を見込んでいたヘッジファンドの3つのタイプうち2種類は取引から手を引き、「ブラック・スワン」投資家と呼ばれる一部の超弱気派だけが長期的な元下落の見通しを維持している。
金融業界の大手4行のヘッジファンドのセールスデスクの担当者はロイターに対して、1月初めに中国政府が積極的な為替相場の下支え策を打ち出すまで、多くの米投資家は元安投資で利益を上げていた。
しかし、中国政府の積極的な為替介入や、一部の資本移動制約、さらにはオフショア市場での元流通量の削減によって、多くのファンドが2月の春節(旧正月)の休暇までに投資エクスポージャーを削減するか、取引から撤退したという。
この結果、テキサス州に拠点を置くマーク・ハート氏のコリエンテ・パートナーズや、中国が経済のバランスを取り戻すために人民元を50%切り下げるとみていたカイル・バス氏など、主に「テールリスク」ファンドと呼ばれる勢力が残った。
人民元相場 CNH= は昨年11月以降、オフショア市場で着実に値下がりしたが、1月7日に1ドル=6.75元で底を打った後、ほぼ半値戻しの水準まで回復している。
出所:ロイター
リスク環境が好転している背景には、中国情勢の安定化も挙げられます。
ジョージ・ソロスを筆頭に、中国に対してネガティブな相場観をもっている投資家は多数。
【参考記事】
●ソロスも警告! リーマンショックが再来!? 株安・円高の行方占う2つのポイントとは?(1月14日、西原宏一)
しかし、中国株そのものは流動性の問題や規制が多いため、中国株売りのプロキシー(=代替)として挙げられたのが日本株でした。
中国に関するネガティブな報道が出るたびに、中国株そのものより、プロキシーとしての日本株が大きく売られたことは記憶に新しいところ…。
その中国情勢ですが、G20や全人代を通して沈静化…。
結果、プロキシーとして使われていた日本株への売り圧力自体も落ち着きを見せ、日経平均も一時、1万7000円の大台を回復しています。

(出所:株マップ.com)
■NYダウ崩れず、期末に向けて「株高・円安」へ
今月(3月)は日本企業の期末。
先月(2月)のSQショック時は、日経平均と米ドル/円が暴落し、3月の本邦企業の決算に大きな影響を与えることが懸念されていました。
【参考記事】
●日銀マイナス金利導入が円高・株安誘引!? ドル/円急落の裏で何が起こっていたのか?(2月18日、西原宏一)
しかし、まず本丸であるNYダウが崩れず反発していること。

(出所:CQG)
そして、リスク環境を圧迫していた原油相場が値を戻していることで、マーケット環境は徐々に好転しています。
本日(3月10日)のECB(欧州中央銀行)理事会、そして、来週(3月14日~)開催される、日銀会合とFOMC(米連邦公開市場委員会)というイベントをうまく乗り越えられれば、日経平均と米ドル/円は値を戻し、多くの日本企業の決算がうまく乗り越えられる公算が高まってきました。
【参考記事】
●ドラギ総裁公言でECBの追加金融緩和はほぼ確実! ユーロは急落するのか?(3月8日、西原宏一&松崎美子)
多くのヘッジファンドの投資スタンスにも変化が見られ、期末に向けて底堅く推移することが期待される日経平均と米ドル/円の動向に注目です。
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