■日銀の介入はあり得ない、なぜなら…
ところで、円高の進行は米ドル全面安と相俟って、現在のところ、米ドル/円の下落のみが目立つ。昨日(3月17日)は一時、2月安値割れを果たし、110.66円の安値をもって2016年年初来の安値を更新した。
そんな中、当局による110円台大台防衛の思惑が浮上している。実際、昨日(3月17日)は安値から急速に切り返し、三十数分で112円の節目手前まで反騰したから、日銀が介入したのでは…といった憶測も流れた。
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その後のウワサでは、「日銀がレートをチェックしてきた」とか、「いや、レートチェックではなく、単に円高の理由を聞いてきた」とか、情報が錯綜しているが、日銀介入でなかったことは確かだ。
それはそうだ。今の段階、今のレベルで日銀が介入してくるわけがなく、日銀介入のうわさを信じる者はナンセンスだ。
なぜなら、日銀のたび重なる量的緩和、特に1月末のマイナス金利付きQQE(量的・質的緩和策)が、海外から実質的に為替対策(要するに円安政策)ではないかとずっと疑われてきただけに、安易な介入などできるはずがない。黒田日銀総裁は内外に渡って、「為替対策ではない」と数回弁明を繰り返してきたから、110円の大台割れがあっても身動きが取れない。
そもそもアベノミクスが打ち出されて以来、80円の大台以下だった米ドル/円は126円大台手前までほぼ一本調子の上昇を果たした。ここ数年の円安は、値幅にしてもスピードにしても激しいものだったから、110円の大台割れが目の前とはいえ、この程度の円高への反動が必ずしも過激とは言えない。
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先日のG20(20か国・地域首脳会合)の上海合意もあって、また、中国の人民元安志向を牽制したばかりだから、日本政府は今、行動ができないはずだ。
少々脱線した話ではあるが、米大統領選の影響もあるのではないだろうか。
■トランプ氏の躍進が日本の通貨政策にも影を落とす
一世を風靡しているあのトランプ氏は、まだ党の指名を正式に獲得していないものの、その呼び声は一番高いから、無視できない存在だ。彼は名指しで中国と日本は為替操作国だと非難しているから、今、日本が為替介入を行えば、まさに絶好の攻撃材料を与えることになる。それは何としても避けたい、というところであろう。
さらに、黒田さんの強気と裏腹に、日銀はすでに金融政策を出し尽くし、また、無理矢理な金融政策を押し進めても、市場に効かないことがマーケットのコンセンサスとして広がりつつあることも見逃せない。
■桜が満開になるころには105~106円を達成か
来年(2017年)4月の消費税増税まで、残された時間があまりないから、アベノミクスにしても、日銀のマイナス金利付き緩和政策にしても、失敗に終わる公算が高いとマーケットは冷静に結論を出し、ポスト・アベノミクスへの布石がすでに始まっていると思う。
だから、日銀介入やら、政府方針やらの「他力本願」的な発想をやめ、マーケットの値動きを直視しないといけない。110円の大台割れはこれから必至で、105~106円のメインターゲットは、早ければ桜が満開(もうすぐ)の頃にも達成できるのではないだろうか。
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